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第2話 霧の中


ー新宿警察署捜査1課ー


ボッサンとオッパイは、黒沢ユリが学校の屋上から飛び降りた経緯を調べに、新宿警察署にやって来た。


ボッサンとオッパイが歩いていると、向こうから北川警部補ホヘトが歩いて来た。

ホヘトはボッサンとオッパイに気が付いて、早足で近づいて来た。


「最初に何て言うと思う?」


ボッサンがオッパイに聞いた。


「多分、『何だ?自首しに来たのか?』じゃないすかね」


「俺は『何だ?また何か企んでるな?』に千円!」


「よし!乗った!」


ニヤついてるボッサンとオッパイの前にホヘトは来て言った。


「何だ?また何か企んでるな?」


オッパイはうなだれながらボッサンに千円を渡した。


「3日前に新宿高校で事件があったろ?」


千円札をポケットに仕舞いながら、ボッサンはホヘトに聞いた。


「あ~、女子高生の飛び降り自殺ね。それがどうした?」


ホヘトは両手をポケットに突っ込んで胸を張って言った。


「自殺なのか?」


ボッサンが聞いた。


「自殺だ」


ホヘトが言った。


「本当に自殺か?」


ボッサンが念を押して聞いた。


「目撃者がいるんだ。その子が言うには、校舎の下にいたら屋上にいる黒沢ユリが見えたそうだ。飛び降りそうだったから止めたが、そのまま飛び降りてしまったそうだ」


「時間は何時頃なん?」


オッパイが聞いた。


「宿直の先生から警察に通報が入ったのは、午後6時5分だ。だから飛び降りたのは、そのちょっと前だろう」


「屋上に出る扉の鍵は?」


「昼間は開けっ放しで、午後4時に閉めるそうだ。その日も宿直の先生が4時に閉めたそうだ」


「じゃあ黒沢ユリは、宿直が鍵を掛けた時に屋上に隠れていたって事か?」


「そうなるな」


「お前らが行った時、屋上の鍵は?」


「開いてた」


「開いてた?誰が開けた?」


「宿直の先生だ。でも通報を受けて俺らが行った時は、

『開けてない』

って言ってたんだ。次の日その宿直だった先生が署に来て、

『やっぱり開けてた。気が動転してて分からなくなってた』

って言うんだ。」


「何で証言をひるがえしたんだ?」


「だから気が動転してたんだろ?」


「遺書は?」


「遺書は無かった。屋上に上履きが揃えて置いてあっただけだ。多分、突発的に飛び降りたんだろう」


「突発的ねぇ」


ボッサンは腕を組んで考える。


「事件性は無いよ。さぁ、用が済んだら帰った帰った!」


ホヘトは手で払いのける仕草をして戻って行った。その後ろ姿にボッサンは聞いた。


「その目撃者の名前は?」


「姫川エリカ。黒沢ユリのクラスメイトだ」


ホヘトは背中で言いながら部屋に入って行った。



ボッサンはどうも納得が行かなかった。

宿直の先生が証言をひるがえした事、姫川エリカの証言、それと、黒沢ユリが屋上に隠れていたとすれば、午後4時から約2時間何をやっていたのか……






ー荻野目探偵事務所ー


ボッサンとオッパイが事務所に戻ると、ユオとアオイは一足先に帰って来ていた。


「お~同級生コンビ、帰っとったか。どうやった?久々の母校は?」


オッパイがカウンターの椅子に座りながら、ソファーに座っているユオとアオイに聞いた。


「なんだろな~、僕らがいた時より活気がなかったな~」


「たしかにな。でも陸上部の顧問は活気があったけどな。ユオを見つけたらすっ飛んできて、お前はこの学校の恥さらしだ!出てけ~、ってね」


ボッサンはユオの隣に座りながら聞いた。


「ユオ、何をやらかしたんだ?」


「え~?大したこっちゃないよ」


ユオがすっとぼけてるので、アオイに振ってみた。


「アオウィ~、お前知ってんだろ?」


「ま~早い話が、喧嘩して国体の決勝に出れなかったって事ッスね」


「え~!バカじゃね~の!」


「違うんだよ~。ぼくが予選トップだったら~、2位の奴がうちの陸上部ボロクソに言って来て~、頭来たから突き飛ばしたんだ。そしたら大げさに騒ぎやがって。そんで失格になって、今はこのザマって訳よ」


両手を広げてポーズを取るユオ。


「そんな事より、なんか分かったか?」


ボッサンがユオを突ついて聞いた。


「うんとね~、黒沢ユリは結構遊んでたらしいよ。で~、不良グループのリーダーの姫川エリカと仲良かったって」


「目撃者の姫川エリカは、黒沢ユリと友達だったんだ」


ボッサンはタバコに火を着けると、立ち上がって歩き出した。


「ちょっと整理してみよう。

午後4時に宿直の先生が、屋上の鍵を掛ける。

その時黒沢ユリが屋上で隠れていた。

黒沢ユリは約2時間待って午後6時ちょっと前、屋上のフチに立つ。

その姿を下にいた姫川エリカが目撃、止めたが飛び降りた。

そして宿直の先生が警察に通報する。

屋上に行くと鍵は開いていた。

最初、宿直の先生は鍵を開けてないと言っていたが、翌日になって自分が開けたと証言をひるがえした」


ボッサンは立ち止まって言った。


「ひょっとして、宿直の先生の最初の証言通り、屋上の鍵は開いてたんじゃねぇか?」


「だとすると何なの?」


ユオが聞いて来た。


「だとすると、宿直の先生が午後4時に鍵を掛けた後、誰かが鍵を開けたって事だ」


「そいつは誰スか」


アオイが聞いて来た。


「それはまだ分からんが、もし鍵が開いてたとすれば、黒沢ユリは屋上に隠れていたんじゃなくて、鍵が開いていた扉から屋上に上がったって事だ」


そう言って、ボッサンはまた歩き出した。


「宿直の先生は、何で証言をひるがえしたんやろ?」


オッパイは1人でコーヒーを入れて来て、スプーンでかき混ぜながら言った。


「そこだよ問題は。証言をひるがえしたおかげで、すんなり自殺で処理された訳だ」


「ほじくり返されると困る奴がおる、ちゅ~こっちゃな」


オッパイはそう言ってコーヒーを飲んだ。


ボッサンはまた立ち止まって言った。


「それともう1つ、黒沢ユリが屋上から飛び降りた時、屋上に誰か居た可能性が出てくる」


「じゃあ殺された可能性もあるって事?」


ユオが頭の後ろで手を組みながら言った。


「有り得るな。しかしもうちょっと調べんとな」


ボッサンは、霧の中にいるような今の状況を打ち消す様に、灰皿でタバコをもみ消した。













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