第七話 信じて
第七話
信じて
「終点」にたどり着いた俺達は互いに目配らせ、部屋に入る。
そこには銃をこちらに構える男性が一人立っていた。
「ここは、私に任せておきなさいな~。」
俺達を制して真白さんが前に出る。男の顔が険しくなった。
男の足元には段ボールなどが散乱していて接近するのを妨げていた。
蒼も臨戦体勢をとる。蒼の役割は俺達の護衛。流れ弾から守ってくれる。
真白さんは徐々に男との距離を詰める。途中、真白さんは足元の段ボールに屈んで手を入れる。隙ができるが男の弾は真白さんには当たらない。当たる前に気付いて回避してしまう。
どうやら屈んでいたのは段ボールに爆弾が仕組まれていたようで、真白さんは解除していたらしい。ホントズルいスキルだよな未来予知って・・・
「くっ!!何なんだよお前は!?」
男が激昂し、銃を乱射する。しかしそんなことお構い無しに真白さんは男の弾丸を全て避け、拘束する。
「清美ちゃん、悪いけど、この人の拘束を――――」
真白さんが拘束を替わろうとしたとき、人影が俺達の間を抜けて行った。そして、真白さんの元まで駆け抜け―――――
ゴッッ!!
男の首を折った。
「あなたは、さっきの・・・」
どうやら真白さんとは面識があるらしい
「生かしておくと危ないので、横取りみたいで悪いとは思ったけど、殺させてもらった。」
首を折った人影はそう告げる。そして、そのままライフルを構える菫ちゃんに向き直る。
「ーーーーーーーっ!」
菫ちゃんも身の危険を感じたのか、彼に照準を合わせる。
「やめなさいっ!」
真白さんが制止させようとするが、彼は既に菫ちゃんに駆け出していた。
ズガアアァァァンッッ!!
菫ちゃんの撃った弾丸は彼にいとも容易く回避される。だが、菫ちゃんはすぐさま二射目を構える。
「残念だけど、銃弾なら簡単に避けられるんだ」
何度撃っても彼に弾丸は当たらない。彼の動きには無駄がなく、正直、見惚れていた。
「・・・これで、終わりだ・・・」
そう呟くと、彼は菫ちゃんに手を伸ばした・・・
だが、彼の手は途中で止まり、菫ちゃんに届くことはなっかった。
「なっ!?何だこれは!?う、動か、な・・・」
「どういう理由があるかはわからないけど、簡単に菫を殺させないわ。」
彼を止めたのは清美さんだった。そのスキルで彼の身体を操り、彼のスマートホンを真白さんに向けて投げさせる。
「・・・蟹座、秋山 紅さん、ミッションは、武器を使用せずにゲームクリアをすること・・・」
「どうしてそんなミッションなのに命を奪うの?」
「・・・僕が、殺されないためですよ。」
「ちょっと待って、秋山さん、あなた、スキルがないの?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「どうしてスキルを得られないのにゲームに・・・」
「・・・僕には僕の事情があるんですよ。」
「それなら私があなたを殺しても文句はないですよね。私も殺されたくないですから」
菫ちゃんが秋山さんに銃を突きつけ強めに問う。少し怒ってるようだ・・・
「そうだな。覚悟はできてるよ。・・・蠍座さん。」
「―――――っ!!」
ズガアアァァンッ!!
轟音が鳴り響く、それは菫ちゃんが発した命を奪う音。
「そんな・・・菫・・・」
清美さんが驚愕の表情を浮かべる。
蒼は菫ちゃんと対峙する。
「清美ちゃん!拘束!!」
真白さんの指示が飛ぶ。反射的に清美さんは菫ちゃんを拘束する。
「・・・菫、私達を、殺すの?」
拘束をしつつ、信じられないように清美さんは菫ちゃんに聴く。
「・・・安心して、私は清美さんの味方。・・・・・・最初は、みんなで、『終点』まで行って・・・最後にまとめて殺してクリア、って思っていたの・・・・・・でも、やっぱり私はみんなのことが好きになっちゃって・・・殺したくないって、思えた・・・すごく、悩みましたよ・・・私だって、生きたいですから・・・でも・・・私は・・・」
そう言いつつ、菫ちゃんは清美さんを見据えた。その目には決意した目をしていた。
「私の心は私のもの、例え清美さんのスキルでも操れない。そして今の言葉は操られていない私の本心。・・・そして、」
「えっ!?」
清美さんが驚く。俺には菫ちゃんが清美さんの手を取った様にしか見えなかったが・・・
「そんな!?どうして私のスキルを!?」
「何も不思議じゃないです。・・・だって、清美さんのスキルは味方を作るスキルだもん。私は、心も身体も、全て清美さんの味方だから、操る必要なんてないですから・・・」
そう言うと、菫ちゃんは床に転がる拳銃を拾い上げる。
そして、その銃口を、自らの頭に向けた。
「菫ちゃん!?」
「いいんです。私は、清美さんも芯さんも、みんなのことを信じてますから。だから、まだ人を信じきれない清美さんに、大好きな清美さんに、私の命をもって、『信じるということ』を、『愛』を知って欲しいです。」
「愛・・・」
愛、それは清美さんの願いである「自分のために身を削ってくれる、揺るぎなき味方」その解答そのものだった。
「それに、私も今まで人が怖くて、話をすることが苦手だったけど、みんなみたく信じられる人になら、好きな人になら、何でも言えるって、そうわかったから。私の願いは叶ったから、割りと満足、かな。みんなのお陰です、ありがとうございます。」
そう告げると、菫ちゃんは笑顔で引き金を引いた―――――――――
それから暫くして、俺達は、それぞれ残りのミッションをこなし、ゲームは終了した。
エピローグ
―――――ゲームの参加費用をいただくよ―――――
ゲームが終わり、意識が落ちる前に聞いたのは、そんな声だった。
それから俺は、声を失った。相手の心を知るどころか、自分の心も伝え辛くなっていた。
そして、清美さんは脚を満足に動かせなくなっていた。車椅子生活を余儀なくされている。
真白さんと蒼はまだ再会できていない。二人がどこにすんでいるかもわからないし、二人もきっと何かを失っているのだろうから、容易ではない。
俺と清美さんは運良く再会することができ――――――
「遅い!私を独りにしないって言ったのに、待たせるなんてどういうこと?」
と、車椅子に座る清美さんがむくれる。
ゴメン、という意図を伝えるためにキスをする。
「・・・・・・もうっ!早くいきましょ、遅れた罰として、押して行ってよね。」
罰じゃなくても押すのに・・・照れ隠しか・・・
俺達は再会して、それから恋人として、揺るぎない味方としていることとなった。
そして、これからデートだ。でも、その前に・・・清美さんに渡したい物があった。
声は失ったけど、想いを伝えにくくなったけど、言葉が無くとも表情や行動で想いは伝えられる。それを少女に教わった。
だから俺は―――――
「俺を信じて、これからもずっと一緒にいてください。」
――――――という想いを込めて、この指輪を渡した。
彼女は笑って、キスをして応えてくれた。
心の章 ―Another route― 完
以上で心の章アナザールートは終了です。
いかがでしたでしょうか。
次回は新章となります。
新章はゲーム設定や登場人物は心の章と同じですが、主観(主人公)やストーリー展開が異なります。
新章も是非よろしくお願いします。




