やって来ました魔導国 01
引き続き慣れない投稿です。
来週までに慣れると良いなあ。
読者ページは大きく変わってないのが幸いですかね?
ではどうぞ。
メーア神聖国は長閑な農村と綺麗な都市という、中世ヨーロッパのファンタジー世界を想起しやすい国だった。
キフルランドは飛行船という外装を考えなければ、行ったことないけどテレビで見たラスベガスのカジノのような雰囲気かな。一般開放エリアは特に賑やかだったし。
そしてグラウカッツェ魔導国は……なんというか…………
「なんか雑多?」
「アル、せめて褒め言葉くらいはかけられないのかい?」
「メーア神聖国と比べれば当然かと。あそこは洗練され続け、ついにはここ三〇〇年は改築こそされてるけれど新築すら建てられていないのですから」
結構ごちゃごちゃしてた。
日本で言うなら京都と大阪、とまで行かずとも京都と東京くらいは違う感じだろうか。街並みはしっかりしてるけど景観より機能性重視とか、派手な見た目の物は少ないけどしっかり主張はしてるとか、そんなイメージ。
京都は歴史的な雰囲気が強調されてた印象がある。地図なんかを見てもマス目状だったし、建物も見える範囲内では綺麗に揃えられていたような記憶があるような気がする。多分。
まあ私は大阪に行ったことはないから比較なんてできないけど。
比較しているのは魔導国でも屈指の音楽都市ライプツィヒ、そしてメーア神聖国の聖都カヴンだ。まあ空港があるとはいえ一都市と首都を比べるなよとは思う。思うけど、なんか音楽都市と聞いたらオーストリアのウィーンみたいな街並みを想像するでしょ?
勝手に期待していたお前が悪いと言われればそれまでだけどさ。
「何を想像していたかは知らないけど、この都市めちゃくちゃ金かかってるよ。たとえばこの防壁、飛行船が吹き飛んでも耐えられるようになってるから竜種が攻めてきても壊れないくらい頑丈だ」
「私竜種見たことないからどれくらい凄いか分からないな〜。飛行船が吹き飛んだところも同じく」
「まあ飛行船はかなりの頻度で狙われてるけど、大破したなんてここ三〇年で一度も無いから当然だよ。地理的にもライプツィヒにわざわざ竜種が攻めてくるなんて過去一度もないから、その想定は考えられていないんだけどね」
レーゼ先生の補足を聞いて改めて、なら意味無いんじゃ? とは思うけど万が一の事態を考えればそりゃ高い建設費と維持費は必要だよね、と納得することにした。
というのも飛行船が離着陸する空港や船渠は結構狙われるらしい。錬金王国製の飛行船にしろ魔導国製の飛行船にしろ、破壊に成功したら半径五キロ以上は更地になるほどの魔力炉を積んでるのでテロにはもってこいの代物として知られてる。
そういう理由で都市から離れた場所に船渠を建ててるのだから。不便さより、安全さを求めたのだ。
そりゃ住人からしてもそんな爆弾の近くで住みたいとは思えないだろうし、飛行船を利用する金持ちだって不便さより安全さを求める……いや、求めないか? そもそも利便性とかを優先してるから乗ってる、訳でもない。
私はカジノを楽しみたいから乗ったし、レーゼ先生はイズに呼ばれたから、イズは仕入れたい物があるからと言ってた。
つまり危険性よりも利便性を求めたから乗った者がいるから飛行船があるのであって、その利便性を享受できない人は危険性が目につくのだろう。爆弾だって最初は土木工事に便利だから作ったって聞いたことがあるし、それと似たような感じなのだと思う。きっと。
レーゼ先生が説明してくれたが、少なくとも魔導国にある船渠や空港には飛行船がある間のみ張られる結界があるので安全性は高いらしい。
もちろん結界の規模が大きい分飛行船が爆発しても完全には防げないと言っていたが、それでも半径一キロくらいがプラズマ状態になる程度で済むと言っていた。正直何がなんやらとは思ったが、太陽の表面温度の倍くらいとイズが教えてくれた。
それってヤバいでしょ! と言ったら魔導師クラスなら誰でも防げるし、高位の龍種だと魔術を使わずとも傷一つ付かない程度の弱火という認識らしい。
化け物め、と感想を言ったら「魔王だったらその一〇倍の温度でも火傷一つつかない」と返され、そんな存在を倒せる才能があるのが勇者なのだと思うと形容し難い感情になったのは記憶に強く残ってる。もちろん魔王は倒したいけど、そんな化け物にはなりたくない。
