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25 兄と妹

投稿が遅れました。

途中から意味が分からなくなると思いますが、今はあまり気にしないでください。


これから、投稿時間がいつになるか分からないのでのんびり投稿をしようと思います。

よろしくお願いいたします。

アクディーヌは、フィンレーから借りた部屋で、天界から持ち出した書類を少しずつ確認していた。

ふと気づくと、窓の外には朝日が差し込んでいた。


すると、通信機として左耳にだけ身につけている二枚貝のイヤリングが青く光出した。


左耳にだけ付けている二枚貝のイヤリングは、少し不自然に見えるため、普段は髪で隠している。

だが、朝の光の中ではその微かな輝きが見えづらく、使い勝手の悪さが気になっていた。


だが、これがないとマグトルムや兄、そして四神たちとの連絡が届かないのでないと困るのが難点だ。

逆に自ら連絡を取る際は、泡で連絡を取れるが通信機はどうも扱いずらい。

こうなったら改造をするしかない。

それにアクディーヌ以外では、いろいろな方法で連絡を取っているらしいがそれ以外はよく分かっていない。


アクディーヌはすぐさま二枚貝のイヤリングに触れ、泡へと変化させた。

空中に泡を浮かばせると、泡には兄の姿が映し出されていた。

兄は、いつも通りの穏やかな表情だが少しだけ疲れている部分が見られた。


「お兄様!」

『ディーヌ、さっきぶりかな? 僕たちが遊歴に行ってから随分と立派になったね』

「私は、お兄様たちのせいで散々な目にあっているのですが?」

『ははは、ムーソピアから聞いているよ。それは本当にごめんよ。でも、ディーヌは文句を言わずによく頑張っているね。偉い』

「………。お兄様、どうしてあの時魔物と戦っていたのですか? それに、マグトルム様とは一緒ではないのですか?」


マグトルムと遊歴をしているのなら、兄が一人なのはおかしい。

なら、本当にマグトルムでしか行けない場所に行っているというのだろうか。


アクディーヌの言葉に兄は、少し悩むようにしながらも口を開いた。


『マグと僕は、少し前から魔神を探しているんだ。その魔神がどうにも厄介でね。僕たちが様々な空間に行っては足止めのように魔物を生み出すんだ。魔物が邪魔だから一掃をしてはいるのだけど、マグが魔神のいる空間を見つけ出したはいいものの、はぐれてしまってね』

「はぐれた? それに魔神とは誰なのですか?」

『僕たちが探している魔神は「銀の魔神」という肩書きで呼ばれている魔神だよ。この魔神は、古代から存在し続けていてね、名前が分からないんだ。けれど、脅威なのは変わりない。マグとはぐれてから探してはいるのだけど、一向に見つからなくて困っていたところなんだ』

「銀の……」


天界にいる神の他に、魔神と呼ばれる魔界の神が存在することは知っていた。

だが、魔神はマグトルムによって滅んだ神だった。

けれど、兄たちが魔神を探しているとなると、魔神が復活したと言っても過言ではない。

しかも、古代となればマグトルムは放っておくわけがないだろう。


『でも、あまり心配しなくていい。こうして連絡が取れたことも、空間の淀みが正常になった証だからね。僕はマグを信じて、この空間から出て待つことにするよ。ディーヌ、少しだけ待っていてくれるかい?』

「……? 分かりました」


アクディーヌは首を傾げながら、連絡を切る兄を待つことにした。


そして、しばらく待つとイヤリングが輝き泡に変化させて連絡を取ると、兄が『待たせたね』と言って映し出された。


「お兄様、何をされたのですか?」

『空間から出てきただけだよ。これでゆっくりディーヌと話せるからね』

「そんなお気遣いなく……。それに、お兄様。なんだかとてもやつれていらっしゃいますよ。ちゃんと休んでいますか?」


兄の目の下には薄いクマができており、その微笑みもどこか無理をしているように見えた。


『そう見えるかな? 確かに寝ずに魔物と戦っていたけれど、ディーヌの顔を見たら疲れなんて吹き飛んだよ。ディーヌこそ、寝ていないと聞いたけど、それは見過ごせないな』

「私は休むのが嫌いなんです。それに、水神になってから大量の仕事が降り掛かってくるものだから、実質、お兄様とマグトルム様のせいでもあるんですからね。そもそも、私にはまだ早いですよ。水神なんて」

