①
はじめまして。
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ー迂闊、だった。
「アリシア・キャンベル!!!貴様との婚約を破棄するっ!!!!我が愛しの恋人を虐め、権力を振り翳して格下の貴族へ狼藉三昧!!!!!見損なったぞ!!!」
「…っな、何をっ…私はっ、何も!!!」
ー後少し、だった。
「貴様の行った事はすべて我が愛しのミランダが証言してくれた!!!ミランダは健気にも、処刑はしないであげてと涙ながらに訴えたが…貴様のやった行いに私が我慢ならん!!!貴様を国外追放とする!!!!」
ー目標が、遠ざかる。
「アリシアさん、今すぐ謝って下さいっ!土下座して誠心誠意謝って下さいっ…そうしたら許してあげるから…」
「嗚呼、なんと心優しいミランダ…」
「アリシアのような売女にも優しくできるなんて」
「でも、僕たちは許せないんだ…例え謝られてもね」
「そんなっ…処刑しかないというの…?アリシアさんがとっても可哀想だわっ…でもそれなら仕方な」
ーなら、こうするしかない。ヤケクソだ。
バターンッ!!!!!!
煌びやかなデザインの扉をお付きの騎士らが力強く開ける。
「「「!?」」」
会場に入ると、ポカンとこちらを見上げる顔の皆々様。ご来賓。
国王陛下と第一王妃はこの場にいない。
何故なら2人は他の仕事が入っているから。
そしてここには義弟の実母である側妃が居るはずだが、見当たらないので真っ直ぐ騒ぎの場へとヒールをカツカツと鳴らして足早に向かう。
「え」
「あ」
貴族の皆々様が私の正体に気づき、来賓が目を細め、騒ぎの原因共が間抜けにも口を大きく開けて私を見る。
まぁ、そのうちの1人は私が誰か分かっていないようだが。
そんなことはどうでもいい!!!!!
早歩きから軽く助走をつけて、めでたい場で騒ぎを起こした原因の1人に向かって飛び蹴りをお見舞いした。
「あ、義姉う
ドゴッ
ぐぇっ」
ズシャアッと転がる義弟。
「ッ何してるんだお前ぇぇええ!!!!」
華麗に着地をする私。
「キャァァァァア!!!!アレックス様ぁぁ!!あ、あんた誰よ!?誰に向かって飛び蹴りなんてっ!!!!」
ポカンとした後、義弟に駆け寄り私を糾弾する女。
「黙らっしゃいっ!!このアバズレがぁ!!!!」
「ひぅっ」
私が一喝すると短く悲鳴をあげ、涙目になる女。
「…っ、あ、義姉上…な、一体何を…」
ヒールが食い込んだであろう脇腹を抑えながらヨロヨロと立ち上がるバカ義弟。
「えっ、あ、姉って…??」
義弟を支えているアバズレが困惑しながら私を見る。
ー完璧とは言えないが、それでも順調に進んでいた…なのに、なのに!!!
こいつが全てを台無しにしやがった!!!!!