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24 冒険者ギルドから逃亡

いつも読んでくださっている方ありがとうございます。

三日後になりましたので、投稿させていただきます。


ばつが悪そうにするアクディーヌに、ユウェシルは気が付いたのか早足で歩いてきた。


しかし、そんなユウェシルの存在などまるで見えていないかのように、ヒューバートを含め、ギルと受付嬢のブルーナは呆然としていた。


「スイ様。いったいこちらで何をなされているのですか? しかも、冒険者ギルドなんかで……」

「あら、ユウェシル! いいところに来ましたね! さぁ、このクリスタルに手をかざしてみてください。大丈夫、ギルたちは、石のように固まったままでいますので」

「何故ギルドマスターが……。それに、これは能力検査のための―――」


ユウェシルが言い終える前に、アクディーヌは無理やり彼の手を掴み、クリスタルの上にかざさせた。


すると、クリスタルは水色に輝き、『水』という文字が浮かび上がった。


「え? ユウェシルも水魔法が使えるのですか? へぇ、そうですか。なるほどなるほど」


アクディーヌはそう言いながら、ほくそ笑む。


「……はい、使えます。それより、なんなのですか、その顔は」

「気にしないでください。あ、能力結果を少しお借りしますね」

「は?」

「ヒューバート、見てください! 反応しましたよ! さっきのは誤作動だったに違いありません」


もちろん、ユウェシルの結果のため自分の結果ではない。

神であるせいで反応がしなかったのは、いったん隅に置いておきユウェシルのおかげで一応難を逃れることはできたのではないだろうか。


ユウェシルには申し訳ないが、ここは見逃してほしい。


さきほどまで石のように固まっていたヒューバートは、突然の出来事に目を凝らした。


「え! あんた、反応してるじゃない! どうして!?」

「さっきのはどうやら誤作動だったみたいです。彼が、クリスタルに少し一撃を与えてくれたおかげで直ったそうです」

「いやいや、それはよかったけどクリスタルを殴るんじゃないわよ! 割れたりでもしたらどうすんのよ! ちょっと、そこの男。あんた、いい見た目してるからって調子に乗ってるんじゃないわよ」

