11/73
幕間 ***
そこはねっとりとした闇に満たされていた。腕を動かすと闇が纏わり付いてくる。
何だかとても息苦しい。
辺りを見渡すと、一箇所だけ薄明かりが見えた。今にも消えそうなぼんやりとした明かり―――
私は闇を引きずりながら重い足を一歩ずつ進める。
闇が腕に、脚に、全身に纏わり付く。
一歩が酷く重い。
あともう少し―――
「……誰?」
淡い光に浮かび上がる人影に思わず息を呑む。
「―――ああ、何だ。鏡か」
金色の腰まで伸びた艶やかな長い髪、青空を映す湖面の碧い瞳。
鏡に映ったもう一人の私。
私はソレに指先を伸ばす―――
瞬間。
髪が、瞳が、全てが、黒で塗りつぶされていく。
闇、闇、闇、闇、闇、闇、闇、闇、闇、黒、闇、闇、闇―――
私は声にならない悲鳴を上げた。