まさか飛行船の話題から自分の未来を想像してSAN値チェックを受けるとは思っていなかったが、この世界で強くなるとはそういう意味らしい。
「さて。アル、ここで問題だ」
つい数時間前に話した内容を思い出していたら、脈絡なくイズから話題を振られた。
「唐突すぎない!?」
「アルが話を聞いていなかったのが悪い。では問題、グラウカッツェ魔導国の種族の割合はいくつでしょう?」
少なくとも自分にとっては唐突だったが、どうやらちょっと前のことを思い出していた間に話が進んでいたようだ。レーゼ先生も唐突だとは思っていないみたいな顔だし。
「種族の割合?……えっと、魔種精霊種亜人種の話?」
「そうだよ」
「精霊種と魔種が半分だっけ?」
残念違うよ〜、とイズは愛用の煙管を吸う。そのままふぅと吹かれた煙はバツに変わり、私の顔に向かってくる。咄嗟に振り払うように腕を振るうが煙は変わらず私の顔にぶつかった。
ゲホッゲホッと咳込むが単に煙が喉を刺激しただけで、タバコのようなくさ……独自の嫌な感じはしない。
この世界の煙草とはタールを含む中毒性が高いタバコではなく、歴とした薬だ。魔力を回復したり、傷を治したり、魔術の触媒としたりと使う植物や調合によって様々な効果をもたらす。魔術を扱う者たちにとっては杖と同じく身近な代物らしい。
確か魔導国だと前世のような紙煙草は売られておらず、煙管専用の刻みたばこは効果が高い代わりに味が良くないのだとか。タバコって味するのか、と思ったので覚えている。
売られている煙管には火皿部分から出てくる煙の香りや薬効などを消す魔術が込められてる、つまり魔道具なのだ。
そのため煙管は高く、庶民にはあまり広まっていない。まあ魔術を使わない一般人にはメリットが薄いので当然ではあるか。わざわざ煙状にしないと効果が出ないような特殊な薬草なんて、それこそ薬師や癒者に金貨を払って治療してもらう時くらいにしか使わない。
ただ魔術師や魔導師にはメリットが多い。液体状の薬だと作るのに手間がかかるし効果が出るまで時間もかかる、固形状だとさらに手間と時間は倍くらいはかかる。
だが煙管に詰めて燃やせば――それだけだと言うまでもなく効率は悪いが――即効性に優れた吸える回復薬として使える。それでいて薬草自体に毒が無ければ錬金術の知識が無くとも誰でも手軽に使え、調合のレシピがそこそこ出回っている――魔術師同士のネットワークでの話――のである程度の品質面も保証されれるとくれば、重宝されるというのも納得できる。
店売りの煙管は全て先の魔術が込められてるし、少なくとも魔導国や帝国では法律によってそう定められている認識の魔道具なのだが、別に煙管に他の魔術効果があることは禁止されていない。
よって魔術師や魔導師が持つ煙管には、杖と同じく魔術を補佐する効果がある事が多い。
元の世界にあったファンタジー小説にありがちな設定のように『魔術には杖が必須』とは言わないが、あれば効果の増減や消費魔力には変化があるので『あった方が良い魔術を使える』という認識が強い。もちろん杖によって効果はピンキリだけど、大体そういうイメージ。
しかしここで出るのが種族特性という名の格差。
実は杖が有っても無くてもほとんど変わらない種族は多いのだ。それが精霊種と言われる分類に属する種族、たとえば森人種や土人種に小人種なんかが有名だ。特に森人種は非常に魔術への適性が高くて、杖無しでも大抵の魔術を扱えるので貴族と会う時に武器を預けることはほぼ無いらしい。有っても無くても脅威度は変わらないから、との事。
他にも魔種に属する吸血種や竜人種は自分の得意な魔術は杖が必要無いのだとか。吸血種ならばコウモリや霧に変わる変化魔術、竜人種ならばブレスに使うような各属性の魔術。ただ他の魔術には普通に杖が必要だし、得意な魔術でも細かな条件を付けたりすると必要になる事もあるらしい。
一方で亜人種と呼ばれる分類の、ヒト種や獣人種なんかは杖が必要になる。そもそも魔術への適性を持つ者が生まれる確率が一〇〇〇人に一人程度なのでお察しだろう。
この杖の必要性が精霊種と魔種、そして亜人種との差として…………
「……あれ、何の話だっけ?」
そういえば私は何を考えていたのだろう?
