異常なし
1週間程が経った。私は心を決めていた。こんな田舎にいても何も変わらない。都会に出てみたいと思った。明日は、その都会へ出発する日。
岸谷『本当にいいのか?』
岸谷は耳を掻きながら問いかけてきた。
私『外に出た途端、バンッ!!とかありそうじゃない。どっちにしても、もう未練はないよ。・・・多分。』
岸谷『多分か。』
私『いや多分は取り消し。未練なんかないよ、こんな街に。』
岸谷『誘拐犯に惚れたか?』
私『惚れてはないよ。』
岸谷『そうか、それは良かった。』
私『えっ?』
バンッ!!
バーの部屋から音が聞こえた。
岸谷『隠し部屋に入ってろ。』
私『なに!?今の音!?』
岸谷『警察だろう。』
私『警察!?麻里が話したんだ・・・。』
岸谷『金曜日に支度して、昨日出れば良かったな。』
私『今日来るって知ってたの!?』
岸谷『知るわけないだろ。マスコミが張り込んでたのは知ってたけどな。』
私『盗聴で?』
岸谷『ああ、とりあえず隠れとけって。』
岸谷は私を隠し部屋に押し込んだ。
ピッ
私はテレビをつけてみた。テレビ画面には、今、私がいる建物が映っていた。警察の姿が数人見える。
ピッ
私はテレビを消した。その後の予想は簡単だったからだ。
バンッ!!
私『きゃっ!?』
警官『無事か!?』
私『・・・。』
私は無言を貫き、警官に外に連れ出された。久しぶりに中庭以外の外に出た。上空を飛ぶヘリコプターがうるさい。私は顔を隠しながら歩いた。いや、歩かされたのだ。今から、病院に行くらしい。心に欠陥が出来てないか調べるつもりだろう。私の心は生まれたときから欠陥だらけ・・・と思ってたのだけれど、結果は異常なし。やっぱり心の検査なんて、いい加減なんだ。
私『もう、終わりですか?』
医者『異常なしですから、終わりです。』
私『ああ・・・そうですか・・・。』
医者なら気づいて欲しかった。崩壊に向かっている私の心に。
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ガチャ・・・。
私『ただいま・・・。』
母『・・・色葉!?本当に色葉なの!?』
私『大声出さないで、病院なんだから。』
母『・・・だって・・・2週間近くも・・・。』
私『私、もうすぐで卒業して母さんの手から離れるんだよ。そんなんで、大丈夫?』
母『それとこれとは話が違うでしょ・・・。』
私『もしかして、前より病状悪くなってる?息荒いよ。』
母『そっちこそ、顔色悪いわよ。』
私『・・・そう?』
母『この2週間、食べ物は与えられてたの?痩せ過ぎてない?』
なんで、病人の母に、ここまで心配されなければならないのか・・・。
私『卒業式が終わったら、私、都会に出るから。』
母『えっ?』
私『こんな堅苦しいところに留まってられないよ。』
私は病室から出た。まだ時間はあるからスタジオに顔を出してみよう。




