閑話・【アンリアルウィッチ】のための髪飾り――⑥
しかしこの場合、何がどうなるのだろうか?
そんな漠然とした疑を抱えながらも、竜琥珀色の髪飾りで飾ったクラリスさんの後について、ボクたちは【イチコドール魔法具店】へと足を伸ばした。
「いらっしゃいませ! ――――あら」
イチコさんはすぐに髪飾りに気付き、瞳を見開いた。
「いらっしゃい。今日は、とても素敵な髪飾りをしておいでなのですね。華やいで似合っておりますわ」
「――ええ、これは、とある鍛冶職人の兄妹が贈ってくれた品なの」
――喋った。
クラリスさんが、始めて、イチコさん相手に、流暢に――……喋った。
いや、心の声を大にして言うことではないかもしれないが、これは良い兆候のはず。
「まあ、そうでしたか……! 本当にお似合いですよ」
「ありがとう。私も、とても気に入ったわ。――それで、イチコドールさん。少し、お話、できないかしら……?」
「ええ、喜んで。何を話しましょう?(笑顔)」
「ありがとう」
そして、クラリスさんはイチコさんへ一歩近づいて――――彼女の手を、両の手で包むように取った。
「……?」
「……?」
「……?」
「私は……あなたに想いを寄せています。どうか、聞いて。私の名前はクラリス、クロエクラリス。イチコドールさん、あなたの面影が忘れられなかった。私と真剣なお付き合いを前提として、どうか、私とお付き合いしてくださいませんか……?」
ええええええええええええええええええええええええええええええええええ何が起こった!?
か、会話の脈絡――――時空が飛んだ???
いったい……? …………??
あまりに現実の何も分からな過ぎて思わずモニカをほうを窺うと、そこには「何が起こった――?」と驚愕に打ち震えて佇む姿があった。
……これは現実か?
魔法攻撃を受けているんじゃないか……?
クラリスさんは、少し震えながらイチコさんの手を取っている。
そして――――イチコドールさんは――……。
ボッと顔を赤らめ、湯だった表情で目を見開いていた。
いや、もしかしたら……行けることもあるのか?
可能性に現実性を取り戻す。想いは伝わる――?
そして、イチコドールさんは――赤く赤く染まった顔で、想いに応えた。
「――ごめんなさい、お気持ちは、とても……とても嬉しかったです。――けれど、少し、突然すぎて……。真摯なお気持ちに応えるだけの準備が私には用意なくて、このお話しは、申し訳ないですが無かったことに……。どうか、これからも以前と変わらずに接していただけると嬉しいです」
そうですよね。
クラリスさんの姿が灰色に染まり、ガラガラと崩れていく様子が見えた。
嗚呼、竜の威の意思よ、その赤色は目を焼くほどに鮮やかで、強すぎた……。
いや強すぎたのはクラリスさんの勢いかもしれない。電光石火というにも生ぬるい、嵐の吹き荒れたような一幕だった……。




