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召喚されて一年と少し経ちました 06


少し短めです。

テンションに任せて書いたものを修正してるんですが、なんか読んでて恥ずかしいことも多いんですよね。テンションって怖い。


ではどうぞ。




私は馬鹿だと自認してる。


小学校も中学校も成績は三以下ばかりだったし、実技以外は満点の半分も取れたことはない。幸か不幸かその成績について両親はまったく興味を持っていなかったけど、私は必死になって勉強した。


自分は両親と同じだと思いたくなかったから。


だから学校の授業は真剣に受けたし、宿題だって一度も忘れたことはない。授業で書いたノートだって先生から褒められるくらい正確で、ちゃんと要点を抑えて完成出来ていた。


塾に通うお金は無かったから週に三日は図書館にこもって勉強ばかりしていた。文房具を買うお金なんて無かったけど、先生に言えばノートもシャーペンもくれたから勉強だけはずっとしてられた。

流石に年相応に遊ぶ日はとっていたけど、それ以外はずっと勉強。


良い高校や大学には行けないだろうとは諦めていたけど、それでも努力は裏切らないと言い聞かせて必死になって勉強した。


中学校では赤点を何度かとったけど、基本的には四〇点台を取れていた。田舎で選択肢が少なかった高校の中でも最低レベルだったけど、それでも高校には行けるだろうと言われたのは嬉しかった。名前を記入してお金を出せば入学できる、なんて高校じゃない。

目標が低いとは思っていたけど、それでも身の丈にあった目標を達成する事ができた。


蛙の子は蛙だと分かったし、鳶が鷹を生むような奇跡は起きなかった。ただそれでも高校に入れなかった両親とは違うと証明できて、嬉しかった。






そして直ぐに世の中は理不尽と不条理でできてると知った。


あの時の事は思い出したくもないけど、忘れてはならない記憶として鮮明に思い出せる。


「なんでこう、上手くいかないのかなぁ」


この世界では鏡というのは高価な物だ。一般市民からすれば水面を見れば分かるのに何故高く壊れやすい物を持つのか、なんて言われるほど不要な物として知られてる。


ただ見た目を気にする必要がある貴族や商人には必需品。身なりが悪いと良い印象を得られない、結果商談が失敗しやすくなり、それは悪い結果を運んだと言えるので、身なりが悪い=悪いものを運ぶという図式ができた。

と、イズに教わった事を思い出す。


なのでカジノという運が関係深い場所の近くの建物には鏡が設置されてる。ここのホテルもそうだ。


この飛行船の中に温泉施設とホテルを載せてるという一生理解できないと断言できる仕組みで出来てるこの場所は、一番安い宿であっても鏡が設置されてる。


ここの一番安い宿は街にある一泊五銅貨(アス)のような雑魚寝は無い。個室が基本なのでどうしても高くなり、さらに飛行船なので専門の食堂は基本的に高い価格設定、一泊ご飯付きのセット方が宿と食堂を分けるより安くなるという普通の街なんかとは逆の状況なのだけれど、一泊五〇アスに似合うだけのサービスがある。


シーツ交換も毎日やってくれる。掃除機なんて比にならないほど綺麗にしてくれる魔術で掃除されるから塵一つない。お風呂は無いけど、この飛行船には温泉施設も付いてるのでそっちに行けば、元の世界のホテルなんかよりよっぽど良い。


これだけサービスが充実していれば一泊一銀貨(デナリウス)でも安い。


それだけ綺麗にされるので、もちろん鏡には水あかは無い。


その曇り鏡に嫌というほどに鮮明に見える自分の胸の間にある傷。それは思い出したくもない忌々しい記憶をどうしても刺激する。


「はあ」


イズから渡された石鹸を置いて、自分と同じ過去にいた異世界の勇者によって作られたというファインなバブルのシャワーで汚れを流す。


イズ曰く二級魔術師くらいの実力があれば厚化粧をしてても魔術で綺麗さっぱりにできる、というが自分の実力では出来ないのでイズ謹製の石鹸でメイクも汚れも落としてお湯に浸かる。術式は複雑じゃないと教えられたが、案の定というか身に付かなかった。


