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16 水神と大神官

この回は、ほとんどムーソピアのツンデレ回となっております。

四神たちと話し合いが終わったあと、アクディーヌはムーソピアのもとへと戻った。


ムーソピアはアクディーヌの姿を見つけるやいなや、すぐに彼女に歩み寄ってきた。


「アクディーヌ様、何か進展はありましたか?」

「進展というか、四神たちと話し合いをして、マグトルム様の捜索を手伝ってもらうことになりました」


アクディーヌの言葉にムーソピアは驚くかのように目を見開いた。


「会議でもないのに、よく集まりましたね。私が何度訪ねに来ても一度もお会いできなかったというのに」

「そうなのですか? 私が呼んだらすぐに来てくれましたよ? 泡越しですけどね」

「それは、アクディーヌ様だからに決まっているでしょう……」

「いえいえ、私も泡越しで話しているだけですから。直接会いに行ったら、多分ムーちゃんも同じように会えないと思いますよ? 一度、連絡してみては?」


たびたび下界に行っては天界に戻るアクディーヌとは違って、四神たちのほとんどは、天界にいるにも関わらず部屋に引きこもって何かをしているのだ。

簡単に言い表せば、風神のウィンディは薬作りに没頭し、花神のフェリクスは服作りと料理の研究をしているということだ。


彼らが外に出るのは、マグトルムから指示をされたときと直接顔を出して会議に行くときくらいだろう。

だが、炎神のイグニーゼルと氷神のスニューティオは部屋に引きこもりはするものの、たまに聖塔に訪れるためムーソピアと鉢合わせにならないのは非常に不思議なことだ。


「連絡は既にしました。ですが、繋がりませんでした。だから私は直接会いに行っているのです」

「えっと、ムーちゃん。あの子たちに代わってお詫びします……」

「アクディーヌ様が謝ることではありません。この仕事は私が選んだものです。それに、アクディーヌ様だけは必ず私の連絡に答えてくださるでしょう?」


そう言って首を傾げるムーソピアに、アクディーヌは目を見開かせた。

裏では、神よりも苦労している彼女がアクディーヌという神を誰よりも信頼しているのだと思うと、胸の高鳴りが収まらないのと同時に気付けば笑みを浮かべていた。


ムーソピアの真剣な顔を見つめながら、アクディーヌの心は少し温かくなった。

彼女の忠誠心がまるで緊張した糸のようにアクディーヌに引き寄せられていた。



「もう、ムーちゃんったら。本当にあなたって可愛い! 大好きよ!」

「あ、アクディーヌ様!? 抱きつかないでください!」


ムーソピアはアクディーヌの突然のスキンシップに慌てながらも、耳が真っ赤になるのを隠せなかった。


「私、これからはちゃんと働きますね!」

「期待しないでおきます」


ムーソピアは、抱きつかれたまま眼鏡の位置を正しながらも耳が赤くなっていることにはアクディーヌは気づくことはなかった。




◆◆◆




「では、今回のことは神官たちや天界の民には他言無用ということでよろしいのですね? アクディーヌ様」

「そうしてもらえるとありがたいです。でも、マグトルム様に仕えているユウェシル以外の神官たちはもう気か気付いているかもしれないので、彼らには秘密にしなくても大丈夫です」


そう言うアクディーヌに、ムーソピアは頷いた。

これは聞いた話だが、マグトルムに仕える神官の人数はユウェシル含めて四名しかいないそうだ。


基本、マグトルムが選ぶのは顔と性格、そして優秀であるかどうかだ。

ユウェシルのように、感情を表に出さないような者は途中で辞退することは滅多にないそうだが、それ以前に問題がある。

それは、マグトルムとの手合わせで最後まで攻撃を避け続けるという、訓練だ。

一回でも当たれば即失格で、マグトルム付きの神官を辞めさせられ、神ですら鬼畜とも思える訓練だった。

その鬼畜な訓練から生き残っているのが、ユウェシルと他の三名だ。


神官選抜試験で、難問を全問正解させたムーソピアよりも鬼畜訓練で今でも生き残っているユウェシルたちのほうが、より優秀なのではないかと思ってしまう。

でも、四神たちに恐れられているムーソピアもそれ以上に凄いのかもしれない。


「かしこまりました。それで、アクディーヌ様はこれからまた、下界にお戻りになられるのですよね?」

「はい。下界でやるべきことをやったら、また天界に戻るつもりなのでムーちゃんは心配しないで、いつも通り仕事をしていれば大丈夫ですよ」

「では、何かありましたらすぐに連絡します」

「うん、四神たちからの報告も一応書類とかで中央に届くと思うから、分身と確認してもらえれば現状は把握できるはずだから。もちろん、秘密情報ですので神力を解かない限り書類の中身を見ることができないようにしているというのを彼らには言っておきましたから、心配はいりませんからね」


長々と早口で言うアクディーヌは、すでに下界に行く準備をするかのように瞬間移動を発動させようとしていた。

それに対して、眼鏡の位置を正して「承知しました」と言うムーソピアにアクディーヌは「では、頼みます!」と言ってその場を後にした。




◆◆◆




アクディーヌが去った後、ムーソピアは聖塔の最下階へ向かおうとしたが、ふと背後で笑い声が聞こえた。


振り向くと、柱の陰に隠れた分身が楽しそうに笑っている。


「分身様、盗み聞きはよくありませんよ」

「ごめんごめん。でもさ、本当に姉さんたちって仲がいいよね」

「気のせいです」

「うわぁ、それ聞いたら姉さん悲しむと思うよ?」


分身はそう言いながら、やれやれと『水神の作業場』から離れていった。

どうやら、アクディーヌの暗示が解けて自由になったのだろう。


「仲がいい、か」


ふと、分身が言ったその言葉にムーソピアは声には出さないものの、笑みだけを浮かべて、最下階へと向かったのだった。


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