閑話・【アンリアルウィッチ】のための髪飾り――②
様子がおかしくなり始めたのは、彼女がよく訪れてくれるようになってから、まだそんなに日数も経っていないその頃からだった。
その日は、ボクは武器創作の勉強、そしてモニカとクラリスさんは魔法の究明を、静かに勉学していたところであった。
フゥー、と、クラリスさんが悩ましげな息をついたところから始まった。
「どうしたの、クロちゃん」
力になれることがあるならその機は見逃さない、ボクにもよく分かる心情を覗かせてモニカが問うと、クラリスさんは長く綺麗な髪を梳きながら話に応じてきた。
「いや、まぁ、ちょっとね」
「人に話して楽になることなら、教えてよー」
「いえ、本当に大したことじゃないんだけどね。フゥー……」
そしてクラリスさんは言った。
「【イチコドール魔法具店】のイチコドールさん……まあたぶん? 私に想いを寄せてるなって。そのこと」
「…………」
「…………」
「まあ、分かると思うけど……」
分からない。
クラリスさんは続けた。
「どうしよっかなって」
どうしよっかな?
さすがのモニカも、一瞬、言葉を噤んでしまった。
「……へー。なるほど」
「まあ、そうなのよ」
「そっかー。確かにー。…………」
ヤバい。
なんだかヤバい。
このヤバい方向性は幾度も見たことがある。
村の男性がイチコさんに恋をする――冷たい現実的に言えば、一方的に想いを寄せ始める、そのものテンプレートな流れだ……!
魔性の魅力に乱されている……!
「え、ていうかクロちゃんって、同性の趣味があったんだ?」
「いえ、そういうわけではないけれど、そこに偏見もないつもりなの。誰かに想いを寄せられる、それがどれほどに尊いことか分かっているつもり……だからまあ、嫌じゃないというか? まあ応える応えないの責任っていうとまた別の問題になってくるかもだけど私としては嫌じゃないしこちらから声をかけるのもアリかなってそういうふうに考えてところもあるそれに私であればいつでも会いにこれるというかまあとにかく全部含めてどうしよっかなって」
モニカは何かに耐える顔をしていた。
その顔やめて……。
ハッキリ申し上げれば……拗らせている。
どうしよっかなはマズい。
「まあ全然急ぐ話じゃないからそれだけというか」
「――――そっかっ!」
投げないで!
モニカが投げたら誰も拾えないから!!
けれど結局、その話は投げっぱなしになってしまった。この流れを止められるお人となると、お師匠様くらいしかボクには思い浮かばない、けれどあのお人は、クラリスさんとそういった話をするのだろうか……? 分からない……。
どうなるだろう。
ボクたちはちょっとだけ心配になった。




