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42 暗示

「ということなので、試しに鐘を鳴らして見てほしいんです」


桃色と紅色の色が纏う泡の中の、花神と炎神は「そういことは早く言え」とでも言うかのように、呆れた表情を浮かべていた。


『まさか、ディーヌのところの皇族が作ったなんて信じられないよ。それも他国にも作るなんて』

『ディーヌの国だけに、結界魔法を施すのは戦争に繋がるに決まっている』

「私たち五神は比較的に仲がいい方ですからね。ですが、神同士の仲は関係ないのかもしれませんね」

『はぁ、もし人間同士で戦争なんてしたら僕たちは本当にどうしようもなくなるよ』


四神たちが、それぞれ神の座に就いてからは戦争など一度も起こったことがないのだ。


アクディーヌ自身は、勇者と魔王の戦いや、戦争などを見たことがあるが、結局は天界で見ているだけだった。


もし本当に戦争が起こったら、これは法則に則って人間の限界点まで見て見ぬふりをするしかないのだろうか。


それが本当に正しいのか、法則を守るたびに疑問に思う。


「そうならないように、私たちが上手くやらなければならないですね……」

『戦争などやっても無駄なことだ』

『本当にそう、どうして皆は戦いたがるのだか。話し合いだけで解決できるかもしれないのに』


イグニーゼルとフェリクスは、アクディーヌの言葉に頷きながら鐘のもとに向かう。


アクディーヌが誕生した三千年前、二柱の神が戦争を引き起こしたが、結局は残滓を世界にばら撒いた元凶として天界では呆れられている。


それに、その戦争を終わらせたのがアクディーヌ自身だということに未だに疑っている。


本当にありえない話だ。


ちなみに、神の法則では神が人間だけでは解決できないこと以外で下界の問題に干渉してはならないが、神々の問題では、神が下界で戦争を起こした場合、神だけで解決することになっている。


(まぁ、当然のことです)


そんなことを思いながら、二つの泡を見つめていると、泡越しから鐘の音が響いた。


視線を上げると、イグニーゼルとフェリクスが神官の手によって鐘を鳴らしていた。


『本当に結界が張れたんだけど……。というかさ、僕たちが結界を張ればよくない?』

『法則を破る気か』

「もういっそのこと破りたい気分ですけどね。それに、いくら神官の手によって鐘を鳴らさせて張ったとしても、私たちが張れと言ったようなものですし、破ったようなものですけどね」


そんなことを言いながら、アクディーヌたちは深いため息をつく。

すると、突如空から爆音が鳴り、雲の中から魔物の大群が現れた。


『はぁ? 今度はなんなの?』

『面倒くさいな』

「これは予想はしてましたけど、確かに面倒くさいことになりましたね」


魔物の大群は結界を破るべくして、衝撃を何度も与えていた。

しかし、結界はビクともしなかった。


(あら、強い結界ですね。いったい、どのようにして作ったのか直接聞きたくなりますが、あまり探らないことにしましょう)


そんなことを思っていた束の間に、雲が青く輝き魔物の大群を、丸呑みするかのように一掃させた。


「……お兄様ですね。大丈夫でしょうか……」

『クラルディウス様なら、跡形もなく事を収めて下さるだろうけど、僕的にはマグトルム様が――』

『それ以上言うな』

「そうですよ、それ以上言ったら……ね?」

『……はい』


フェリクスがそう思うのも分かる。

今回の件は、姿を現さなかったマグトルムによるものではないかと。

しかし、四神や神官たちは知らないだろうが、兄が言う通り、これは『銀の魔神』によるものかもしれない。

もちろん、確信はないが『銀の魔神』は魔物を生み出し、世界を崩壊させようとしていることは、兄から聞いているため分かる。


そのため、今のように魔物の大群が現れたとなると、やはり、あの魔神が生み出したに違いないだろう。


(でも、お兄様はたとえマグトルム様であろうとも、古代から存在している魔神は倒すことができない、とおっしゃられてましたよね……。もう、わけが分かりません。)


