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醜い道

ガチャ・・・。


私『母さん。・・・寝てる。』


せっかく佐村が気を利かせてくれて、戻ってきたのに。


私『もう、行くからね。行くからね!!』


母『・・・いってらっしゃい。』


私『起きてるじゃん。』


母『・・・。』


私は家を出た。母の鼻をすする音がうるさかったからだ。こっちにも伝染したら、収拾がつかなくなる。私は車に乗った。


佐村『早かったな、どんなこと話したんだ?』


私『・・・。』


麻里『オーケー、オーケー、早くイトさんのとこ行こう。』


佐村『次はお前のとこだろ。』


麻里『バンドやってることは知ってるから大丈夫だよ。』


佐村『俺たちが大丈夫じゃないんだよ!!一応話はしておかないと、お前の母さん、お前が誘拐されたって思うかも知れないだろ。』


麻里『大丈夫、卒業旅行って言ってあるから。』


人見『卒業旅行?』


麻里『そのまま上京するつもりはなかったからね。あっちに着いたら公衆電話で説明するよ。鈴木さん、そこ右に曲がって。』


私『私の立場がないじゃない。』


麻里『でも、あっちで電話かける気ないでしょ?』


鈴木『着いたんじゃないか。』


イトさんの駄菓子屋に着いたみたいだ。


ガチャ・・・。


私は車を降りた。なんて言えばいいのだろう。この1年間の感謝を伝えればいいのか・・・。


ガラガラガラ・・・。


私『鍵掛けてないんだ・・・。』


イト『あら、色葉ちゃん!?どうしたのこんな時間に?また誘拐されちゃったらどうするの!!』


イトさんに叱られたみたい。まだ7時だよ、イトさん。


私『あのね、イトさん・・・私、お別れを言いに来たの。』


イト『・・・お別れ?』


私『私・・・あそこで監禁されて、自分の進むべき道が見えちゃった。』


イト『それは綺麗な道なの?』


私『ううん、とっても醜い道。あ、私、イトさんに謝りに来たのかも知れない。』


私は、多分醜い顔になっていた。イトさんがそんな私の顔を抱き締めてくれた。


私『・・・ごめんなさい・・・どんなに狭くても綺麗な道を見つけたら、そっちの道に進むから心配しないで・・・。』



ガラ・・・。


麻里『(臭いこと、言ってるね。)』


佐村『(ちょっと、声がデカいぞ・・・。)』



私『本当にごめんなさい・・・。』


イト『・・・謝らないで・・・色葉ちゃんは、これから大人になるんだから・・・。笑顔じゃなくちゃ!!』


私『笑顔?』


イト『別れって言うのは、笑顔ならば全然悲しいものじゃないのよ。どんなに醜い道だって笑顔で歩いていれば綺麗な道になるものよ。』


私『ありがとう、イトさん。』


イト『そう、その笑顔!!この1年間、面白い話をたくさん聞かせてくれて、こちらこそありがとうね。これ、最後のプレゼント。』


イトさんは例の袋を私に差し出した。


私『最後の最後まで、本当にありがとう。・・・イトさん。』


イト『・・・。』


私『さよなら。』


イト『頑張っておいで。』


ガラガラガラ・・・。


私『・・・はぁ。』


私、イトさんにも嘘ついちゃった・・・。綺麗な道に戻れるはずなんかないのに・・・。


麻里『何もらったの?』


私『うわぁ!?』


麻里『そんなに驚かなくてもいいじゃない。』


私『車の中で開けてみるよ。』


車の中で、イトさんからのプレゼントを開けてみた。


私『わあ!!』


麻里『すっごーい!!』


たくさんのお菓子をかき分けると、大きなバースデイケーキを見つけた。


私『イトさん、覚えてくれていたんだ・・・。』


佐村『誕生日だったのか?』


私『誕生日は明日だよ、小学生の頃、誕生日に駄菓子屋に行くと、バースデイキャンディーを貰ってたの。多分、それを覚えてくれてたんだ。』


麻里『キャンディーじゃなくて良かったね。』


私『食べたい?』


麻里『食べたい!!』


人見『本当、甘い物に目がないよなぁ、麻里は。』


私のバースデイケーキは五当分、麻里はちょっと多めに分けられた。美味しかった。でも、ちょっと悲しかった。明日、盛大に誕生日パーティーを開いてくれる予定だったのだろうか・・・。ラジオからは暑苦しい卒業ソングが流れ出した。


人見『室伏、どうしてんだろうな。』


麻里『少年院でしょ?卒業式とかあるのかな?』


人見『少年院の窓ガラス、割りまくったりしてたりしてな(笑)』


私『町が遠くなっていくね。』


佐村『1年前までは、俺は変に気取ってたな。』


人見『俺は無駄にツッパってた。』


麻里『私は妙に傲慢だったかも。』


鈴木『・・・俺は本当暇だったな。』


私『私は・・・実に普通だった。』


あの日までは普通の女子高生だった。麻里や人見みたいな人とは縁が無く、佐村と鈴木さんなんて存在すら知らなかった。私が本当に心を許して話し合える友達は公子しかいなかったのかも知れない。その公子は、私とは違う綺麗な道を歩み始めてる。私はと言えば、公子とは違う醜い道を歩み始めてる。いつか、また逢えたときは心を許して話し合えるのかな。モザイクだらけにならないように生きることが出来れば大丈夫。そんなこと出来るはずはないけれど。

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