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【電書化】困っていた憧れの大魔術師様に追い打ちをかけたら、予期せぬ溺愛に翻弄されています!  作者: 三沢ケイ


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2.わけあって憧れの大魔術師様と同棲中!(5)

「じゃあ次は──」

「まだどこか行くのか?」


 クラウス師長は呆れたように私を見上げる。


「当たり前です。だって今日はまだ始まったばっかりですよ?」


 私はずいっと人差し指をクラウス師長の顔の前に差し出し、ニヤリと笑う。そして、目を丸くするクラウス師長の手を握って再び歩きだした。

 その後、私達はお昼ご飯を食べるためにレストランに行き、その後は気の赴くままに色々なお店に立ち寄った。といっても、実際には私が行きたい店に立ち寄っているだけだけれど。


「ジルド君、行きたい場所はないですか?」

「…………」


 クラウス師長は一瞬何かを言いかけるように口を開けたが、結局は口を噤む。よく見ると、片手をお腹に当てていた。


(お腹が空いたのかな?)


 時計を見ると、午後三時を少し過ぎている。

 幼児化したクラウス師長は小さな体に反して、ものすごーくよく食べる。お昼ご飯もしっかり食べたのだけれど、早くも空腹を感じているように見えた。


 クラウス師長に限らず、魔術研究所の魔術師達は大食漢が多い。魔力が多いので、常に大量のエネルギーを消費し続けているからだ。かく言う私も、女性にしてはよく食べるほうだと思う。


 辺りを見回すと、最近オープンしたばかりのカフェの看板が目に入った。

 大通りに面して間口が大きく開いたその店には、四人掛けの丸テーブルとイスがたくさん並べられていて、三分の二ぐらいの座席が埋まっている。


「ジルド君。私、お腹が空いちゃったんでおやつにしませんか?」

「ああ、わかった」


 クラウス師長は私の言葉に、こくりと頷く。

 なんとなく、お腹が空いたと私に言いづらかったのだろうなと思った。一緒に暮らし始めてよくわかったけれど、クラウス師長は人に頼りたがらない。


「じゃあ、決まりですね。私、ちょうどあそこが気になっていたんです。入ってみましょう」


 私は笑顔でクラウス師長をカフェに誘う。

 お店に入ると、対応に出た店員にすぐに席に案内された。


「どれにしますか? 私はどうしようかな。このチョコレートがけドーナツが美味しそう」


 正面に座るクラウス様は予想通りお腹が空いていたようだ。メニューを開き、熱心に見入っている。


「たくさん頼んでもいいか?」


 ちょっと気まずそうに聞いてきたクラウス師長に思わず吹き出してしまった。


 何これ。本当にすごく可愛いんですけど。


「もちろんです! 好きなだけ頼んでください」


 クラウス師長の表情が嬉しそうに緩む。元々すごく綺麗な顔つきをしているから、その笑顔は本当に天使みたい。


(あー、可愛い!)


 クラウス師長は多くの女性憧れの存在。鉄壁の要塞であるクラウス師長とデート(?)したなんて知られたら、みんなに羨ましがられちゃうだろうな。


 私は口元に手を当ててふふっと笑う。


 結局、私はドーナツひとつと紅茶を、クラウス師長はドーナツを四つも注文していた。見た目は小さな体なのに、あっという間にたいらげてしまうのだから驚きだ。


「ジルド君って、甘いものがお好きですよね」

「まあな。砂糖はすぐにエネルギーに変わるから」


 クラウス師長はちょっと気まずそうにそう言うと、目線をふいっと私から外す。

 銀色に煌めく髪の合間から見えた耳がほんのりと赤く色づいているのが見える。


(あ、照れてる)


 これまで知らなかった一面に、思わず口元が綻ぶ。


「そうですね、私も甘いものは大好きです!」


 私はくすくすと笑いながら、相槌を打った。




 結局、私達が家に帰ってきたのは夜もだいぶ更けた時間だった。夕ご飯もレストランで食べてきたので、後はお風呂に入って寝るだけだ。


「師長、お湯が用意できたのでお風呂に入れますよ」


 私はすっかり慣れた手つきで、お風呂のお湯の準備、そして、風の魔法が使えないクラウス師長のためにふわふわのタオルを準備する。


 リビングのソファーに座ったままぼんやりとしていたクラウス師長が「ありがとう」と立ち上がる。けれど、脱衣室の手前で立ち止まると、こちらを振り返った。


「休日とは普通、こうやって過ごすものか?」

「そうですねー。人によると思いますけれど、ああやってのんびり過ごす人が多いと思います」


 クラウス師長はふーんと鼻を鳴らす。

 その様子を見て、ピンときた。


「楽しかったですか? また次のお休みにも、一緒にお出かけしましょう」


 私がにこりと笑いかけると、クラウス師長はふっと目を逸らす。


(素直じゃないなー)


 でも、嫌だと言わなかったのできっと楽しかったのだろうな。

 そんな様子を見ていたら、なんだが私まで嬉しくなった。



     ◇ ◇ ◇


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