『ディーヌ。僕が水神になった時は、ディーヌのようにこれほどスムーズに仕事をこなせなかったよ。これがどういうことか分かるかい?』

「え?」


驚いて声を上げると、兄は優しい表顔でゆっくりと口を開いた。


『ディーヌがこの世界で最も、水神にふさわしいということだよ』

「私が、ふさわしい?」

『そう。生まれた時のディーヌは本当に可愛いくて、僕に妹ができたんだと思ったら嬉しくて堪らなかったんだよ。成長するにつれて、ディーヌは嬉しそうに僕の下界の話を聞いてくれていて、「あ、これは僕と同じ人間好きになるかな」って思ったくらい』

「……お兄様、何が言いたいのですか?」


私が訝しげに首を傾げると、兄はクスッと笑った。


『ディーヌは、誰よりも優しい神だということだよ』


その言葉に、息が詰まるような感覚がした。

大精霊だった頃から、自分が良いことをしてきたとは思えない。

偽善的な行動ばかりで、法則だと言い訳をつけては何も解決せず、『優しい』なんて言われる資格はない。


「優しくなんてありません。私は上辺を取り(つくろ)っているだけです。皆は騙されているのです。こんな私が水神だなんて知ったら、きっと失望するに違いありません」

『それがどうしたんだい? 誰だって本当の自分をすべてさらけ出しているわけじゃない。過去の傷を隠そうと、偽りの自分を作り上げて演じている者だっている』

「………私は……」

『ディーヌ、今の僕は何に見える?』

「何って……お兄様はお兄様です」


アクディーヌの言葉に、兄は満足そうに頷いた。

兄はいったい、何を伝えようとしているのかが全く理解ができない。


『じゃあ、ディーヌは? 今のディーヌは上辺を取り繕っているのかい?』

「そんなわけありません。お兄様に取り繕う理由がどこにあるというのですか」

『それだよ、ディーヌ』

「はい?」

『心を許せる存在がいれば、本当の自分を隠す必要はない。今の僕とディーヌがそうだろう? 僕たちは家族だ。心の中でしか思わなかった感情をぶつけ合える。ディーヌは心の中でいろいろな鬱憤(うっぷん)を抱えていると思うけれど、それでも下界や天界のために何かをしようとするその心が素晴らしいんだよ』


兄の言葉は、まるで心の中を見透かされているかのようだった。

確かに心の中では、兄やマグトルムの悪口を言っている。

後ろ向きな考えをムーソピアに漏らしたこともある。

でも、それでも優しいと言えるのか。


「ですが、お兄様。私はムーちゃんにお兄様とマグトルム様の悪口を……いえ、悪口を言っていますけど、それでも優しいと言えるのですか?」


アクディーヌの問いに、兄は一瞬目を丸くしたが、ぷっと吹き出して笑い出した。


「お兄様! 私、真剣なんですよ!」

『あはは! ディーヌは本当にこういう時だけお馬鹿になるんだから』

「お、お馬鹿……?」


生まれてから一度も言われたことのない『馬鹿』という言葉。

それを最初に言ったのが兄だなんて、なんとも言えない気持ちだった。


そんなことを思っていると、笑いを止めて兄は泡越しながら真剣な眼差しと少しだけ柔らかな表情をしながら言った。


『僕たちのことは気にしなくていいんだよ。悪口を言っても』

「え?」

『ディーヌ。さっきも言ったように、僕とマグは家族だろう? 家族のことは、いくら悪口を言ったっていいんだ。ここにはマグはいないけれど、きっと彼もそう思っている。いや、間違いなくそうだよ』


その時、アクディーヌの頬を一筋の涙が伝った。

今まで抱えていた感情が、涙と共に溢れ出していく。


やがて、ぽとんと下から音がして、足元を見るといくつもの真珠が転がっていた。


(え?)


涙が真珠になるなんて、下界の創作物でしか見たことがなかった。

まさか自分がそれを体験するとは。


兄はその様子を見ても驚くことなく、彼女が泣き止むのを待ってから、静かに言った。


『本当に偉いよ、ディーヌ』

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