ひとみ
私『・・・うぅ・・・。』
気がつくと、いつもの暗い部屋にいた。起き上がることは出来ない。手首に手錠をかけられているからだ。
ドンドンドン!!ドンドンドン!!
何かを叩く音が鳴り響いている。うるさいな。私は布団の中に潜り込みたくなった。はやく家に帰りたい・・・。私は辺りを見渡した。横を見ると瞳さんが眠っていた。
ガチャ・・・。
その時、突然扉が開いて誰かが部屋に入ってきた。岸谷だ。私は半目の状態で様子を伺っていた。すると岸谷は瞳さんの衣服を剥ぎ取り始めた。瞳さんは無抵抗だ。瞳さんは岸谷と男女に関係はないって言ってたのに、やっぱり大人って・・・いや、私も、あとひと月で社会に放り出される身だ。10年後が怖い。
岸谷は瞳さんの衣服を完全に剥ぎ取った。瞳さんは無反応だ。まるで死人のように・・・死人!?
私『瞳さん!?』
私は瞳さんに呼びかけた。返事はない。
岸谷『なんだ・・・薬が切れたのか。いつから目が覚めてた?』
私『・・・。』
岸谷『なんだよ、怯えてんのか?この前までの威勢のよさはどうしたんだよ。』
私『だ、だって・・・瞳さん・・・。』
岸谷『ああ、都合が悪くなったんだよ。』
岸谷は笑いながら、そう言った。
私『なんで笑えるの・・・瞳さん・・・息してないよ・・・。』
岸谷『だから、都合が悪くなったって言ってるだろ。』
私『突然、お店を閉めたのも、都合が悪くなったから?』
岸谷『なんでお前、それを・・・。』
私『瞳さんのお母さん・・・あんたの妹が亡くなったとき、泣き崩れたのは嘘だったの!?』
私は夢の中の短い体験を事実であるかのように岸谷に問い掛けた。
岸谷『なんで、お前が瞳の母親が俺の妹だって知ってるんだ・・・。』
岸谷は困惑していた。瞳さんと自分・・・その場にいた従業員しか知らない事実を、つい先日、誘拐した小娘が知っていたからだ。
ドンドンドン!!ドンドンドン!!
岸谷『毎日、毎日、人の経営する店の扉を蹴りやがって・・・。いい加減諦めろよ。』
私『待って!!毎日?私、どのくらい眠らされてたの?』
岸谷『今日で6日目だ。手錠を外して欲しいか?』
岸谷は取引を持ちかけてきた。
岸谷『瞳の代わりになってくれるなら、今すぐ手錠を外してやる。』
私『代わりって、どういうこと・・・?』
岸谷『俺と一緒に生活するんだ。』
私『生活?夫婦になるってこと・・・?』
バン!!
そのとき、扉が開いた音がした。
岸谷『クソ!!』
ガチャ!!
麻里『あ・・・。』
岸谷は麻里に銃を向けていた。
ガチャ!!
人見『こっちか!!ま、麻里!?』
私『人見!!じっとしてて!!』
岸谷『そっちのヤンキーが動いたら、こいつを撃つ。』
麻里『・・・。』
人見『せっかく、扉をぶち破ったのに・・・ちくしょう・・・。』
岸谷は麻里に銃を向けたまま、私に近づいてきた。
私『て、手錠を?』
岸谷は私の手錠を外した。
岸谷『わかってるよな?』
私『・・・うん。』
何がわかっていたのだろう。私は、何もわからなかった。何故、私が岸谷に従っていたのか。
私『ごめん、麻里と人見は大人しく帰って・・・。私は大丈夫だから・・・。』
大丈夫なんかじゃない。私は怖くてたまらなかった。麻里と人見が犠牲になるのが怖かった。
麻里『・・・それ、本心なの・・・白瀬を助け出すのに必死だったんだよ!?』
麻里は泣きながら、叫んだ。
岸谷『声のでかい女は嫌いなんだよなー。』
人見『おい・・・やめろ!!』
バン!!
麻里『・・・人見!?』
私『・・・。』
人見『・・・血が出てるよ・・・俺の肩から血が出てる・・・。』
麻里『人見!!しっかりしてよ!!』
人見『大丈夫だ・・・なんとか歩けるから・・・。』
バン!!
岸谷『これで歩けないだろ。こっちも弾が尽きちまった。』
私『・・・。』
岸谷『色葉、瞳の処理を頼む。』
岸谷は大きな袋を指差した。私は抵抗しなかった。
麻里『!?』
私『瞳さん、冷たいね。』
麻里『白瀬・・・その人・・・死んでるの・・・?』
麻里は震えた声で、私に問い掛けた。でも私に麻里の声は届かない。私は瞳さんの冷たい体を大きな袋に詰めるのに夢中だった。
岸谷『えっーと、麻里ちゃんだっけ、そっちのヤンキー、まだ息あるみたいだから、そいつ連れて逃げた方がいいんじゃない?』
麻里『に、逃がしてくれるの・・・?』
岸谷『ああ、だが今起きたことを漏らしたらわかっているよな?』
麻里『・・・。』
麻里は人見の腕を自分の肩にかけながら、外に出て行った。
私『詰めたよ。』
岸谷『ありがとう。』




