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試着室

 「ねぇ、この服どう?」


 「こっちも可愛いです」


 意気揚々と繁華街に出てきた俺達はショッピングモールにいた。

 棚に畳んである上着やハンガーにかかってるスカートを横目に両手に紙袋を下げて女子の後ろを歩いている。

 俺の存在を忘れているのか振り向きもせずに二人の世界に入っているので、これでは女性服コーナーで女子高生を追いかけているだけの男だ。

 傍から見ると不審者だな。


 「なんで普通に買い物を楽しんでいるんですか」


 俺も女子の関係者ですとアピールするためにも話しかけた。

 目の前では咲野先輩と村上は衣服を手に取っては体に当ててキャッキャしていた。

 

 「そりゃ、せっかく来たんだ。いろんな店を見てかないともったいないだろ」


 「そうですよ、彼女らが活動する時間帯はもう少し遅いですから安心してください」


 買い物になると女子は目の色が変わる。

 すべての商品を見ないと気が済まないように慎重に歩くため時間がかかってしょうがない。

 特に女性服のコーナーにいるため非常に気まずい。

 右も左も女性もので目のやり場に困るからだ。

 俺だけ抜け出して適当に過ごそうと提案したところ男は荷物持ちだと却下された。


 「ところで、本当に私の分も払ってくれるんですか?」


 「乗り気じゃないところを無理やり連れてきたんだ。それぐらい当然のことだ」


 「そこまで私のことを考えてくれていたんですか……。一生ついていきます先輩!」


 「それに、パパはうちに甘々で頼めばお小遣いをたっぷりもらえる」


 「おお、これが本当のパパ活ですね」


 後輩相手に男気を見せつける咲野先輩に村上は尊敬の眼差しを向けていた。

 こうやって人を魅了していくのか。

 目の前で一人の少女が先輩の魅力に落ちていく様子を気だるげに見ていると周囲の人の声が聞こえてきた。


 「見てあの子、スタイルいい!モデルさんかな?」

 「足長くて綺麗。でもあたしじゃあの恰好は似合わないだろうな」

 「眼鏡の子も素朴な感じで悪くないし、三つ編みが似合ってる」

 「てか、あの男だれ?女子二人に囲まれて両手に花状態じゃない」

 「くっそー、イケメンは不公平だ!」


 肩を出したシャツに太ももを露出させたショートパンツを穿いた咲野先輩はそのスタイルの良さから目立っている。

 当然、俺も自然と視線に晒されるので困ったものだ。

 どんなに綺麗な人と一緒だろうが、荷物持ちをする男からすれば地獄だ。

 重い荷物を持ち、興味のない店へと連れまわされるのは精神的にも肉体的にも疲労する。

 内心で愚痴をこぼしていると、咲野先輩と松下がこそこそと俺を見ながら話し合っていた。

 一体何を企んでいるのだろうか。

 できれば、労働のご褒美でも考えてくれてれば助かるのだが。


 「ちょっと来い厚金。お前に試着したものを見て選んでほしい」


 またか。

 ここに来る前も何回か頼まれたので俺なりに考えて選んでやったが、結局買わずに終わっていた。

 選ぶというよりも服装を見てもらうのが目的なのだろう。


 「はい、はい。いいですよ」


 適当に返事をして、試着室へと向かい近くのベンチに座り彼女らが服を選んでくるのを待った。

 

 「あの……粟国先輩。私もお願いしますね」


 二人が戻ってくると松下が赤面しながら要求してきたので、軽く手を挙げて了承した。

 咲野先輩が笑いを堪えるような表情をしているのが気になったが、一人見るのも二人見るのも大して変わらない。

 むしろ、そこまでファッションに造詣がない俺を判断基準にしていいのだろうか。

 試着室に入っていく女子を真面目な顔を作り見送った。

 さっきから周囲の視線が痛い。

 この会話も聞かれていたのか、こそこそと噂話をするように他の客がこちらを見ている。

 腕を組みながら待っていると、カーテンの開く音が聞こえたので振り向く。

 そこには松下が顔だけ出した状態でいた。


 「準備できました……」


 さっきから赤面しているが、もしかして体調でも悪いのかもしれない。

 もしそうなら、早めに返してあげないといけないだろう。

 

 「じゃあ、開けるぞ?」

 

