第二話 殺さなくてはならない相手
―――――嘘と願いは似ている―――――
どちらも人に、世界に、満ちている。
誰しも願わずにはいられないし、嘘を吐かずに生きることはできない。
世界は願いで満ちていて、世界は嘘に塗れている。
第二話
殺さなくてはならない相手
ゴオオォォォォン!
離れたところから轟音が聞こえる。さっきの狙撃手かな?
ゴオオォォォォン!
すかさず二射目が放たれたようね。・・・もし、だれかが死んでしまったのなら、私はその場に行き、願いを確認しなければならないのだけど・・・あまり危険な場所には行きたくない・・・さっきは未来視で弾丸を避けられたけど、わかっていてもヒヤヒヤものよアレ。
・・・まぁ行かないと私がゲームクリアできなくて死んでしまうから行きますけど・・・
「誠君、悪いんだけど、音のした方に、行かないかしら?」
「え?・・・向かったところでさっきの狙撃した人がいる可能性高いですけど・・・復讐とか、ですか?」
「いやいや、今さっきあなたを止めたばかりでしょう。違うわよ。もし誰かが殺されたのなら、その人の願いを知らなきゃいけないからよ。」
「Oh,year!」
「・・・何なのよそのリアクション」
私たちは銃声の方へ向かう。その際に未来視を使い、安全の確認はしっかり行う。・・・二人の亡骸が見えた。その二人の願いを知って立ち去るまで、私達に何か危害が与えられることはないようね。
その場は足元に血が流れていた・・・人が亡くなっているところへ足を踏み入れるのは抵抗しかないけど・・・私は倒れる二人の手元のスマホを手に取り、その情報を確認する。
一人は蟹座の男性、願いの欄には「生きたい」とだけ・・・。その願い、叶わなかったのね・・・。
もう一人は水瓶座の女の子、願いは「失敗を引きずらない強い人になりたい」と・・・。
なかなか酷なミッションよね・・・人を殺す必要はないのだけど、亡くなった人の願いを知るというのは、なんともやるせないし、おぞましい・・・
「真白さん、この部屋にナイフがありましたよ。」
誠君は私が願いを確認する間に近くの部屋を調べていた。
「後は、この木の棒があっちの部屋に」
何かショボいわね・・・
さっきの狙撃、結構遠くから銃声が聞こえたから、そこそこ立派な銃なのだろうけど・・・どこで入手したのかしら・・・今私達には同じことはできないし・・・
タッタッタッタッタ・・・
遠くから誰か走って来る音が聞こえる・・・
私は警戒して未来視を使用する―――――
―――そこには見慣れない男の人がいた。恐らく足音の主だろう。私と話をしている。内容はわからないけど穏やかな雰囲気・・・危険はなさそうね。
「誠君、誰か来るけど、恐らく攻撃する感じじゃないわ。変に刺激しない様にね。」
「・・・それは、未来視ですか?」
「ええ、何話してるかはわからないけど、危害は加えないようよ。」
「・・・なら、僕のスキルで話の内容にも信憑性を持たせてから信用しましょう。」
「・・・できるの?不器用な誠君が?」
「不器用・・・まぁ、否定は出来ませんね・・・」
誠君は苦笑いを浮かべる・・・
「それでもやってみます。真白さんにフォローをお願いしてもいいですか?」
「あら?男の子が頑張る場面で手を出したら無粋じゃないかしら?」
「・・・また嘘ですか・・・真白さん、最初から手を出す気じゃないですか・・・」
「・・・・・・そりゃ、命を関わることだからね・・・。」
・・・私の未来視は会話の内容がわからない、誠君は会話の相手が嘘をついていればわかる。スキルの相性は私達いいんだけど・・・誠君のスキル、私個人には相性最悪ね・・・。
足音の男性が姿を見せる。歳は私よりも少し下かしら?若い、パッと見好青年ね。
「あの・・・!今こっちの方で銃声が!って!うおっ!!」
勢いよく血の池に突っ込みそうになる彼。壁に手を付き走っていたからか息を整えている。その間私達がこの二人を殺したのではないか?という嫌疑の視線を浴びた。
「僕達も貴方と同じ理由でここに来ました。銃声がしたのでって。」
「ああ、そうだったんですか・・・すみません、ちょっと先走りました。」
「いえ、いいんですよ。・・・ところで貴方の星座は・・・あっ、僕は射手座の川上 誠と申します。」
「射手座・・・俺は、牡羊座の灰上 芯っていいます。」
「・・・・・・。」
黙ってしまう誠君。何か適当に話せばいいのに・・・
「ちなみに私は、桃山 真白っていいます。星座は乙女座です。」
「乙女座ですか・・・」
何か考えている様子・・・
「何か星座で思い当たることでもあるんですか?」
「え?ええ、まぁ、僕のアプリは星座ごとにミッションがわかるものなので、少し思い出していたところです。」
「・・・どんなミッションがあるのかわかるんですか?」
「はい、例えば・・・桃山さん、僕の願いは、心を知りたい、というものです。」
――――!?
