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灰の龍は退屈が嫌い  作者: 白色野菜
龍、初めました
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治療

なるべく簡潔にしましたが、多少痛々しい描写があります

 一号と二号、騎士が居なくなってから、7回昼と夜が入れ替わった。今は月が満ちて行く時期らしく夜はとても明るい。2つの月の月齢は2~3離れている程度だ。これなら、片方が新月の時には空を飛べそうだ。

 ちなみに今は寝待ち月(やくまんげつ)程度だ。氷鳥の時は三日月と新月だったと思う。…月の満ち欠けの周期が同じらしい。これで湖で時間を潰しても、後で何日経ったか大雑把に考える事も出来そうだ。

 洞窟の中で、自分が生活するのに必要な基準を作っていく。



 8回目の昼、一号と二号がボロボロでやってきた。もっとも一号は服が破れているだけで、怪我をしているのは主に二号だが。1つと1匹は空から洞窟に辿りついた瞬間、入口近くで崩れ落ちた。大きくなっていた二号も鳩の姿に戻る。


 原因には心当たりがあり過ぎる程度にあるが、間違っている可能性もある。声をかけずに歩み寄ると洞窟の中で仰向けに倒れこんでいる一号の腹を踏みつける。まぁ、潰れる音はしなかったので大丈夫だろう。


「どうした?人間は玄関で倒れるのが礼儀なのか?あぁ、もしやそれは五体投地なのか。それにしては姿勢が崩れているぞ?」

「ごたいとうちって…なんだ……?てか龍、リョートの治療……。」

「仮にも神獣だろう?怪我ぐらい自分で治せ。」

一号に言いながら、視線を二号に向ける。

呼吸は浅く、主に傷ついているのは胸か。泡混じりの血が出ているので、肺が傷ついているのかもしれない。

……治す気配が無い所を見ると、魔力が足りないのかもしれない。あの傷では、私の魔力を借りる事も出来なさそうだ。

あの騎士、狙ってやったのだろうか?それならなかなか良い仕事をする。


「しかたない。」

 魔術は使いたくない。右手の親指の治った傷を歯で抉りそれなりの出血をさせる。体の熱が傷口に集まっているかのように親指が熱く、ついでに痛みももたらす。

 熱を魔力と仮定すれば血に魔力を宿すのはそう難しい事ではないだろう。懸念は血液型だがまぁ龍の血だどうにかなるだろう。

 弱り方を見ると、あまり時間はなさそうだ。血を吸収してから魔力に変換してては間に合わないかもしれない、直接傷口に塗りこむか。


 一号の上から足を退け、左手で2号の胴を掴み持ち上げる。そのさい、二号が呻いた気がしたが気のせいだと言う事にする。そのまま、一号の視界に入らない場所に移動する。

 右手の親指が十分に血に濡れた事を確認し、その親指を二号の傷口の中に入れる。

 なるほど、北に住む外国人はアザラシの内臓で暖を取ると言う話を聞いた時はデマかと思ったが案外、事実なのかもしれない。そう思う程度に、生きた二号の中は生き物相当に温かかった。


十分に自分の血を二号に擦り付けてから、指を引き抜く。

幸いなことに、声を出す余裕もなかったのか気絶したのか二号の反応は時折痙攣するにとどまった。傷口を見ると自己修復が開始されている。これなら肺も治りつつあるだろう、懸念が一つ消えた。


「……おーい?何が起こってるんだ?」

「治療が終わった。お前は必要ないな?」

「あー、此処に来る途中で沼に落っことされたから平気だな。」

「便利な体だな。」

「おかげさまで。」

二号を一号の腹に投げ、右手の二号の血を見る。

仮にも神獣の血だ、このまま洗い流すにはもったいないだろう。どうするか…。

「何か土産は無いのか?」

食べ物の土産があれば、その入れ物なり瓶に入れれば良いと、軽い気持ちで聞く。


「この状態でそれ聞くか?!……あー、今あんのはこれだけだな、残りは家ごと吹っ飛んだ。」

 そう言って一号は、ポケットから銀色のペンダントを取り出すとこちらへ投げよこした。反射的に右手で受け取ってしまい…、しまったと思った時には遅かった。


 銀はミスリル程ではないが魔力伝導率が良い物体だ。そんな物に魔力を込めた龍の血と氷鳥の血が付いたらどうなるか。

 ペンダントは、脈打つように私の手に付いた血を全て吸い取るとペンダントトップであった青いガラス球を赤へと変貌させる。

 魔具、それも相当高位であろう魔具の完成だ。鑑定してみないと効果は分からないが、何やら禍々しい雰囲気を放っている。もともとそういう素質があったのかもしれない。


「……このペンダント何処で手に入れた?」

「露店。銀製にしては安かったしついでに携帯食料も貰えたからな。多少怪しかった様な気はすんけど龍に渡すもんだし平気だろ?」 

「そんな物を土産によこすな。」

 一号の常識を疑う。


…この物はどうするか、その辺に捨てても戻ってきそうで怖い。

しょうがないので、身につける。が、実用重視な冒険者の服にこれでもかと言うほど似合っていない。ペンダントトップを服の中に入れると露出するのは銀色の鎖のみとなる…これで少しはましだろう。


良いタイミングで、二号が呻きだす。どうやら本当に気絶していたようだ。


さて

「それでは、何があったか話して貰おうか。」











話をまとめると、一号の実家でごろごろしているところに騎士に襲われたそうだ。

反撃するものの技量は相手が完全に上、実家を半壊に追いやった戦闘は一号達の逃走で幕を閉めたそうだ。二号の傷は、逃走に転ずる一瞬の隙を突かれた物らしい。


「あいつ、なんか俺に恨みでもあんのかぁ?一度目と言い二度目と言いさぁ。」

「力さえ、魔力さえ戻っていれば人間ごときに負けるはずが無かったが…っ!」

「実家は平気なのか?」

「戦闘でリョートの羽根が散らばってたし。それ売りゃぁ家の一軒ぐらいたつだろ。それよか騎士だよ、あのストーカー。」

「これからも、付きまとわれる可能性があるからな…はやく、強くなるのだアレン!」

「だからな、吟遊詩人の英雄伝じゃあるまいし。そうそう、早く強くはなんないって。筋トレとかは欠かさずやってるけどさぁ……。」

地味な努力だな。

まぁ、魔物の魂を吸収してどうの~と言う法則は無いのだから仕方ないと言えば仕方ない。


「後は、武器で強くなるという手もある。」

「あるっちゃあるけどなぁ……リョートの羽根全部もいで良いなら、最上級の武具は揃うぞ?」

「却下に決まっておろうっ!!」

「仮にやったって、限界があるからなぁ。どうやったって国宝なんかは金積んだ程度じゃもらえないし。」

「…国宝は強いのか?」

「そりゃ強いだろ、国宝だし。」

 たまに偽物が祭られている事もあるがな。そう思うも口には出さない。騎士が良いライバルになればと思い、けしかけたが思いのほか技術に差があったか。

 それでも逃げられるのなら問題ないか。


「後は地道に依頼かねぇ。沼地だったら怪我とか気にせずに出来るわけだし。」

「…うむ、それも仕方ないか。沼地と言うと、東か?」

「そうだな、討伐系の依頼は東の方が多いし。」

「今度は、土産を忘れるなよ。」

「ペンダントやっただろっ!」

呪われた、な。

あんなものはお土産とは言わない。




そしてお前ら、外はもう日が落ちたが泊って行くつもりなのか?

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