異世界と言えどなんでも魔術で、とはいかないのかと嫌なことから逃げるように考える。



それでも一度刺激された記憶は出てきてしまう。


「……なんでも魔術で、とはいかない」


この胸の傷はこの世界に来てからついたものではなく、さらに古い傷なので消すことはできない。それこそ皮膚移植で全く新しいもので代わりにするか、この傷より大きな傷をつけて見えなくするか、それでしかこの傷を恒常的に見えなくするのはできない。


さらに傷つけるのは論外だけど、皮膚移植というのも何か嫌だ。


この肉体があの両親から生まれたものだと考えれば幾らでも改造しても良いが、その為に死体から移植されるというのはどうも忌避感が強いのだ。


消すことはできない、とイズも結論付けた傷は湯船で歪んで大きく見える。


「あんなドレスを着れるなんて思ってもなかったなぁ」


キフルランドで着た胸元が見えるドレス。

小さい頃に少なからず憧れて、この傷がついてからは諦めたドレス。スタイルは幸いにも良かったので醜くは見えなかっただろう。


傷を隠すために『着てる者を美しく見せる魔術』がかかったドレスは高かったが、カジノで稼げた大金で簡単に返せた。なんでもドレスに限らず服に魔術がかかってる事はこの世界では珍しいどころかメジャーで、肌が見える範囲を普通に見えるような“レベルの低い”魔術の服は安い部類なのだそう。


魔術がかかってると分からない服はスタンダードで、さらに隠蔽が強いかどうかの魔術の効果によってランクが決まり値段が大きく上下する。一番高かったのはお腹が引き締まり胸が不自然ではないくらい大きくなる服。


どこの世界でも需要は一緒なのだと少し安心した記憶がある。


もちろん種族によって好まれる服が違うのだけど、それでも一番人気なのはそういう魔術がかかってる服なんだそう。


ただレーゼ先生に聞いたら、魔導国ではそんな魔術はバレるのが当たり前になってるので体型が悪い貴族は馬鹿にされるらしい。その為に痩せ薬やら美容品が非常に発達しているのだと笑っていた。

そして傷はちゃんと服で隠すのだとも。


そして魔導国以外だと派手な服を着て良いのは羨ましい、とも。


実は先の皮膚移植であっても傷があるのは分かるんだとか。魔術痕と言われる“なにか”が残るらしい。それは見れば分かる場合や、耳鳴りのような形で分かる場合もあると言っていた。


もちろん魔術に詳しい人しか分からないらしいのだが、酷いと魔術痕のある人が臭く感じてしまうこともあるとか。


これは手術した人の腕によって変わり、腕が良ければ魔術痕に直接触れないと分からない程度に落ち着けられる。一番上手い人ならレーゼ先生でも専用の器具を使わないと分からないレベルにまで魔術痕が残らないと言ってた。


「この話も何時まで覚えてられるのかな」


自身の記憶力の無さに悲しくなる。


このことはイズは中期記憶は上手いが肝心の長期記憶から引き出す能力が低いのだろうと言っていた。何十回も同じ情報を教えて覚えられるなら、それは長期記憶が出来ないという意味では無いとも。


言語能力が特別低いわけでもなく、機能障害があるわけでもない。ただ体を動かすことは長期記憶なんかは関係しないので運動能力は高いまま。そして直感的な第七感――第六感はこの世界だと魔力感知を指す――が鋭い理由はよく分かっていない。


直感、という単語繋がりで思い出すのは、今日のシャッテン商会に呼び出された時のことをレーゼ先生に聞かれた事。


「たしか……なんであの二択の真意を見抜けたのか、だっけ」


ちゃぷん、と湯船を揺らし何とかその時の会話を思い出す。


シャッテン商会は情報屋、そうイズから聞いて真っ先に考えたのは異世界の情報を盗られないように気をつけないといけない。という考えだった。


この世界に来る前にファンタジー系の小説は好きだったので、社会人になってからは読んでいた。その中でゲームの世界に転生したという主人公が、ゲーム終了時点までの知識を活用して好き放題するというよくある話だった。ただこの主人公はゲーム終了後の世界は知らないので、徐々に未知のイベントによって栄達したまま生き抜くことが出来なかったのだ。