それは私のミッションで必要な情報・・・どうやら本当のようね。誠君に目線を向けるが、特にないようで・・・嘘は言ってないみたい・・・何よりも、私のミッションに協力してくれたその姿勢を買いたい。
「誠君、いいわよね?」
「・・・問題ありません。この人は正直な方のようです。」
「え?何?俺がどうかしたの?」
「すみません、僕のスキルは会話の相手が嘘を吐いているとわかる、というもので・・・灰上さんに探りを入れてました。」
「あぁ!なるほど。」
「え・・・あの・・・怒ったりはしないんですか・・・?」
「怒る?さすがにこんなゲームの最中だから、慎重なことを怒るのは筋違いだと思うし、俺はあなた達に俺のミッション達成のために協力してもらいたいから・・・」
「ミッションの協力?」
「はい、俺のミッションは二名以上のミッション達成を手助けすること。一人ではどうしようもないものなので。」
「それくらいなら。大丈夫よね?」
「ええ、まぁ、はい。」
「ありがとうございます!改めて、俺の星座は牡羊座、スキルは物と会話ができます。ミッションは二名以上のミッション達成を手助けすること、アプリは参加者のミッション一覧が視られます。」
「僕は星座が射手座で、スキルは嘘を見破ることができて、ミッションは蠍座を殺すこと、アプリはジョーカーアプリの機能のみを停止できます。」
そういえば、誠君のアプリって初めて聞いたわね。
「私は乙女座、スキルは近い未来限定だけど、未来視ができるわ。ミッションは参加者全員の願いを知ること、アプリは私の半径二メートルにいる人のアプリを一時的に使えなくするわ。」
あ、私も言ってなかったわよね、アプリ。
「ところで芯君、あなたのアプリ、見せてもらってもいいかしら?」
「はい、いいですよ。」
なんの躊躇いもなく見せてくれる。この人は誠君と同じ人種なのかしら?それともキチンと利害を考えてのことかしら・・・
芯君が見せてくれた画面には参加者のミッションが書かれていた。
ミッション一覧
Aries(牡羊座)
二名以上のミッションを手助けしクリアさせる。
Taurus(牡牛座)
AriesまたはCapricornと手錠を繋ぎ36時間以上経過する。
Gemini(双子座)
Libraのスマートフォンを破壊する。
Cancer(蟹座)
武器を使用せずにクリア部屋にたどり着く。
Leo(獅子座)
スマートフォンを3個以上所持し審査を受ける。
Virgo(乙女座)
参加者全員の願いを知る。
Libra(天秤座)
生存する参加者の中で最も下の階にいること(同じ階まで許容)。
Scorpio(蠍座)
自分以外の参加者が死亡している。
Sagittarius(射手座)
Scorpioを殺害する。
Capricorn(山羊座)
Aquariusをゲームクリアさせる。
Aquarius(水瓶座)
自分以外の参加者に傷を付ける。
Pisces(魚座)
各階に存在するチェックポイントを二名以上で通過する。
――――――なるほど・・・思っていたほど殺伐とはしてないわね。ある一点を除いて・・・
どうしても気になるのは蠍座の全員死亡というミッション・・・
「真白さん、さっき亡くなっていたのは何座の人だったんですか?」
「・・・蟹座と水瓶座」
「となると・・・狙撃してくるのは蠍座の人である可能性が濃厚となりますね・・・無差別に銃撃する必要があるとすれば蠍座と水瓶座だけで、水瓶座の人は既に亡くなってますから・・・」
「そういえば、真白さんはもうその亡くなった二人の願いは・・・」
芯君が念のためと聴いてくる。私はスマホ画面を見せながら答える。
