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草刈り

私は初日と同じように、手首を縛られ、瞳さんに食事を食べさせてもらった。惨めだ。きっと醜いはずだ。瞳さんは無表情だけど、心の中では笑っているはずだ。こんな醜い私を見て。あ、そうだ。これが、おもしろいから瞳さんは岸谷に寄り添ってるんだ。私は足りない頭で、そう結論付けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


瞳『朝よ。色葉ちゃん、色葉ちゃん!!』


瞳さんが肩を揺すってる。


私『うーん、早くないですか?』


瞳『もう、6時よ。』


6時・・・。反抗するのも面倒くさい微妙な時間だ・・・。


瞳『働かないと、ここから出られないのよ。今日は草刈りでしょ?』


私『草刈り?ああ、そうだった。外に出られるんですよね?』


瞳『うん・・・でも、本当にやりたい?』


私『はい、お金稼げるんでしょ?』


瞳『・・・出来るだけ、早く終わらせてね。』


瞳さんは、シャワーのあと、私を中庭に案内した。中庭には緑色の草が生い茂っていた。


私『これを全部?』


瞳『疲れたら、帰ってきていいわよ。』


私『報酬は変わらない?』


瞳『それは岸谷が決めることなの・・・疲れたら、絶対に帰ってきてね。』


瞳さんは、そう言うと、足早に店の中に帰っていった。


私『よーし、半分以上刈ってやる!!』


私は決意を胸に草刈りに取り掛かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


瞳『ねぇ、守。草刈りはやっぱりいけないと思うの・・・私。』


岸谷『知らない男とヤって、金稼ぎたいって言うよりはマシだろ。』


瞳『草刈りの仕事も、単価がわかってきたら、もっと稼げる仕事を求めちゃうわよ。』


岸谷『求めてきたなら、求めてきたで好都合だろ。強要の負い目なく、働かせることができる。』


瞳『・・・。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私『ふー。まだ8分の1くらい?』


3時間ほど刈り続けて、このザマだ。私は辺りを見渡した。塀は2メートル20センチくらい。頑張れば登れそうだけど、帰宅部の私にそんなセンスはない。


私『なんかクラクラしてきた・・・。でも、たくさん刈って、借金を返さなきゃ・・・。早く帰らなくちゃ・・・。』


ガチャ・・・


岸谷『どうだ?刈れてるか?』


私『・・・全然ダメ。なんか集中できない。』


岸谷『理由わかるか?』


私『太陽がギラギラだから?』


岸谷『冬の太陽だろ、こんな数時間じゃのぼせたりしねぇよ。そのモヤモヤの正体は、この草だ。』


岸谷は草を指差した。


私『どういうこと?』


岸谷『ここに生えてるのは、全然大麻だ。』


私『!?』


大麻!?ヒッピーたちが吸ってたやつ!?


岸谷『頑張れよ、共犯者。』


共犯者?私が犯罪者?どういうこと?私は被害者でしょ?えっ、たった今から犯罪者?


私『ちょ、ちょっと待ってよ!!』


私は部屋に帰ろうとする岸谷を呼び止めた。


岸谷『なんだよ。』


私『共犯者って、どういうこと!?』


岸谷『お前は、俺の栽培している大麻を刈っているんだ。日本は大麻を規制してるから、お前は俺の共犯者だ。』


私『私、やめる!!これ、やめる!!』


岸谷『やめていいのか?残念だな。この量だと、5万いくか、いかないかだな。』


私『え、この程度で5万も?』


岸谷『ああ、汚名は金を呼び込むんだよ。』


私『じゃ、じゃあ、今日1日は・・・この・・・草刈ろうかな・・・。』


私は、お金が欲しかった。汚名なんて、洗い流せばいいと思った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


警察『お母さんねー。1週間は行方不明になってもらわないと、こっちも動けないんですよ。娘さん、18歳でしょ?2日や3日くらい、知り合いの家に寝泊まりしているってこともよくありますよ。』


母『だから、あの子はそういう不良的な子じゃないんです。もう、3日目なんです。あの子を探してください。』


警察『今の時代ね、漫画や映画の真似か知らないですけどね、校内暴力や暴走行為を行う青少年が社会問題になっているのは、お母さんもご存知でしょ。そっちに力を注がないと警察は無能だなんて言われちゃうんですよ。わかってください。』


母『あの子も・・・あの子も、あなたたちが守るべき青少年でしょ!!』


警察『でも、所謂スケバンとかじゃないんでしょ?私たちは不良少年少女への対応で手一杯なんです。お帰りください。』


母『・・・あの子が死んだら・・・あの子が死んだら責任取れるんですか!?』


警察『・・・お母さん。熱くならないで。』


警察は二人掛かりで、母を外へつまみ出した。それで少し腕を痛めた。


母『・・・。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ガチャ・・・


瞳『あら、色葉ちゃん。』


私『もういい・・・。頭がクラクラする・・・。』


岸谷『残り80万だ。』


岸谷は電卓を叩いた。


私『もっとラクに稼げる仕事ないの?』


瞳『料理つくる?』


岸谷『そんなの金になんねぇよ。一回働くだけで40万になる仕事があるぞ。』


私『40万?2回で返せるじゃん!!』


瞳『ちょ、ちょっと・・・。』


私『なに?』


瞳『色葉ちゃん、何をするのか、わかってるの・・・。』


私『私、なんでもやるよ。』


岸谷『なんでもやるって、いったな?』


私『早く帰りたいから。』


岸谷『じゃあ瞳、あとはよろしく。』


岸谷は自分の部屋に帰っていった。


私『瞳さん、はやく連れてって。』


瞳『本当にわかってるの?』


私『わかってるよ、シャワー室行くんでしょ。もう覚悟は決めたから。』


私は覚悟を決めていた。ちんたらやっていても仕方ない。こんな体験出来るなんて、そうそうないと思うようにした。そうでもしないと心が持たない。


瞳『でも、お客さんが1ヶ月以内に2人来る保証はないのよ。』


私『・・・あ、そうだった。』


瞳『頭モヤモヤしてるんでしょ?まだ考え直した方がいいわよ。』


私『・・・うん。でも、私の決意は変わらないと思う。卒業しても行く末は自分でもわかってるから・・・経験しててもいいんじゃないかなって思うの、私。』

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