閑話・【アンリアルウィッチ】のための髪飾り――④
意外かもしれないが、武器職人が装飾品類の装身具を作ることは、ままあることだ。
鍛冶職人の打つ鋼は質が良い、装飾品類も鍛冶職人の作ったものは質が高い。
そんな認識が、大昔から世間で認知されていた。
だから装身具の制作依頼も結構くる。
ボクたちもこれが初めてではなく、そういう意味では慣れていたのだけれど――。
今度のことには、二人して、熱が入り過ぎた。
ハッキリ言って滅茶苦茶だった、戦闘用途をまったく見ない装飾品に【竜の牙】を精錬素材として使用することに、ボクたちは一抹も躊躇いなかった。
「兄貴これ作ろう」というモニカの提案に指摘も出さずボクは頷いて、もちろんいつも集中は張り詰めているが、それでも自分でも驚きの集中力で鋼を叩き上げていた。どうにかしたいという思いは炉の炎より大きいくらいだったから、ボクたち兄妹はとにかく創り上げようという思いのみにあったのだ。
使用する鋼は高炭素鋼。
防錆処理が必須となり、その際には色合いの問題が生じるため装飾品として仕上げるうえでの課題となるが、【竜の牙】を精錬素材に用いれば、着色目的を兼ね備えた最強の防錆効果を付与できる。
高炭素鋼を適切に精錬すれば、艶が鋭く色みに深さのある、大人が飾るに相応しい装身具へと仕上がる。
あの人が、飾るに、相応しい装身具。
どれだけ助けられたかも分からない、あの人への思いを熱に変えて、鋼を叩き上げ続けた――。
「後悔はないけど、【竜の牙】を素材にするのはやり過ぎたね」
「後悔はないけれどね」
箱に包み収めながらボクたちは、この装身具が、彼女の意思に大いなる力を与えますようにと一心に祈った。




