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第1話 仮面の少女



学校の屋上。


彼女はフェンスを乗り越えた。


彼女はゆっくりと歩いて屋上のフチに立った。


彼女は鼻唄を歌いながら、フラフラとフチに沿って歩き出した。


そして屋上の角まで来て止まった。


彼女は顔を上げた。


目の前の沈みかけた夕日が、彼女の顔を真っ赤に染めていた。


彼女はにっこり微笑むと、


夕日に向かって1歩を踏み出した……








ー荻野目探偵事務所ー


「イテテテッ!」


「どうだ! 参ったか! 」


「う~、参ったって言いたくない~!」


ボッサンはニヤリと笑うと、ユオに掛けているリアルCQCの手を更に締め上げた!


「おりゃ!」


「イタタタッ!ギブギブッ!」


ユオはボッサンの手を叩きながら言った。


「あれ?もうギブ?だらしね~なぁまったく!」


ボッサンが手を緩めると、ユオは四つん這いになってゼーゼー言いながらボッサンを見上げた。


「加減って事を知らないのかねぇ、このオッサンは!」


「オッサンじゃね~だろ!このボケが!」


ボッサンはユオの言葉を聞いて、またリアルCQCを掛けた。


レミはボッサンのデスクでファッション雑誌を読み、アオイはダーツを、オッパイはソファーでコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。


「ユオ、そのまま逝ってまえ 」


オッパイが新聞をめくりながら独り言の様に呟いた時、ドアをノックする音が聞こえた。


「ユオ、ゴングに救われたな!」


ボッサンはユオから手を放してドアに向かって言った。


「はい、どうぞ」


ドアを開けて入ってきたのは、着物姿の婦人だった。


歳は30代後半位だろうか?品の良さそうな女性で、俗に言う”小股の切れ上がった女”といった感じである。


「ヒュ~!」


オッパイが口笛を吹いた。


「ささ、こちらへどうぞ。オッパイ!そこどけ!」


倒れてるユオをほっといて、小股の…いや、着物の婦人をソファーに誘うボッサン。


「あら、この方大丈夫?」


床に倒れてもがいてるユオを見て心配する着物の婦人。


「大丈夫、大丈夫。ちょっと睡眠不足みたいで。レミ、コーヒー」


着物の婦人がソファーに向かう後ろ姿の、アップにした髪のうなじに見とれているボッサンにレミは咳払いをして


「ボッサン!見とれてない!」


ボッサンは慌ててソファーに座った。


「さあて、今日はどの様な事で?」


「はい、実はですね…… 」


着物の婦人は神妙な面持ちで話し始めた。


婦人の名前は、黒沢ユミ、39歳。一人娘の高校2年生のユリが、3日前に学校の屋上から飛び降りて自殺をしたという。イジメを苦に自殺したと思われたが、学校側はイジメは無かったと否定。

親の言う事は素直に聞く真面目なとてもいい子で、自殺の理由は心当たりが無いと言う。

しかし警察は自殺と断定。どうしても納得が行かないので、調査して欲しいと言うのである。


「分かりました。調べて見ましょう。で、お嬢さんが通っていた学校は何処ですか?」


「都立新宿高等学校です」


それを聞いてユオが首を撫でながら言った。


「僕の母校だ。あ~イタかった」


「て事は、俺の母校でもあるな」


アオイがボードからダーツを抜きながら言った。


「よし!今回の調査は、ユオとアオイで行ってこい」


ボッサンはユオとアオイに言うと、着物の婦人にニッコリ微笑んでコーヒーを飲んだ。


「え~、アオイと~?」


「ユオかよ!」


ユオとアオイは不満タラタラに言った。


「2人で行ってこい!これは命令だ!」


ボッサンの命令に2人は渋々返事をした。


「へいへい」


「仕方ないッスね」






ー都立新宿高等学校ー


都立新宿高等学校。

新宿駅に程近く、新宿御苑に隣接する緑に恵まれた男女共学校。校舎は鉄筋7階建ての近代的な建物で、学校と言うよりはオフィスビルの様だ。


ユオとアオイは正門の脇で、生徒が出てくるのを待っていた。


「なんだろな、この気まずい雰囲気」


「俺だって居心地わり~よ」


2人は少し離れてソッポを向いて立っていた。

そこに男子生徒が門から出てきた。


「ちょっといいかな。自殺した黒沢ユリの事で聞きたいんだけど…… 」


最初はユオが切り出した。

しかし黒沢ユリの名前を出すと、顔色を変えて足早に行ってしまった。


「ユオ、そんな聞き方じゃだめだな」


「じゃあアオイやって見せてよ~!」


「分かった。よ~く見とけ」


アオイが2人組の女子生徒に声を掛けた。


「あのさぁ、2年の黒沢ユリって子いる?俺、ユリにCD借りてて返しに来たんだけど、もう帰っちゃった?」


女子生徒2人は顔を見合わせた。そしてポニーテールの子が言い出した。


「あんた知らないの?ユリは自殺しちゃったのよ!」


アオイはそれを聞いて大げさに驚いて見せた。


「え~!うっそ~!マジで?なんでなんで?」


もう1人のお下げの子が言った。


「よく知らない」


「じゃあ、ユリと仲良かった子っていた?」


アオイは2人の子を交互に見て言った。


「エリカだよね?」


ポニーテールの子が言った。


「エリカ?」


アオイが聞き返した。


「姫川エリカ。ユリと仲良かったよね。不良グループのリーダーで、ユリもよくつるんで遊んでたわよねぇ?」


「そうそう、あの子見た目は大人しいけど結構遊んでたよね」


「え~、ユリって不良だったんだ」


「あ!ごめん、私から聞いたって言わないでね」


そう言うと2人は走って行ってしまった。

2人を見送っているアオイにユオが近づいて言った。


「アオイ、なんか話が変わってきたな」


「屋上で何があったんだろう」


アオイは振り返って、学校の屋上を見ながら言った。













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