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灰の龍は退屈が嫌い  作者: 白色野菜
冒険者の章
23/54

行動予定

「で、どうたんだ。それとも、人間は突然奇行に走る生き物なのか?」

「…全然全くこれっぽっちも分かって無いな、お前。」

「人間の細かいやり取りは見ていて苛立つからな。」

宿屋の部屋を取り、部屋で食事が取れると言う事で注文した。

テーブルは無いのでベッドの上が食事の場だ。

リョートはサンドイッチのハムを引っ張り出し、器用につっつき食べている。

すると、アレンは自然とレタスオンリーのサンドイッチを食べることになるのだが本人は気にしていないようだ。



「龍と別れた後村に行ったろ?」

「あぁ、龍の危険が無い報告とか言っていたな。……ごろつきどもがいたが。」

「何時、龍が帰ってくるか分からないから村で待機とか。

あれ、絶対左遷だよな。」

「左遷?」

「あーーー、うん。まぁ、説明は置いといて。

 とりあえずあのごろつきどもを退かして欲しいって、村長さんに泣きつかれたからさ。」

「抱きつかれていたな。」

「意外と逞しかったぞ?村長さん。龍の情報を商館に持ってって城に流してもらおうと思ったんだけどさぁ……。」

「駄目だったのか?」

「駄目だったなぁ。予想以上に腐ってた。」


パン粉のついた指を舐め、ベッド下においてある荷物袋の中から厚手の本と竹筒を取り出す。

サンドイッチが入っていた木製の皿をひっくり返し、机代わりの場所を確保するし

筒の中から茶色い紙と羽ペンを取り出す。さらに底の部分を取り外すとインクの器が出てくる。

リョートは様子を興味深そうに目で追う。


「本?意外だなそんな高価なものを持っているとは…。」

「んー、まぁ。じいちゃんの家にあったの持ってきただけなんだけどさ。あぁ、あったあった。」


アレンがページをめくる手を止める。

黄ばんだ紙に、少しだけにじんだインクで大きな龍の絵が一枚。

その隣のページには少しだけ崩れた字で文字が書き連なれている。

最初から書いてあった、列をなす文字。

空白を埋めるように書かれた走り書きの文字。

どちらも同じ癖の文字で書かれている。


「んーと、龍の生態。で…あぁ、そうそう。龍って縄張り意識が強いから同属の居るところには必要以上にこないんだ。

 記憶に間違いはなさそうだし、まぁ、情報が古いけどいけるかなぁ…龍が複数体確認できたのって何百年前だよ…。」

「…なんだ、その本は?」

「なんていうんだろ…家の知恵袋?整理もろくにされてないんだけどさ。」

アレンが走り書きで、龍のページを紙に書き写す。

さらにページを何枚かめくりながら、ペンを走らせていく。


「ん…あった。気配を強くする陣…か?…一部だけでいいや。必要なのはこんなもんか。」

陣の形を正確に紙に書き写すと紙をベッドの枕元に放り投げ、ペンやインクを元通りにしまう。

ベッドの上にはひとつのインク染みも残さない。


「…何をしたいんだ?」

「あーーー……龍がもう帰ってこないことの証明だな。」

「…本人に頼めばいいのではないのか?」

「それでも、安心できないのが人間って言う生き物だし。

 やっても、龍が言う事を素直に信じないだろなぁ…腐ってるし。」


「それで、証明するために走ったのか?」

「………………いやいやいやいや。」

「?」

「……。」


「…奇行の理由を聞いたはずだが?」

「………………いや、そこは察しろよ。」

「無理だ。」

「即答?!…いやまぁ、走ったのは予想以上に腐ってたのがイライラしたんだ。」

「それならそう言えばいいのだ。まったく、人間は回りくどい。」

「リョートが単刀直入すぎるってだけだと思うわ…。まぁ人間が回りくどいってのはあるのか?」

「ある。」

胸を張り堂々と答えるリョートに、苦笑を一つ返し。


「うんまぁ、その証明の為にこれからしばらく東に行くからな。

 具体的には国境までか。」

「国境に何があるんだ?」

「龍がいる。」

乾かすために放置していたメモ紙を丸めながらアレンが言う。


「凶龍っていう、おっかない龍がいるんだ。

 この間あったへんてこな龍とは別の……多分、世界で唯一の。

 最後の龍だったやつが。」

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