閑話・【アンリアルウィッチ】のための髪飾り――⑦
「あのねェ、『想いに誠実』と『なんでもいい』は、まったく違うだろうに」
その後、たまたま工房を訪れたお師匠様の仰ったことに、クラリスさんは机に突っ伏して沈み込んでしまった。
「ヤチコドムドさんもさぞ驚いただろうねェ。ヨモヤマとマチコも、そこらへんは分かってただろうに」
「リョウガです、お師匠様……」
「モニカだよぅ、お師匠様……。あとお相手の人はイチコドールさんだよ」
「…………こんなヤツに説教されてるなんて」
クラリスさんは塞ぎこんでしまい、ボクたちはどうにかしようと知恵を振り絞っていたけれど――そこに、来客があった。
工房を訪れたのはイチコドールさんだった。
「あの、クラリスさん……。少し、お話、よろしいでしょうか?」
「え、ええ……」
連れ立って外へ出て、二人は何かを話していた。
そして、僅か五分後。
「――――っヘ、ヘヘ……。マア、今回のことは――こういう結果だった、ということ、ネ――……。残念ながら――でも後悔はないわ、フフ、それだけのこと――……」
イチコさんはどんな話をしたのか、クラリスさんの沈鬱は、雲一つなく晴れていた。
哀愁(?)を漂わせて髪をなびかせた【アンリアルウィッチっぽいポーズ】をとるクラリスさんの様子に、お師匠様は「ヨカッタね」とお声をかけた。
「さすがイチコさん、慣れてる」
「うん……」
そして、そのような顛末があった、その日を境に。
クラリスさんは時々物憂げな息をついては、「あのとき、想いを寄せることは幸せだった。私は想いを寄せることで人間的な成長を遂げたのだろう――ああ、人間、想いを寄せること、それ自体が素敵だ……」と、要約するとそういった内容を詩的にも武勇伝的に語るようになって、その度に、モニカは何かに耐える顔になっていた。その顔やめて……。
まあ、でも――……。
その人が幸せならいいか。
そのようなことを二人して思った、ある日の、ボクたちの物語だった。
『【アンリアルウィッチ】のための髪飾り』――了。




