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百パーセントの仕事。

作者: カケル

建物の屋上。

銃を構える。

スコープをのぞき込み、標的を確認。

銀行内部には人質が十数名。

犯人は五名。

陰に隠れている可能性も考慮する。

スコープのスイッチを切り替えて熱源感知を作動。

奥にいる三名。

おそらく職員と、犯人が二名だろう。

「七発か」

VSSから手を離し、PSSを確認。

弾は薬室に入った弾と合わせて計七発。丁度だ。

この膠着状態。

いつ崩れて人質に被害が出てもおかしくない。

「動くか」

特殊部隊アサシン。

中でも俺は個人の判断を委ねられている。

無線で侵入することを報告し、VSS等の装備をそのままに。

ナイフとPSSだけを持ち合わせて。

待機させていたヘリに乗る。

上空千メートル以上へと即座に移動。

パラシュートを身に付け躊躇なく落下。

身体に受ける風と重力。

臨界点に近づき、俺はパラシュートを開く。

ブレークコードを操り、銀行の屋上へと降り立った。

パラシュートを捨て去り、スーツを脱いで。

階段を音もなく駆け下りていく。

階層は二十階。

巨大な金庫は地下三階。

一階に到着し、陰から彼らを観察する。

荒々しい様子で喚く犯人たち。

リーダー格はいない。おそらく奥だろう。

「時間稼ぎのうまい奴だ」

この国ではそうした訓練を受けるのが定石。

より時間を稼げればそれだけ警察は対策しやすくなる。

そして俺も。

「さて……」

通路の奥に向かい、わざとらしく物を落とす。

ペンだ。

らしいものだろう?

警戒しながら二人の犯人がやってきた。

一人なら楽だったんだが、その辺は考えられているな。

落ちているペンを拾い、周囲に銃を構える犯人。

だが残念。

用具入れの間から銃身を出して、連続して二発を発砲。

ヘッドショット。

二人が『二体』になった。

「残り五人」

用具入れから出て布を被せ、敵の無線を取る。

通路を通りエントランスへ。

三人は何も知らないでいる。二人はまだいない。

「さっさと仕留めよう」

三発。

頭部へ弾丸が突き刺さり躯と化す。

俺が出ると、皆が声を上げようとしたが俺はそれを止める。

静かに裏口から移動するよう指示し、声を出さないよう言いつけた。

全員が冷静に移動する中、裏手で小さな悲鳴が聞こえる。

先に始末した死体を見つけたのだろう。

幸い、残りの二人はまだ戻ってきていない。

無線が聞こえる。

金を確保した旨と、人質を射殺し、その混乱に紛れて逃げる算段。

彼等の話し声を聞いて、おおよその声色は憶えている。

「『了解だ』」

応答が切れる。

バレてはいないだろうが、用心しないといけない。

「さて」

地下から地上への経路はあのエレベーターのみ。

人質もやって来ることを考慮するならば、エレベーターを出た後だ。

エレベーターの天井付近の隅に壁を伝って張り付く。

エレベーターから犯人が二人出て来たタイミングを狙う。

……――チン。

来た。

扉が開き、人質が先に出てくる。

次いで犯人が二人。

飛び下りながらナイフを抜き、一人を突き殺す。

もう一人をターンして首元を狙った――。

「ッ!?」

その刃先を首筋ギリギリで止める。

違う。

こいつじゃない。

涙目の男。

熱感知を見た時の背丈が違う。雰囲気もまるで犯人のそれではない。

男をエレベーターへと突き倒して、ステップを踏む。

直後にライフルの連続した発砲音。

床を蹴り、壁を走り、回転して、銃口の射線に入らないよう避けた。

カチンッと弾切れ。即座に距離を詰めてナイフを握る。

敵もナイフを抜き、互いのナイフがかち合った。

「よく見抜いたなあ、てめえ」

「あんたも」

ナイフで斬りつけ、体術を駆使して、相手の隙を狙い続ける。

ナイフが何度もかち合い、刃先が削れる。

「調子に乗ってんじゃねえッ!」

相手が拳銃を抜く。

俺もすかさず抜いて、構えた。

どちらが先に引き金を引くか。

タンタンタンッ。

銃声が三発。

腕に被弾した。

「……あ……」

男は膝から崩れ落ち、死んだ。

二発の銃弾。頭と心臓。

ホールドオープン。

丁度だ。

全弾命中。

百発百中。

今も継続して百パーセント。

「任務完了、っと」

無線を外のそれに合わせて報告。

駆けこんでくる警官たち。

今頃は裏手に回っていた他の彼らによって人質たちは保護されているだろう。

今日も良い仕事をした。

エレベーターの男を保護する警官。

俺は指揮官により詳しい現状報告をするべく、その場を後にした。


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【集】我が家の隣には神様が居る

こちらから短編集に飛ぶことができます。

お好みのお話があれば幸いです。


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