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灰の龍は退屈が嫌い  作者: 白色野菜
冒険者の章
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商館

両開きの扉を開けると俺に突き刺さる視線、視線、視線。

値踏みの視線が一瞬で格下を見るそれに変わって行くのを見るのは、相変わらずの光景で。

自分で選んだ評価なんだが少しだけ、胃が重くなる。


「表で絡まれねぇと思ったら、なかで噂話か。暇な野郎共。」

「なに……。」

「喋んなって、珍しいから売られんぞ。」


リョートの問いかけを無理やり塞ぎ、なんでもない風を装い一歩を踏み出す。

酒場になっている一階を見渡したところで視線とかち合い絡まれるだけなので、一直線に二階への階段を不自然で無いペースでなるべく急ぎ上がってく。


「……なんなのだ、奴等は。あの視線はまるで…。」

「帰りに嫌でもわかるさ。」


空気が読めるようになったのか、それとも敵意に敏感なだけなのか。

軽く肩をすくめてみせ、二階の踊り場から続く扉に手をかけドアノブを回す。





「……ほぅ。」

「頼むから、はぐれるなよ。」


扉の先は中央通りと肩を並べられる程の人混みだ。

予想していたとはいえこの中をかき分けて行くのかと思うとうんざりする物がある。


相変わらず集まる人の種類は雑多。

一階の酒場でこちらを見ていたごろつきのような者、騎士のように鎧を着た者。

丈夫な麻の服を身に纏う田舎者、清潔な服を着た召し使い。

中にはお前暗殺者?と、問いかけたくなるような黒ずくめの姿をした奴まで居る。


人に押されながもどうにか隙間を縫って歩く。

こういう時ばかりは、頭の上に居るリョートがうらやましい。


どうにかこうにかカウンターまでたどり着くと、そこもそれなりの列が並んでいる。

……正直帰りたくなってきたが、カウンターに並ぶ人の列の中でもっとも列が短い列へ並んで待つ。

受付係の手際が良いのか一息つけたころタイミング良く、俺の番になることとなった。



「あー、これ雇用証明書(ギルドカード)。で、こっちが依頼受諾証明書。」

あらかじめバッグから取り出しておいた物を手際よくカウンターの上並べる。

受付係は素早く、カードと依頼書を手元で確認する。


「はい、アレンさんですね。依頼の品物はアリシナ草を三株です。」

「あー、依頼破棄の手続きを頼む。……金貨一枚で良いんだよな?」

依頼破棄の場合は報酬の倍額だろ…。

仕方ないとはいえ……依頼破棄すんのはやっぱいい気分じゃないよな。


「はい、この依頼は前金がありませんので銀貨50枚の倍払いなります。」

「じゃあ、依頼破棄の料金は銀行から引き落としで。」

「畏まりました、残高は参照なさいますか?」

「それは飛ばしてくれ、それから………。」

なくさぬよう服の内ポケットに入れておいた、決して肌触りがいいとは言えない手紙を取りだす。

それでも、あの村にあった中では一番上等な紙だ……これからどんな扱いを受けるのかと思うと溜息つきたくなるが。


「こいつは第七区十三号の村長からギルド支部長に当てたもんだ。必ず、本人が読んだことを確認するまでが依頼になってるはずなんだけどさ…。」

「少々お待ちください。」


受付係がカードを席を離れる、とりあえず依頼破棄の手続きでもしに行ったんだろう。

リョートがあくびをひとつした頃、受付係が戻ってきた。

予想より、早い。


「お待たせしました。支部長がお会いになるそうです。横のカウンターからお入りください。」

「了解。」


受付係の後ろをついていき、さらに階段を上がっていく。


「いったいどこへいくのだ?」

「んー、ギルド支部長………確かここ癖のある奴だったから気を付けろよ。」

「……何をだ?」

「話すな切れるな攻撃するな。」

「……しつこいな…分かったと言っただろう?!」

「ほんとにわかってるんだか………。」

敵意だけの判断がつくとかキレそうだよな…。

眠そうだからその前に寝てくれりゃいいんだけどさ。


そんな事を思いながら、廊下に並べられた意匠のこらした置物を眺める。

どれも製作者も時代も国もばらばらな物で、どうもちぐはぐな印象を受ける。

とりあえず高いもの並べましたっ!といった雰囲気でまだ神殿に並べられている物の方が整頓されている。


………ほんと、これから会うやつの趣味が心配だ。

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