何かキッカケがあったから考えていたのだろうけど、それは自分の中で感じた事がキッカケなのか、はたまたイズやレーゼ先生との会話がキッカケだったのか。
いや多分種族とかが関係あるのだとは思う。だって精霊種と魔種と亜人種について考えていたんだから。
…………うん、自分で考えても何も出てこないな! これは聞いた方がいい。
「ねえイズ、何で私は種族について考えていたんだと思う?」
「え?」
レーゼ先生がお前マジで言ってんの? とばかりに反応したが、イズはため息一つ吐いただけだった。
そのため息は質量を持っていたら、この頑丈に造られたという音楽都市のレンガを破壊できそうなほど重そうだったが、困惑する事なく応えてくれた。
「この魔導国は他国と比べて種族の比率が違う。その上で問題、魔導国における精霊種、魔種、亜人種の人口比率は?」
「おお〜! 確かにそんな話してたね! ……えっと精霊種と魔種が半分くらいだっけ?」
そう答えた私にイズは愛用の煙管を吸い、ふぅと煙を吐いてバツを模る。どこか覚えのある対応だけど……うん、イズは愛煙家だから似たような光景でも見た事があるだけかな。
にしても種族の比率。そういえば意外とこの世界はヒトの割合が少ないのだと聞いたことがある。
この世界に来た時はメーア神聖国の聖女様やゾフィー先生を筆頭に色々な人から勉強を受けたなぁ。イズにではなく、多分その時にヒト種の割合が少ないと教わったんだと思う。
確か世界的に見た時の割合は亜人種が六、精霊種が三、魔種が一だったはず。そして大国と呼ばれる国はそれぞれ比率が違うとも聞いた、多分その時に魔導国は精霊種と魔種の割合が高いのだと記憶したのだろう。メーア神聖国は六:三:一と普通なんだよとも教わった様な気がする。
そしてさっきイズは煙でバツを描いた。つまり間違いだって事なのだろう。
普通に口で間違いだって言えばいいのに……。
そして亜人種は獣人種とヒト種の合計、同時に魔術を杖無しで使えるようになっていない種族の事を指す……んだっけ。これは勇者も例外じゃなくて、私は聖剣を杖代わりに使わないと魔術は発動できない。
繁殖能力の高い種族が多くて、一年で一〇人近く産む種族だっているらしい。だから亜人種は割合が高いんだけど、精霊種や魔種に比べてずっと死にやすいので人口のバランスが取れてるのだ。
そして魔導国は魔術の聖地。
魔術の上手い者が多く集まる国なので、杖無しでも魔術を扱える精霊種や魔種が多く集まる。お互いに研鑽しあうので個としての強さが上がり、ただでさえ強い種族がさらに強くなる。また魔術は何かと興味を惹く要素が多いらしく、寿命が長い種族は“飽きて”精神的に死ぬのを避けるために魔術を研究する個体も多いのだとか。
個体数が少なくても一人一人が死ににくいならば、次第に数も増えていくのは必然といえる。
でもやっぱり子供が出来やすい亜人種の方が割合としては多いのだろう。それに魔種はSAN値が低いので狂気に捉われて魔物に堕ちる者も少なくないし、精霊種はSAN値が高いけど全体的に子供が出来にくい、国としての安定感を考えると亜人種が多くいて欲しい……んだと思う。多分。
魔種はSAN値が低いけど個としての強さが段違い。あと同じ種族同士での結束が強い。
精霊種は魔術への適性が高いし全体的に身体能力も優れてる。だけど特別強いのは森人種くらいで、寿命もそこまで長くない――ヒト種と比べたら十分長いが――ので個体差は亜人種と同じく才能に左右される。
亜人種は一口でまとめられないけど、まあ総じて精霊種や魔種よりかは繁殖能力は高めで、数が多いから飛び抜けた才能の持ち主が出て来やすい……くらいかな。
だから多分亜人種と精霊種は同じくらいだし、魔種は少なめ。
「亜人種が四、精霊種も四、魔種が二、だと思う!」
「正解! ああただ、この数値は戸籍を持つ人口の比率だ。戸籍がない住民まで含めれば亜人種が半分くらいだから、多分旅をしてたらそこまで他国と差は感じないハズだよ」
「え、戸籍って全員持ってないの!?」
驚きのあまり大きな声が出て周囲の人がこちらを見た。が、直ぐに何でもなかったかのように視線が逸れた。
魔術の気配がしたので多分レーゼ先生が何かしたのだろう。イズが魔術を使った気配なんてまず感じ取れないし、何やらレーゼ先生が焦った雰囲気を出したからね。
「まあ君からすれば驚くだろうけどね、僕たちからすれば戸籍を全員に持たせて管理するなんて正気の沙汰とは思えない。それくらい大変なんだよ」
と、何やら疲れた雰囲気になったイズを見て、過去に何かがあったのだろうと触れない事にした。過去の経験からイズに話を聞くと愚痴が入って長くなりそうだと判断して、領地持ちの貴族らしいレーゼ先生に聞くとする。
曰く、書類の枚数が何十倍に増えるのか恐ろしくてできない。とのこと。
たとえ名簿を書くだけでも書類は何十枚と増え、それを管理するだけで人件費や事実確認の仕事が増える。人を雇うにしたってその人が信用に足る人物じゃないと、税金の中抜きをされてしまう。それだけの仕事を増やして税収が増えたとしても、仕事をする人が増えれば給料もかかるし、不正審査をする手間も増える。
つまりたった数十枚の紙切れを増やして、関係各所の仕事を増やすのは割に合わないとのこと。
「昔錬金王国で勇者の話を元に全国民に戸籍を作らせようと動いた時があったのよ。結果的に負担が増えてそのシステムは白紙に返った記録があるんだけど、似たような記録は各地の歴史を紐解けばかなりの数出てきたの。そして成功例は数えれる程度」
勇者の生まれた国って凄いのよ?
