幕間 ***
彼はこの辺りでは珍しい異国的な雰囲気のある青年だった。
艶やかな長い黒髪、切れ長の目に翡翠色の瞳。彼が微笑むと何とも言えない色気が漂う。
当然のように村中の娘が夢中になった。
年寄り達は“建国の若者”がこの村を訪れた時の様だと言う。実際に見たことがある訳じゃないのにね。
娘たちは彼の関心を惹こうと着飾り、挙って贈り物をする。
私を見て―――
私を選んで―――
私を―――
私を―――
私を―――
でも、彼が選んだのは黄金の髪に青玉の瞳、女神の色を持つ―――私だった。
彼は金の髪に指を絡め、睦言を囁く。
私たちはくすくすと笑い見つめ合う。
彼の瞳に映る私が徐々に大きくなり、私は瞼を閉じて彼と唇を重ねる。
唇が名残惜しく離れ、私は潤んだ瞳で彼を見上げる。
スッ―――
不意に何かが変わった。空気が重く冷たくなる。
彼は意地悪くニヤッと嗤う。
愛しげに見つめていた瞳には蔑みが浮かび、それまでの甘い雰囲気は霧散する。
「魔物を手懐けるにはこうするんだよ」
何を言っているの?
「僕が魔物を相手にすると思った?馬鹿だな、魔物なんか相手にする訳がないじゃないか」
違う、私は―――
後退る私の髪を彼が一房摘む。その色は―――漆黒だった。
黒。
黒。
黒。
全テガ黒ク塗リ潰サレル―――




