第二話∶教室の足跡と消えたチョ―ク
放課後、3人は改めて陽太の机周辺を調べ始めた。楓は床に目を凝らし、何か手がかりはないか探している。
「何か見つかった?」陽太が不安そうに尋ねた。
「うーん…特に目立ったものはないわね。足跡も、いつもの生徒たちのものと区別がつかないし」
その時、紗英が教卓の方を指さして言った。「あれ? チョークがない!」
3人が教卓に目をやると、いつも置いてあるはずのチョークの箱が空っぽになっていた。
「チョーク…? 教科書と一緒に盗まれたってこと?」陽太はますます混乱していた。
「教科書とチョーク…一体何の関係があるんだろう?」楓は顎に手を当てて考え込んだ。
「もしかして、犯人は何かを黒板に書こうとしたとか?」紗英が突拍子もないことを言い出した。
その言葉に、楓の目が鋭く光った。「黒板…!」
3人は急いで黒板に近づいた。しかし、そこには何も書かれていなかった。綺麗に消されている。
「誰かが何か書いて、消したんだ…!」楓は確信した。「でも、なぜ? そして、何を?」
「消したってことは、見られたくなかったメッセージがあったってことよね?」紗英は推理小説でも読んでいるかのように目を輝かせた。
「でも、どうして教科書まで…?」陽太はまだ納得がいかない様子だ。
楓は再びメモを取り出し、読み返した。『解けない方程式は、秘密の扉を開く鍵。真実はいつも、日常の裏側に隠されている。』
「このメッセージ…数学の教科書がなくなったことと、何か関係があるはずだわ」
「方程式…数学か」陽太は自分の得意科目ではないため、頭を抱えた。「数学の何が鍵になるんだ?」
「それはまだ分からないわ。でも、犯人は私たちに何かを伝えようとしているのかもしれない」楓は冷静に分析した。
その夜、楓は自宅で陽太の数学の教科書の内容を調べ始めた。基本的な方程式から応用問題まで、丁寧に目を通していく。一方、陽太は紗英と共に、クラスの生徒たちに昨日の放課後の様子を聞き込み調査をしていた。
「ねえ、何か変わったことなかった? 誰かが教室に残っていたとか、何か音が聞こえたとか…」陽太はクラスメイトの一人に尋ねたが、誰も有力な情報は持っていなかった。
調査が進展しない中、楓は教科書の中に、先生が授業中に強調していた重要なポイントがいくつか書き込まれていることに気づいた。特に、ある特定の公式には、赤いペンで大きく丸がつけられていた。
その公式を見た瞬間、楓の頭の中に、メモの言葉が蘇った。『解けない方程式は、秘密の扉を開く鍵』
「もしかして…この公式が『解けない方程式』を意味しているのか…?」
(第二話完)