『骨折り狸のプレスマン』
あるお寺の境内に狸が住んでいた。同じ狸なのか、親子孫なのかはともかく、何十年もずっと住んでいた。
ある大みそかの夕暮れ、お寺の近くに住んでいるじいさまが、お寺の縁側に座ってため息をついていたので、狸が心配して、どうしたのか尋ねると、大みそかだというのに餅を買うお金もなく、ばあさまに合わせる顔がない、いっそ阿弥陀様のところに行こうかと思う、と言うので、狸は、じいさま、それはいけない。じいさまが先立つと、ばあさまが困る。あ、悲しむとかそういうことではなく、餅も買えないのに葬式が出せるはずがない、という意味で。よし、ここはこの狸様が一肌脱いで進ぜよう、といって、葉っぱを頭に乗せ、くるりと宙返りしたかと思うと、そこには一本のプレスマンが落ちていた。じいさまがプレスマンを拾うと、プレスマンが、おいじいさま、俺だよ、狸様だよ。俺を庄屋様のところへ連れていけ。庄屋様が何を言っても、わかったわかったと言っていれば、あとは勝手に話が進むから、と言うので、狸が化けたプレスマンを持って庄屋様のところに行くと、これはよいプレスマンだと言って、二両くれた。じいさまは、それで餅を買って、ばあさまのところへ持って帰った。
翌朝、正月を無事に迎えられた礼を言おうと思って、寺に行くと、狸が腰をさすりさすりしているので、どうしたのか尋ねると、実は、最初にプレスマンになった地面に落ちたときに、中の芯が折れてしまって、もとの姿に戻ったら、背骨がばきばきに折れていて、しばらく動けないと思うが、心配しないでくれ、などと強がりを言うので、その日は餅を置いて帰り、次の日から、肉や魚を持って日参したところ、二カ月ほどで狸は回復したが、じいさまの二両もなくなったという。
教訓:狸に限らず、無償で助力を申し出る者は、何かあやしい。