「は? いや、俺は何も―――」

「ヒュ、ヒューバート。私の魔法も確認できましたし、今日はこれにておいとまさせていただきますね! ユウェシル、ギル、帰りますよ〜」


アクディーヌは固まったままのギルを小脇に抱えて、ギルドの入り口へと急いだ。


「ちょっと、待ちなさいよ!」


ヒールにも関わらず、ヒューバートはムーソピアのように鬼形相で追いかけてきていた。

その速さは、Sランクゆえか、普通の人間とは到底思えない動きをしていた。

しかし、今は彼女の速さに驚いている暇はない。

こうなかったからには逃げるしかない。


「ヒューバート〜! また会えたら会いましょう〜! ではさよなら〜!」

「スイ!? ま、待って―――」


屋敷に戻るべく、アクディーヌは後ろからついてきているユウェシルを、ギルのように片方の小脇に抱えて走る。


「スイ様!?」

「ユウェシル、しっかりと掴まっていてくださいね〜」


二人を小脇に抱えながら、アクディーヌは足に魔力を込めて勢いよく屋敷まで飛んだ。

すると、「え?」というギルの声が聞こえ顔を向けると、彼は何が起こったのか分からない様子で困惑していた。


「あ、気が付きました? ギル」

「な、何これ。なんで空飛んでるの? 夢?」

「庭師。残念だが、これは現実だ」

「なんでユウェシルが……ってはああ?」


ギルはそう言いながら、空からアイテールティアを見た。


「ひっ! 死ぬ! スイ、君やっぱりおかしいよ! 落ちる!」


小脇に抱えられなからアクディーヌを横から抱きしめるギル。


「ギル、これは普通のことですよ。魔法があれば空でも飛べちゃうんです。そう、魔女のように」

「いやいや、魔法があっても何もなしで空なんか飛べないよ! 君は今、僕たちを抱えながら空を飛んでるんだよ? おかしいよ?」

「え、私っておかしいですか? ユウェシル」

「あ、その。庭師から見たらおかしいかと」

「………。まぁ、そういう日もありますよね。さぁ、もうじき着きますよ! しっかりと掴まっていてくださいね」


苦笑いをしながら冷や汗をかくアクディーヌは、物凄い勢いで屋敷まで飛んだ。


「ちょ、はやっ!」


そして、屋敷の入り口まで到着し静かに地上に降り、ユウェシルとギルを離す。

すると、気配を感じたのかフィンレーとアンソニーが慌てた様子で駆け寄ってきた。


「スイ様!? 今、空を飛んでいませんでしたか?」

「えーっと、もうじき夜になりそうですし、これからどうしましょうかね〜」

「君のせいで、冒険者ギルドにもう行けなくなったよ!」

「え? スイ様たち、冒険者ギルドに行ってたんですか!?」

「ギルが行きたいって言うから仕方なく行っただけです。フィンレー君」

「はぁ? 僕はただ案内してあげるって言っただけだし! 行きたいとか一言も言ってないし!」

「でも、私がいないとき、受付嬢の方と楽しそうに話してましたけどね〜?」


ギルはアクディーヌの言葉に、衝撃を受けたのか「スイなんて嫌い!」と言いながら走り去っていった。


その様子ににやけながら、アクディーヌもまたギルのあとを追っていく。


「ギル〜! 待ってくださいよ〜! 冗談ですって」

「スイ様、待ってください!」


フィンレーもアクディーヌの後を追う。


「ほっほ、本当にスイ様は面白い方ですな」


アクディーヌに聞こえない距離で、フィンレーたちが走っていく姿を嬉しそうに眺めながら口にするアンソニー。

それを聞いたユウェシルもまた、薄らと笑みを浮かべる。


「そこが、スイ様が皆に慕われる理由の一つとも言える」




◆◆◆




それから一時間ほどが経ち、アクディーヌは屋敷の庭にひとり佇んでいた。


日が沈み、すっかりと暗くなった下界でアクディーヌはもう一度連絡を取ることにした。

今度はマグトルムではなく、兄に連絡を取ることにしたのだが、これで兄までも連絡が取れなかったら、本当に本人たちからの連絡を待つしかない。


(お兄様、私は信じていますよ)


アクディーヌは、泡を作り出し兄からの連絡を待った。

だがいくら待っても泡には、兄の姿は映し出されることはなく、そこにぼんやりと浮かび上がったのは黄金に輝く月の形だけだった。


「やはり、お兄様も―――」


諦めかけたその瞬間、泡が青く輝き始め、雑音のような音が耳に届いた。

アクディーヌが耳を澄ますと、それは無数の魔物の咆哮だった。


「えっ……?」

『ディーヌかい? 連絡をしてくれて嬉しいのだけど、今、ちょっと手が離せなくてね。マグにも連絡をしたと思うけれどきっと繋がらなかったんじゃないかい? ディーヌはきっとマグの命令で僕の屋敷にいるんだろうけど、もう天界に戻っていいからね。ふふ、まあ人間好きのディーヌは、それを望まないとは思うけれど。もう少ししたら終わるから、それまで待っていてくれるかい? ごめんね』

「えっ、お兄様! お兄様、待って―――」


アクディーヌの言葉を聞かずに、兄の連絡は途絶えてしまった。

今回、兄と声でやり取りするのは初めてだった。

それに加え、魔物の咆哮が聞こえるとは、いったい兄たちは何をしているのだろうか。


マグトルムとは繋がらなかったが、兄とは連絡が取れた。

これで天界に戻り、四神やムーソピアに報告できるということだ。


「でも、ギルたちとは……次に会えるのがいつになるのか、分からないのが寂しいですね……」


天界に戻れば、分身が処理している大量の書類や会議が待っている。

それは避けられない。

だが、今回のように、マグトルムに下界での仕事を任される機会があれば、もう一度ギルたちと会うことができるかもしれない。

いつになるかは分からないけれど、その日が来ることを信じるしかない。



そう思いながら、アクディーヌは静かに屋敷の中へと戻って行くのだった。

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