面会
案内された部屋に入ると金色の装飾が施された重そうな机の向こうで男が先ほどアレンが運んできた手紙を読み進めている。
案内された場所から動かないアレンを疑問に思いながら、暇つぶしかリュートが周囲へ視線をめぐらせる。
部屋の内装は質素で尚且つ上質なものだが、置かれた貴金属製の家具が全てを台無しにしている。
部屋の中央には小太りの男がいた。
正確には、腹が出ているだけでほかはまぁ平均的だが…腹が出ているだけで印象が違う。
心なしか、額も広く浮き出る汗も油のように見える。
おそらくは部屋の主であるギルド長だろう。
当たりをつけたリュートはあまりにも弱そうな男に疑問が積もる。
仮にも彼はこの『商館』とやらの群れの長ではないのか?
それにしては、あまりにも………。
「…アレン、だったな。手紙の配達ご苦労だった。」
「はい。」
「報酬はこれだ。」
男は机の引き出しから重たい皮袋を取り出し、それをアレンの足元へ投げる。
金属が擦れる重い音が部屋に響くが、アレンは皮袋に手を伸ばさない。
「…報酬は村長からいただくことになっています。」
「あの村に近づくなら解雇する。」
「……………まだ、依頼の途中ですが?」
小太りの男が鼻で笑う。
「依頼?非公式で貴様が手紙を持ってきただけだろう?記録には残らん。」
「……手紙の内容はよく読んでもらえましたか?」
「無論読んださ、その上での結論だ。」
「………………わかりました。」
アレンは皮袋を拾い上げ、一礼してから部屋を退室して扉を閉める。
「まったく余計なもんを…。」
扉越しに何かが破られる音と苦々しい声を聞きながら、今度は案内もなくまっすぐ出口へとむかう。
リョートは何もわかっていないからか、退屈だったからかアレンの頭の上でうつらうつらと舟をこぐ。
だから、一瞬浮かんだアレンの表情は誰も見ていない。




