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第6話 ロンリーガール


ー新宿歌舞伎町ー


姫川エリカは拉致されて車で連れ去られた。

しかし途中の信号待ちで、隙を見て車から逃げ出した。

そして歌舞伎町へと逃げ込んだ。


取り敢えず人の多そうなゲームセンターに飛び込んだ。

プリクラの部屋の中に入って、カーテンの隙間から通りを覗く。

エリカを拉致した奴らが、辺りを見ながら走って行く。

エリカは椅子に座り込んだ。


“どうしよう”


考え込んでいると外で声がした。


「あれ~?これ使ってんだ。誰かいるよね?」


エリカは居づらくなって、プリクラから出た。

奥のテーブルゲームの椅子に座る。

入り口を注意して見ていると、追っ手の1人が携帯電話で話しながら入って来た。

急いで反対の入り口からそこを飛び出した。


飛び出したはいいが、歌舞伎町のあちらこちらに、エリカを探していると思われるチンピラやらヤクザやらが走り回っている。


エリカは、探偵に貰った名刺を思い出した。

狭い路地の電柱に隠れて名刺を出して見る。


“荻野目探偵事務所・三神田龍一”


警察には助けを求められないが、探偵なら何とかして貰えるかもしれない。

エリカは書いてある携帯番号に電話してみた。

しかし相手は出なかった。

エリカはため息をついた。


表の通りを走って行く足音にビクッとして電柱に隠れる。

恐る恐る通りを覗き込んでいると、後ろから肩を叩かれた。


「キャッ!」


エリカはビックリして思わず声を出して、慌てて口を両手で塞いだ。

振り返ると、白髪のお爺さんがニッコリ笑って立っていた。


「お嬢さん。困った事でもおありかね?」


やさしそうなお爺さんだったので、ホッと胸を撫で下ろした。


「助けて下さい!悪い人に追われてるんです!」


エリカはそのお爺さんにすがるように言った。


「そうかい。そりゃあ難儀じゃの。着いて来なされ」


そう言ってそのお爺さんは歩き出した。

他に行く場所も無いので、お爺さんに着いて行った。

お爺さんは、一軒の潰れた飲み屋のドアを開けて中に入った。

エリカも後に着いて中に入る。


店の中は、はだか電球が薄暗く着いている。


「そこに座っててくれんか。今、お茶入れるからのう」


エリカは、周りを見渡しながらカウンターの椅子に座った。

カウンターはほこりが積もっていて、蜘蛛の巣だらけの店の中は異様な雰囲気だった。


“何かヤバそうだから、お爺さんにひとこと言って出よう”


そう思って奥に行って覗き込んだ。

お爺さんはお茶を入れていた。

入れたお茶の湯飲みに、白い紙に包まれた粉を入れていた!


「え?睡眠薬?」


エリカはその部屋を飛び出した!


"あのエロジジイ、私を眠らせて何する気だったんだ!"


エリカは、今までこんな孤独感を味わった事はなかった。

いつも自分の周りには誰かが居て、何でも言う通りにやってくれていた。

何でも思い通りに事が進んだ。


しかし今は1人。

誰も助けてはくれない。


“誰か助けて!”


エリカは心の中で叫んだ。


精神的に参っていたエリカは、とにかく何処かに座って休みたかった。

建物と建物の間に、人ひとりがやっと通れる隙間があった。

そこに体を横にして入ってみた。

狭い裏庭があって物置がある。物置の影に座り込んだ。

座ったら急に睡魔が襲って来た。

ちょっとだけ目を閉じた。


そして深い眠りに落ちた......











気がつくと、見渡す限り真っ白で何も見えない。


“ここは何処?”


風が吹いて霧が飛ばされて行くと、見覚えのある風景が見えて来た。


“学校の廊下?”


エリカは、学校の廊下に1人で立っている。

前から黒沢ユリが歩いて来る。


“え?ユリ?生きてたの?”


黒沢ユリは、まっすぐ前を向いたまま通り過ぎる。


“ちょっとユリ!聞こえないの?”


エリカは走って行って、黒沢ユリの肩を掴む。


黒沢ユリは振り返って言う。


『あんた誰?』


そしてまた前を向いて歩いて行く。


“ユリ…”



また霧が立ち込めて真っ白になる。



風が吹いて霧が飛ばされると、学校の屋上にいた。


黒沢ユリが目の前にいる。


黒沢ユリはフェンスに向かって歩き出す。


そしてフェンスを乗り越える


黒沢ユリは鼻歌を歌いながら、フラフラとフチに沿って歩き出す。


エリカは急いでフェンスを乗り越える。


黒沢ユリは屋上の角に立つ。


エリカは黒沢ユリの後ろに立って言った。


『さよなら!』


そして黒沢ユリを突き落とした!


霧の中に落ちてゆく黒沢ユリ……







気が着くと、携帯電話が鳴っていた。

時間を見ると午前2時。

どうやら眠ってしまっていたようだ。


「夢か……」


エリカの目からは涙がこぼれていた。

涙を拭きながら携帯電話に出る。


「もしもし。


(もしもし、ひょっとして姫川エリカ?)


そうだけど、誰?


(よかった、無事で。僕は~、君に名刺を渡した探偵の三神田。寝てる間に携帯に着信があって、ひょっとしたら姫川エリカかな~って思って掛けてみたんだ)


え?ホントに?助けて!あいつらから逃げて、いま追われてるの!


(今ドコにいるの?)


ちょっと待って」


エリカは電話しながら表の通りに出た。

曲がり角まで行って様子を伺う。

そしてそばにあるゲームセンターに入った。


「もしもし、今ねぇ、歌舞伎町の『エスパス』って言うゲームセンターにいるわ。

早く迎えに来てちょうだい!


(分かった。そこを動かないで)」


エリカは電話を切ると、奥の椅子に座った。


やっと助けが来てくれる、そう思ったら少し安心してまた眠くなって来た。

椅子の背もたれに寄り掛かってうとうとしていた。


エリカは1、2分の感覚だったが、実際には20分が過ぎていた。

後ろから声を掛けられて気が付いた。


「こんな所にいたのか。探したよ」


「ん?え、もお?随分と早かった……」


エリカが振り返ると、そこに立っていたのはユオではなく追っ手の1人だった。

エリカはとっさに逃げようとしたが、男に両肩を掴まれて椅子に戻された。


「まぁゆっくりしてけや」


男は携帯電話を出して

数字を押した。


「俺だ。姫を見つけたぜ!…… あぁ、取っ捕まえたさ。ここか?ここは」


ガンッ!


そう言ったまま男は、エリカにのし掛かって来た。


「なにすんのよ!このエロジジイ!やめないと……あれ?」


男は、のし掛かって来たかと思ったら床に倒れた。

その後ろに、角材を持って脇腹を押さえたユオが立っていた。


「お待たせ。探偵の三神田登場!」


突然の白馬に乗った王子さまの登場…

とまでは行かないが、エリカにとっては救世主が現れた。


「やっと来た~!」


エリカは立ち上がって、ユオに抱き付いた。


「ちょ、ちょっと!イテテテッ!」


そして我に返って離れた。


「やだ!私ったら何やってんだろ。ちょっとあんた大丈夫?ケガしてんじゃないの?そんな事より、早く私を安全な所に連れて行きなさいよ!」


エリカは急に女王様に戻って、腰に手を当てながら偉そうに言った。


「言われなくてもそうするよ」


言うが早いか、ユオはエリカの手を取って走り出した!


「ちょっと!速いわよ!ハイヒールなんだから!ちょっと~!」


2人はゲームセンターを飛び出した!













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