すると、再び雲から魔物の大群が現れた。


さらに、アクディーヌがいる鐘楼の下から人々の声が響いた。

下を覗くと、目を見張るほどの光景が広がっていた。


「これは……」

『ディーヌどうかした?』

「見てください。魔物の大群が再び現れたことよりも、この光景があまりにも予想外すぎて私は言葉が出ません」


アクディーヌは二つの泡を浮かせながら、鐘楼の外へと浮かばせた。

そして、イグニーゼルとフェリクスが見えやすいように下に傾ける。


『え! なにこれ』

『とうとう頭がおかしくなったのか?』


そこには、平民や兵士、冒険者たちが武器を持ちながら魔物の大群に立ち向かっていた。


「……絶対に操られていると思いますが、面白いことになったので少しだけ様子を見てきますね!」

『とか言って、参加しないでよね!? 今はあくまで神として下界にいるんだから!』

『もういないぞ』


アクディーヌは、二つの泡を置いて鐘楼から去った。

泡はため息をつき、諦めたように消えていった。




◆◆◆




結界が張られたアイテールティア帝国の上空に浮かびながら、武器を持ち魔物を倒しに行く人々を眺めるアクディーヌ。


魔物たちはそんな彼らに威嚇しながら襲いかかるが、まるで人々が操られているかのように魔物の攻撃を避けながら反撃していた。


(ふむ……。これはお兄様特有の『暗示』に似ていますね。いや、そもそも暗示でしょう。ですが、お兄様やお兄様に教わった私が使っていないというのに、どうして使われているのでしょう。仮に、お兄様だとしても人々をこのようにして暗示をかけるわけがありませんし)


アクディーヌは上空から地上を見下ろしながら、考え込む。


兄が持つ『暗示』は、アクディーヌが大精霊時代に教わったもので、下界へ抜け出すために神官たちに暗示をかけていたが、それが兄にバレて禁止されたのだ。


しかしそれ以前にも、暗示は行動や口調を操るものであり、危険でもあるのだ。


(見た感じからして、これは非常に危険ですし解除しませんと。ですが、その前に)


アクディーヌは泡を浮かばせ、口を開く。


「お兄様、今よろしいでしょうか?」

『うん、構わないよ。あぁそうそう、一度魔物の大群を一掃させたけど、再び出てきただろう? あれは心配いらないから気にしないでね』

「もしかして、何か手立てが見つかったのですか?」

『手立てというか、マグが主犯と戦っているんだよ。まぁ、『銀の魔神』だから倒すことはできないけれど、マグとその神官四名が封印するために頑張ってくれてるから、ディーヌたちは気にせずいてくれていいよ』

「やはり、あの魔神でしたか……。倒せないとなると、封印をするしかないのですね」

『そうだね。それで、ディーヌ。何か話があるんじゃないのかい?』


泡越しで言う兄の言葉に、アクディーヌは思い出したかのようにはっとする。


「あ、そうでした。お兄様、私たちの国の住民たちや冒険者たちが何者かによって暗示をかけられたみたいです」

『暗示? 少し見せてくれるかい?』

「はい、これです」


アクディーヌは泡を、魔物と戦う彼らの方へと向ける。


『……分かった。ディーヌ、解除はできるかい? 今、あの魔物と戦ったところでどうせまた現れるだろうし、暗示をかけた者については僕に任せて。それに、このくらいの魔物ならあの組織なら容易いことさ。それと冒険者もね』

「冒険者ならともかく組織とは……?」

『さぁ、解除しておいで。そして水神として、人々の力を見ておいで。今回、僕たち神の出番は必ず訪れないだろうから。あの者を「叱る」ことと暗示を解除すること以外はね』


そう言って、兄は手を振って消えていった。

このとき、アクディーヌは兄が言っていたこと言葉に引っかかっていた。

『組織』のことについて触れていたときに、誤魔化すかのように遮られたのだ。それに、『組織』のことだが今のところヒューバートが言っていた『皇帝公認の組織』しか知らない。通称、『暗殺組織』とでも言えばいいだろうか。


「まぁ、あの組織なら魔物など敵じゃなさそうな雰囲気を出してますし、もしヒューバートや目つきの悪い青年が出てきたら確定ということで、それ以上追求するのはやめておきましょう」


そう言ってアクディーヌは、左の手のひらを地上に向けて口を開く。


「泡ちゃん、出番ですよ」


左の手のひらから、無数の泡を放ち、暗示によって操られている人々は泡が弾けるのと同時に、結界が張られたアイテールティア帝国へと戻っていった。

それを確認したあと、アクディーヌは一つの影を目にする。

ちらりと、魔物を倒しにいく多数の冒険者と影となり様子を伺う二つの影を目にしたあと、視線を変えて屋敷の方へと歩き出す一つの影を追うことにした。

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