閑話・【アンリアルウィッチ】のための髪飾り――①
最近は【リョウガ鍛錬所】の工房に、たびたび顔を見せてくれる人が多くなった。
お師匠様、ミヤコさんとイヴさん、そしてクラリスさんも来てくれる。
自身もお忙しいだろうに、クラリスさんは特に時間を見つけては来てくれた。
【天使を象った土類生命】との戦いで更なる研鑽の必要性を痛感したボクたちを察してのことだろう、顔を見せては、自身の魔法探求もここで進めながらに、修行をつけてくれた。
クラリスさんと過ごせる時間が増えたことで、モニカもすっかり元気になった。
「幻影世界での【属性転換】……どうしてもあの時の感覚が思い出せないんだ……。これをプラスにできなきゃ、ただのやらかしの事実で終わっちゃうよ。……私、才能無いのかなぁ…………」
「ナマ言ってんじゃないの。感覚で思い出せないなら理論で詰めて実現へ近づく、そういった地道な研鑽が本来の魔法というものよ。才能無いのかなぁ、じゃないわ、その弱音が一番情けないわよ。理論を詰めた結論を引っ提げて【転位】したら、知らない雪山の頂上に独り突っ立っていて、悲しくて情けなくて思わず涙を流した経緯を辿って辿って、私の【不測の転位】は【虚空転位】と呼ばれるようになったのよ。しっかりしなさい」
「――頑張る。クロちゃん、ありがと」
心からの笑顔を見せることが多くなったら、もう大丈夫。
クラリスさんには本当にお世話になる……。なにか、ボクたちにできることがあればいいのだけれど。
と思っていたら、あった。
ボクたちが、もしかしたらお力添えになれるかもしれないこと。
「あら、いらしていたのね! こんにちは」
「…………こん、に(超小声)ちは…………っ」
最近では『ノアナの村』の村人がたも、クラリスさんを顔見知りとして認知させるようになってきて、クラリスさんのほうも不意の挨拶にも声を返せるまでになっていた。
さて、そうなると。
人当たり良くて、そして商魂も逞しいあの人が、姿を見かけたら声をかけないはずがない。
「あら、こんにちは。いらしてたんですね、クラリスさん」
「――――……スっ――」
イチコドールさんはいつも、か細い吐息みたいな応答がどうしてか会話の流れとして気にかからない、さすがのコミュニケーション術でクラリスさんとお話ししていた。
「――――……スっ――」
「只者ではないと私なりに感じていましたが、リョウガくんとモニカちゃんから聞き及びました、高名なウィッチ様であったとか。どうりで風格が備わっているわけです、一人のウィッチとして、お会いできて光栄です」
「――――……スっ――」
「フフ、寡黙でカッコ良いですわ、――失礼、コホン。もしよろしければ、ぜひ【イチコドール魔法具店】にお立ち寄りください。扱いは日常魔法具のみですが、品揃えはお約束いたします。では」
――イチコさんとの会話を終えて彼女の背を見送ると、クラリスさんは、引き攣り気味の? 感情の上気した、形容し難い笑みの顔をボクたちに見せた。
「……――へへっ、参っちゃうね……」
な、なにがだろう。
……ごめんなさい、ちょっと分からなかったです。