 向こうがなかなか出てこないのでこちらから声をかけた。

 すると躊躇いがちに「はい」と返事が聞こえたのでゆっくりとカーテンを開く。


 「な、な、な……!」


 俺は絶句した。

 そこには、水色の下着姿になった松下がいた。

 へそを隠すように両手でお腹の辺りを抑えて恥ずかしそうに揺れている。

 

 「ど、ど、ど、どうかな!?似合う……かな?」


 三つ編みをふわっと浮かせながらゆっくり一回転して後ろ姿も見せてきた。

 隠すものが何もない白い脚に、柔らかそうなお尻を包み込む水色のパンツ。

 ふんわりとした胸を寄せるように包む水色のブラジャー。

 少しだけ出ているお腹には愛嬌がある。

 眼鏡をかけて青のワンピース姿で背筋を伸ばし正座していた礼儀正しい彼女の姿はどこにもなかった。


 「え、あぁ……似合うんじゃないか?とても」


 しどろもどろにそう答えるのが精一杯だ。

 視線を彼女から外すと、床に置いてある青のワンピースの上に黒のブラジャーが見えた。


 「あっ!じゃ、じゃあ。おしまい!」


 俺が視線を動かしたところで、脱ぎたての下着に気づいたのだろう。

 勢いよくカーテンが閉められた。

 恥ずかしがるなら見せなければいいのに。

 もしかして咲野先輩とこそこそ話をしていたのはこれのことだったのか。

 

 「ということは……」


 「おーい、厚金。こっちも見てくれ」


 やはり、カーテンから顔だけ出しながら俺を呼ぶ。

 先ほどは心の準備ができていなかったから焦ったがもう大丈夫だ。

 どうせ先輩は俺の狼狽える姿が見たいのだろう。

 そうと分かっていれば、逆に淡々とした表情で事務仕事のように感想を言えばいい。

 

 「どうした。もう開けていいぞ」


 「では、失礼します」


 一言声をかけてカーテンを一気に開く。

 

 「って、なんでホックを留めてないんですか!」


 「このブラ思ってたより小さくてきついんだよ」


 大きな胸が支えをなくしてぷるん、ぷるんと先輩の動きに合わせて揺れている。

 明らかにサイズがあっておらず本来隠れているはずの白い肌まで見えてしまっていた。

 松下と比べて普段から露出させている脚はやや焦げ茶色だ。

 焼け跡が明確に分かれており、とても卑猥に映った。

 サイズの小さい赤色のパンツの下から紫色のパンツが見えている。

 俺の様子が面白かったのか、後ろを振り向きお尻突き出した。

 傷一つない上半身がさえぎる物なく晒されており、両手で前の胸を抱えているためか横乳が後ろからはみ出しているのが見える。

 

 「それで、うちのはどうなんだ?どうせ、頭の中で知恵と比べて妄想でもしているんだろう」


 くくく、と腰を振りながら笑う。

 

 「似合うも何もサイズあってないじゃないですか!不合格ですよ!」


 それだけ言うとカーテンを閉めた。

 労働の褒美でも欲しいとは考えていたが、これでは生殺しだ。

 下半身がむずむず疼いてしょうがない。

 咲野先輩は俺の忍耐力を試しているのだろうか。

 

 「ふう……恥ずかしかった」

 「ははは、厚金の食い入るように見ながらそわそわする様子は滑稽だった」


 二人は並んで俺の前を歩いている。

 案の定、いいように遊ばれたわけだ。

 むらむらとした気持ちを落ち着かせていると先輩が俺の隣まで降りてきた。


 「これで知恵のことは許してやれ。お前もいいもん見れただろ」


 どうやら、俺が松下にいい感情を持っていないことを見破られていたようだ。

 確かに咲野先輩は味方だなんて言っていたけれど、詩織への嫌がらせに加担していたのは事実なわけで、やるせない思いを胸に閉まいこんでいた。

 まあ、お淑やかな彼女の下着姿をがっつり見たからには許さないわけにはいかないな。

 そもそも、俺が何かされたわけではないのだから一方的に得をしている。


 「はぁ……。先輩の行動がどこまで意図的なのか判断つきませんよ」


 現金なもので、げんなりとした精神的疲労はこのイベントを得て全回復していた。

 

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