進路不明瞭
前作よりハードな展開となっていますので、ご注意ください。
1987年2月。私たちは、選択を強いられている。大学や専門学校に進学するのか、それとも、何かしらの企業に就職するのか、はたまた、アルバイトで食い繋ぎながら、夢を叶える道に進むのか。私は3本に別れた道の目の前に立ったまま沈黙していた。
大山『白瀬さん、そろそろ進路決めないと、取り返しのつかないことになるかもしれないわよ。』
私『でも、先生・・・私の家貧乏で進学は出来ないんです。』
大山『じゃあ、就職する道しかないんじゃない?』
大人はなんて冷たいんだろ。貧乏な家に生まれた子供に選ぶ権利はないと平気な顔をして言えるんだもの。ただ私は、初めから貧乏な家に生まれたわけではない。最初の4年間は幸せだった。それなのに、お母さんが浮気して、お父さんを追い出して、可愛がりたくもない妹を生んだ。その後は何故か浮気相手とは住まず、女一手で私たちを育てようと試みた。でもお母さんの体が持たなかった。今まで続いていた仕事を辞めてしまい。毎日、毎日、寝てばかり。貯蓄も尽きて、お父さんが建ててくれた家を売り払い、アパート住まいになったのだ。おかげで、私は週3日のアルバイト。
私『先生、私、まだ答えが出せません。』
大山『もう・・・あと1カ月で卒業なのよ。どちらにしても、進学は無理ね。』
そんなことはわかっていた。もう2月だもの。私は進路指導室を出た。
友達の公子は素晴らしき推薦ってやつで、有名大学に進学するらしい。藤浪と人見と佐村は卒業後もバンド活動を続けるらしい。私は・・・。
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ガチャ・・・。
母『もう帰ってきたの?』
私『体調悪くて。』
私は、そう言って、布団の中に潜り込んだ。
母『進路は決まった?』
私『いや。』
母『もう2月よ。』
私『うん。』
母『公子ちゃんはどうするって?』
私『さあ。』
母『・・・。』
私『・・・。』
母『あの・・・色葉、怒らないで聞いてね。やっぱりこの年齢じゃ再就職って難しいみたいなの。』
私『・・・。』
母『だからね。私・・・借金しちゃった。』
私『借金!?』
母『大丈夫よ。ちゃんとしたところから、借りたから。』
私『ちゃんとしたところなら、うちみたいなところには、貸してくれないんじゃないの?』
母『一応、私も仕事は探してるし、色葉もアルバイトとはいえ、家にお金を納めてくれてるから同情してくれたのよ。』
同情?世の中はそんなに甘いものではないはずだ。私は不安だった。何か悪いことが起きる予感がしていたからだ。
私『今日は夜、何もいらないから。』
私は、そう言って眠りについた。
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私『う、ううん・・・。』
時計を見ると、朝の4時。いつも通りの起床だ。・・・まるでお婆ちゃんだ。お婆ちゃんと言えば、駄菓子屋の【早川イト】お婆ちゃん。小さい頃通っていたから、顔なじみだったんだけれど、中学生になってから、あまり通わなくなって、高校生になると全く通わなくなってしまった。そんなお婆ちゃんと再会したのは、私がスーパーのレジでアルバイトしていたとき。
イト『あら、色葉ちゃん?』
私『???』
イト『可愛いお嬢さんになって・・・。ほら、小学校の近くで駄菓子屋してたおばちゃんだよ。』
私『ああ!!いつもアタリ、ハズレ、関係なしにオマケくれてたイトさん!?』
思わぬ再会だった。6年間と言うのは、短いようで長い歳月なのだ。イトさんは自分をおばちゃんと言っていたけれど、正直、私にはお婆ちゃんに見えた。
イト『まだ、あそこで駄菓子屋やってるから、暇なときに遊びにおいで。』
イトさんはそう言いながら、品物を袋に詰めた。今日は肉じゃがかな。羨ましい。