それを聞いて、そう言えば明治に入ってくらいから戸籍ってできたと歴史の授業でやった様な記憶が出てきた。でも“こんでんえいねんしざいのほう”とか、豊臣秀吉がなんか田んぼ毎にウンタラカンタラしてた記憶もあるので、似た様なことはしていなかったのかと聞いてみた。
すると農村を治める騎士や代官が独自に管理する税収予想表なんかはあるらしい。それを踏まえてどの程度の税収が見込めるか、どの村が野盗から被害を受けたとか、魔物に襲われて畑や人の被害を纏めたりして、それらの情報を整理して次の年の納める税金の額を決めるのだそう。
そして貴族というのは大抵それらを纏めた書類を精査して、抜き打ち検査をしたりして書類に嘘だったり対策しないといけない様な事件事故がないかを調べるのが仕事らしい。
レーゼ先生も年に二、三回抜き打ち検査をする程度なんだとか。
「まあ私は魔導院の教授だから、貴族としての仕事はもっぱら部下に任せてるよ。最低限の義務を果たしていれば文句は……あんまり言われないからね」
文句を少しは言われるのか、と思ったがそれは私が突っ込むべきではないかな。
丁度そのタイミングで目的の宿に着いた。
「おーい、イズちゃん。不動の旋律亭に着いたよ」
「ん、ここか。たしかレーゼはここの宿は二〇年ぶりじゃなかったか? また泊まりたいとか言ってただろう」
「ええ。ここの専属の吟遊詩人がつい最近サロンで話題になりましてね。懐かしく思ったのです」
レーゼ先生はそう言って楽しそうに併設された食堂のメニュー横にある時間とリストを指す。
メーア神聖国でも見たが高い宿には吟遊詩人や音楽を弾く人がいる事が多く、そう言うのは時間限定なので壁にあるメニュー表の側に何時から誰がやるのか書いてあるのだ。
「今日は夜九時ですか。楽しみです」
そう言うレーゼ先生は少女の様で……そういえば先生って何歳だ?
「アル、レディに年齢はタブーだよ。たとえ同性であってもね」
むむむ、イズにそう釘を刺されたので余計に気になる。
けどまあ好奇心で良好な関係を崩したくないし、せっかくの楽しい時間に水をさすのも良くない。魔術を使うのに短仗を腰ベルトに刺してるからヒト種だとは思うけど、見た目まだ二〇代に見えるんだよね。
まあ後で覚えていたら聞こう。
第十四話 魔導師の見た目で得られる情報は少ない。
如何でしたか?
イズは杖を持たずに煙管や服に杖の効果を持たせたりしてます。基本的に近接戦闘主体なので杖は邪魔なんですよね。
あとこの世界でも女性に年齢の質問はタブーです。
気にしない派が多いですが、成人年齢すら種族ごとに変わるので「見た目より随分お若いですね」と純粋に褒めてたとしても、「言動が幼稚ですね」と馬鹿にする発言に変換されかねないからです。
もっとも、それは主に貴族間でのやり取りですが。
貴族相手に無礼な態度を取ると牢屋行きになったりするので、万一にも捕まったら嫌な民間にもその話が広がって年齢を聞くのはタブー、みたいな空気が出来上がった経緯がある。
では今日はこの辺で。
次は多分また水曜日に投稿すると思います。水土日の18時かな。
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