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ピンク色の壁

母『・・・そうですか。いえいえ、こちらこそ夜分遅くに申し訳ありませんでした。はい・・・はい・・・よろしくお願いします。』


ガチャ・・・


母『柳田さんのところにも、いないって・・・。』


美知『彼氏のところにでも、いるんじゃない?』


母『・・・でも、この1年間、私の代わりに真面目に働いてくれていたから、そんなことはないと思うけど・・・。』


母は自分に言い聞かすように、そう言った。


美知『お母さんは、そう言うけれど、お姉ちゃんも、もうすぐで高校を卒業する時期なんだから、そろそろ自由にさせてあげた方がいいんじゃない?』


母『でも・・・。』


美知『私が働くよ。正直1年後、高校生になってる私の姿が想像出来ないの。』


母『ごめんね・・・。でも、高校くらいは出ておいた方が・・・。』


美知『謝らないでよ。それよりも、今晩の夕食のことを考えた方が有益だよ。』


美知もまた、自分に言い聞かすように、そう言った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


岸谷『ほら、今日の晩飯だ。』


そこには、目を疑うような料理が並んでいた。私にとってはだけど。そして腹が鳴った。


私『あの・・・手錠を解いてくれないと、食べられないんだけど。』


岸谷『瞳、食べさせてやれ。』


私『赤ちゃんじゃないんだから、自分で食べるから。』


岸谷『お前は自分の立場がわかっているのか?お前はバカな母親の身代わりなんだぞ。』


立場?


私『そっちだって、女子高生を誘拐して、監禁して、犯罪者じゃない!!』


岸谷『そのわりに、強気だな。経験済みか?』


私『・・・1日だけ。』


去年1日だけ、こういうことがあった。だからと言って慣れるようなものじゃない。


瞳『ほら、口開けて。』


瞳さんは優しい口調で、そう言った。まるで赤ちゃんに離乳食を与えるように。


私『瞳さんは、そっちの元ヤクザさんと、恋人同士なの?』


瞳『・・・。』


私『もしかして、もう結婚してるの?』


瞳『・・・。』


瞳さんは、黙り込んでしまった。


私『ごめんなさい、今の質問まずかった?』


瞳『・・・いや、いいの。私は、あの人の為に生きているだけだから・・・。』


その人生は楽しいのだろうか?私は喉から出かかった質問を押し殺すように、瞳さんが口元に運んでくれる料理と一緒に飲み込んだ。


岸谷『明日から、仕事をしてもらうからな。』


私『でも、お客さんは月に5人来れば、いい方なんでしょ?明日は何するの?』


岸谷『秘密だ。』


岸谷は部屋から出て行った。


私『瞳さんは、いつまでここにいるの?』


瞳『私は、この部屋の鍵持ちなの。だからずっとここにいるわよ。』


そう言う瞳さんの顔は、少しだけ寂しそうだった。


私『あ、また私、いけない質問しちゃった?』


瞳『そんなことないわよ。人の顔色ばかり気にしてたら、疲れるでしょ。』


瞳さんは、微笑みながら、私の頭を撫でた。


瞳『今日は、もうおやすみ。』


うっ!?頭上に固定された腕に何か注射されたような感覚があった。そして、気づいた時には眠りから覚めていた。


瞳『起きたみたいね。もう朝よ。じゃあ、ついてきて。』


朝・・・。私には、それを信じるしかない。窓のない暗い部屋には時間などない。瞳さんは、私の手錠の鍵を解いた。


私『あの・・・。』


瞳『なに?』


私『いや、大丈夫です・・・。』


私は本当に1ヶ月で帰ることが出来るのだろうか・・・。時計やカレンダーがない生活の恐ろしさをたった今知った、私は、世間で言う新人類。それは若者を貶したい大人の作った意味のないカテゴリー。真実を知りたいのならばどうすればいいのか、教えてくれないくせに、威張り散らすだけの大人が作ったカテゴリー。私たちの世代は、次の世代を、そういうカテゴリーを作って、貶してはいけない。


色々、考えている内に瞳さんの脚が止まった。


瞳『ここが、シャワー室。さあ、汚れを洗い流して。』


私『え、今ですか?』


私は瞳さんに言われるがまま、服を脱いで、シャワー室に入った。ピンク色の壁が綺麗だと思ってしまった。シャワー室とは言われたけど、ここは、友達とふざけて鑑賞したビデオの中に出てきた、いかがわしい部屋にそっくりだ。


私『ここで、瞳さんが・・・?』


私の頭の中に、あられもない姿の瞳さんが映し出された。その姿は、だんだん、私自身に変わっていくような気がした。だから、我に帰った。


私『何、想像してんだろ。私。』


私は部屋から出た。そして、また、瞳さんに手招きをされた。辿り着いた場所は、受付らしい。


瞳『あなたには受付をやってもらうわ。』


私『受付って、雑用なんですか?』


瞳『受付っていっても、店が店だから、やることは、雑用ばかりなのよ。』


瞳さんは、そう言って掃除道具入れを指差した。どうやら私はおそうじおばちゃんを演じなければならないらしい。


私『瞳さんも、暇なんじゃないですか?』


瞳『・・・私たちはやる事があるから。』


言葉を濁してる。やっぱり大人なんだ。

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