龍モドキ
視界の隅に映った影を反射的に蹴飛ばしたが、妙に蹴りごたえがない。
実は止めに入った人でも蹴ったかと慌てて先客の方をみる。
「あれ?動いてねぇなぁ。」
正面の騎士を見ると興が削がれたように俺から視線を離してる。
「……まったく、無粋ですね。
折角、同志討ちをしているのですから決着がつくまで様子を見ようという頭は無いのでしょうか。」
「き、貴様等は何だ?!人か?」
「あれと一緒にしないで頂けますか?とてもとても、心の底から不快です。」
「あれって何だあれってっ!」
どいつもこいつも俺の扱いひでぇな!!
騎士が誰と話しているのかと視線を動かせば
典型的な不審者、黒ローブフード付きがいた。
「いっそ、姿を隠すなら黒タイツでも着ればキャラが立つのに…。」
「そんな変態が目の前にいたら貴方よりも先に切り飛ばします。」
「く、ふざけおって………わが後ろに控えるのはどなたと心得る。
世界唯一の龍、最大の災厄、凶龍だぞ?!!」
すっげぇ、小物臭がする…。
まぁ、確かに黒ローブの後ろには龍がいる。
黒く光を反射する硬質な鱗。
長く逞しい尾。
風を巻き起こせば立っていられなくなりそうな背中の翼。
そしてまた、此方を映す黒の瞳。
うん。
「偽物じゃんそいつ?」
「ほぅ?面白いな根拠はなんですか?」
騎士が剣を龍に突き付けつつ声だけで言う。
「まず、棲みかだな。凶龍は、洞窟の奥っちゃ奥だけど地底湖に住んでる。
人間には必要以上にちょっかい出さないし棲みかから出たって話も聞かないしなぁ…。
知性もか。
偽物扱いされてもなんでか喋んないし、その不審者に代弁させる意図も分からん。
最後に強さ?
正直騎士より強いと思わん。
お前本気出せば瞬殺じゃね?これ。
他にも細々とした違いはあるけどな、色とか。
リョートも偽物いってたしな。」
「氷鳥が言っていたのなら、納得ですね。」
「前半の俺の説明まるっと無視?!!」
「…瞬殺とは舐められたものですね。
確かに凶龍ではないがこいつは私が産み出した最高のキメラ。
音も気配もなく飛ぶその姿をとらえることなど出来ぬわ!!」
いやさっき蹴ったし………ポジティブ?
てか、あっさり偽物と自白してるがいいのか?
知られたからには生きて返さないぜ!的なのりなのか。
「さて………どちらが狩りますか?」
「お前はともかく、俺には龍モドキは荷が重いって。」
「ご謙遜を。」
「いやほらそれに、後ろからぐさーとかもうやだし。」
「…………チッ。」
「まぁ……相手がこっちに合わせてくれるかは別問題なんだけどさ。」
死角に回り込んでいった自称キメラを視界に納めなおしつつ。
俺はため息混じりにいった。