「ええ、ほら芯君のお陰で3つ、星座の文字の色が変わってるわ」
その画面には、星座の名前が書かれていて、クリアとされる星座の文字は変わっていた。
「・・・射手座はまだなんですか?あと、乙女座も」
「え?まぁ、誠君はいつでも聞けるから、後ででもって」
それはいい、でも―――――なんで乙女座の文字は変わっていないのだろう・・・後悔したくない、失いたくないって誰よりもわかっているはずなのに・・・
「蠍座・・・僕の殺さなければならない相手・・・全員死亡のミッション・・・」
「誠君?どうしたの?」
「え?いや、その・・・僕のミッションは蠍座を殺すことで、その蠍座は全員を殺さなくてはいけない・・・なんというか、正直生き残るためのミッションだとしても、人を殺すことに抵抗あったんですけど、一応大義名分ができたかな・・・って思えて・・・」
「いえ、ダメよ。大義名分っていうのは自分につく嘘よ。ただのメッキ。誠君は嘘が嫌いなのよね。なら、少なくともそういう形で殺すことは許さないわ。」
「え・・・はい・・・」
何か熱くなっちゃって気恥ずかしいわね・・・似てるのよ、誠君は・・・死んじゃった弟に。
「殺さなくていい方法があるかもしれないし、そんなに殺す殺す言わないで、別の方法とか探そうよ。」
「・・・でも・・・」
「俺もそう思いますよ。」
芯君が賛同してくれる。予想外の援軍ね。
「確証どころか、まだもしかしたらってレベルなんですけど、俺、ミッションは変わるんじゃないかって思うんです。」
「ミッションが、変わる?」
「ええ、あくまで可能性ということは前提になりますけど、僕のアプリ、ミッション一覧なんですけど、起動っていう所をタップすると表示されるんです。二人のアプリはキチンと起動、という意味がありますけど、僕の場合はただの表示ですから・・・」
「何か機能があると?」
「はい、ネットワークに接続して最新の情報に更新するとか。」
「更新・・・もしそれがあるのなら・・・」
「はい、川上さんが人を殺す必要も、蠍座が全員を殺す必要もなくなります。」
「ま、あくまで可能性の話ですし、どうしたらミッションが変わるのかとか見当もつきませんけどね。」
芯君は最後にそう付け加えた。
でも、可能性に懸けるのは悪くない。
「わかりました。もう少しどうにかならないか考えてみます。・・・僕も、人を殺して生きられても、その後の人生、胸張っていきられるとは思えませんし・・・」
よかった。思い返してくれて。この人は真っ直ぐいて欲しい。そう思うのよね。
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抵抗
俺は銃声がした方へ向かう。俺が生きて帰るためには水瓶座の人をクリアさせないといけないらしいから・・・
そう思って、たどり着いたのは・・・血の海に沈む男女二人の参加者。
嫌な予感がして俺は亡骸のスマホを手に取る。男の方は蟹座、女の子の方は・・・水瓶座・・・
ゲーム開始からまだ大して時間は経ってないはずなのにこれって・・・無理ゲーじゃんかよ・・・何なんだよ・・・
ふと、水瓶座の女の子の手元が目に入る。その手にはナイフが握られていた。死にそうな時にでも、立ち向かおうと、生きようとして、必死で抵抗したのだろうか。これだけの血が流れているんだ、かなりの激痛だったろうに・・・
いいだろう。俺も・・・こんなゲームなんかにNOを叩きつけてやる!!
「願いを叶える?知ったことか!!こんなゲーム、ぶっ壊してやる!!」
無機質な空間に、憤りが拡がった。