つまりは異世界の知識は武器になるが、それに頼りすぎてはいけない。と、私の記憶に印象深く残った。


なのでシャッテン商会に自分の持つ異世界の情報を教えてしまえば、そのうち成り立たなくなるので断ったのだ。あと嫌な予感がしたから、というのも大きい。


さらに言えばゾフィーやイズから警告されてたのもある。


情報屋には気をつけた方がいい、とか。

相手が二択を迫ってきたら自分から第三の選択肢を作れば大抵は有利に持っていける、とか。


もちろん三つ目の選択肢は自分にとって悪い手を提示してはいけないが、この選択肢を迫る方法は何にでも通用するからと根気強く教えられた事なので覚えていた。交渉の場ではもちろん、戦闘であっても想定外の一手は動揺を生む。動揺は思考の停滞を生み、思考の停滞は行動に隙をつくる。


まあ実際にはそんな事まで考えていなかったけど。


ただ良い方向に転がることが多いのでその手段をとった。それだけの話。


「ああ、レーゼ先生といえば胸の傷は驚いたっけ」


そういえばレーゼ先生の胸には魔術痕らしきものがあったのだ。


勇者にはいくつかの能力がある。一番有名なのは聖剣を自在に操れることだが、それだけでは勇者というのが特別な存在とは言い難い。他に有名なのは発狂しないという能力だけど、実はそれ以外はあまり知られていない。


そんな能力のうち一つに破魔の肉体がある。魔術に対する抵抗能力が高くなるシンプルなもので、呪いや幻覚魔術などがよっぽど強力でなければ効かないという破格の性能をほこる能力。


そのおかげで教授位と二つ名を持つレーゼの胸にある魔術痕を隠す魔術にも気づけた訳だが、何か嫌な予感がして何も言わなかったのだ。聞けばSAN値チェックを受けないとダメになりそうな、そんな悍ましい話を聞くはめになる予感。


元の世界ではそんなに多くなかった嫌な予感は、この世界に来てからはよく感じる。


別に勇者の能力にはそんな“勘が良くなる”というものは無いのだが、勇者アルテミスは頭の悪さに反比例して勘が良いのだとイズは考えている。おそらくは短所を潰すのではなく長所を伸ばす形で強くなるタイプだと思っている。そのことは教えてはいないが。


故にシャッテン商会と会うことになると予想していても、その勘のおかげで大した傷は負わないと判断していた。だからレーゼを付けるだけで致命傷の危険を無くし、商会員との会話で痛い目をみたらいい経験を得られたと言うつもりだったし、逆に良い手を打って商会員との関係が自分優位に働いても良しと考えていた。


事実その予想は当たり、嫌な予感から相手の出す空手形を最善に近い手で返せた。


まあボロ儲けしたせいで宿のキープ期間が切れてしまう事を利用されて、嫌がらせから宿から追い出されてしまうというのは予想していなかったが。


そしてその事を人気ディーラー(レーツェル)から聞いて大笑いするのは、まだ少し先の話。






「…………何考えてたんだっけ、私」


湯当たりしたのか少しボーっとしつつ、つい先ほどまで考えていた事を完全に忘れたアルテミスは、


「まあいっか」


と一言。


まさか盗聴器が仕掛けられてるとは露知らず、お気に入りの(異世界の)歌を歌いながら上機嫌にシャワーを浴びるのだった。








第一一話 特定の部屋以外には漏れなく盗聴器が仕掛けられてる。





一応言っておきますがアルテミスは障がい者ではありません。


この子の馬鹿っぽさを出す為に今回は話の脈絡を無くしてみました。読みづらかったとは思いますが、この子はこんな感じで考えてますので個性だと思ってください。

解説が欲しかったら感想にてお願いします。


あと水曜日に続きを出します。

その分金曜日の分を実験的に移動としますので、ご了承ください。

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