コボルト軍団
ぼちぼち進んで行きます。
「ねぇ、起きてよスーラ、もう朝だよ?」
「…むにゃ、スラりんのことかぁー!!…くがぁ」
「なんの夢を見てるんだよ!僕は生きてるよ?」
「…ん?…スラりん?…ジェンロンに生き返されたのか?」
「僕は死んでないし、ジェンロンってなんだよ!いい加減起きて!」
スラりんの懸命な行動によって、オラ…俺の意識はやっと覚醒した。
辺りを見回す。うん、今日もいい景色にいい天気だ。ただ太陽がかなり上まで昇ってきているのは気になるが…
「 スーラが起こしても起きないからだよ…」
顔に出ていたようだ。スラりんにそう言われてしまう。
俺の朝が遅いのはいつもの事だ。朝日なんてここ最近では見てもいない。
しかも今日は理由がある。昨日の夜遅くまで身体強化の練習をしていたのだ。だから朝起きられないのは仕方ないと言い訳をしたいのはやまやまだがこれは秘密の特訓なのでスラりんに明かす訳にはいかない。
なんもしてないのにすごーいと言われたい作戦を決行するにはこの秘密は死守せねばならないのだ。
更に今日は妙な夢を見た。なかなかエキサイティングな夢だった。スラゴンボールとやらを見つけて願い事を叶えたり、強者と戦ったり、なぜか俺の主語が俺ではなくオラになったりしていた。
夢をもう少し楽しんでいたいと二度寝を何度繰り返したことか…
「せっかく良い所だったのに…今からブリーザをスーパースライムになって倒す所だったんだぞ?」
「もう午前が終わるんだよ?それにその夢絶対僕が殺されてるじゃん!」
「いやいや、直ぐに生き返ったさ。スラゴンボール7.5個見つけたらジェンロンが願い事を叶えてくれるらしいから」
「7.5個ってなに!半分欠けてるの?!」
「だからそういう設定だったんだって」
スラりんのつっこみを受け流しつつ、俺は木から降りた。どうやら昨日の俺は木まで辿り着いたらしい。途中意識が飛んでいるので記憶が曖昧だ。そういえば木に登る時何度か落ちた気がする。
ふぁぁぁっと欠伸をする俺にスラりんがついてきてと言って俺を先導して何処かへと向かう。
妙な気配を所々に感じる。
なんだろうかこの気配は、その疑問は直ぐに解ける事になる。
スラりんに着いていった俺が辿りついたのは少し開けた広場だった。
「うんうん、良い感じだよみんな。バルはもう少し気配を消してみて」
「ワンっ!」
そこに居たのは多くのコボルト達だった。二十はいるかもしれない。奇妙な気配はこのコボルト達から感じたものだったのだ。バルと呼ばれたコボルトは低レベルながらも気配遮断を使っている。
その気配を消そうとしていて消えきっていない気配が俺の感じた違和感の正体だ。
…しかし、どゆこと?
昨日まではそんな気配を感じた事は無かったし、コボルト達は気配遮断のスキルは持っていなかったはずだ。
俺は首をかしげる。(首ないけど)
そんな俺の疑問に答えたのはスラりんだった。
「僕がみんなに教えたんだよ。気配遮断とか捜索とかをね」
俺の開いた口が塞がらない…
口なんてないけど……
「そんなバカな…まだ半日も経ってないんだそ?それなのにもうスキルを覚えた奴がいるなんて…」
「うん、みんな優秀だったんだよ。僕よりも速く覚えるんだよ。」
誇らしいそうにスラりんが言う。やっぱり俺の才能が無いのか?俺が心も体も共に凹んでいると、ある光景を目にした。
「そうそう、もっとこう魔素を自然な動きをさせるんだよ」
スラりん上手く出来ないコボルトに気配遮断を教えている。その途端そのコボルトは奮起してさらに頑張るのだ。
上手く気配が消えていなかったのだが今では自然な流れになっている。
ああ、わかった。スラりんが教えるのが上手いのとコボルト達のやる気が凄いのだ。
スラりんは理論的に教える事も出来るし感覚的にも教える事ができるようだ。つまり教え方が上手い。そりゃ速く覚えますよ!どうせ俺の教え方は下手ですよーだ!
俺が不貞腐れているとスラりんがこっちを向いてコボルト達に呼びかけた。
「スーラが僕の師匠だよ!みんなちゃんと尊敬してね」
「「「「「「「ガウっ!」」」」」」」
コボルト達が一斉に吠えてペコっとおじぎする。
正直悪い気はしない。
というかめっちゃ嬉しい。
スラりんがそう思ってくれてた事に感動してしまった。
少しばかり赤さが増してる気がする。
それを隠すように俺は言った。
「みんな、頑張れよ!」
「「「「「「「ガウっ!」」」」」」」
気持ちの良い返事だ。
俺はすっかりコボルト達の事を好きになってしまった。
引き続きスラりんはスキルを教えていく。
身体強化まで教えているのだ。
コボルト達は中々覚えがよく、やる気もあり、スラりんの指導力もあり、残りの半日で身体強化を手に入れてしまった。
俺も途中から混ざって教えるとコボルト達から感謝された。スラりんのように木を跳び越えるまではいかなかったが全員身体強化まで覚える事が出来たのだった。
よく考えるとかなり戦力が上がっている気がする。
身体強化を使えばコボルト達はかなり強くなる。牙や爪の攻撃の素早さと威力が上がるのだ。
そういえば天使が強さの段階がどうとか言っていたがそれは大丈夫なのだろうか。
まぁいいか、それは天使の仕事だ。
俺は責任を天使に押し付けた。
そして夜が来た。俺は寝たふりを解除して、スラりん達が寝ている事を確認。
林の中の見張り達もまだ俺の気配遮断と隠密を破るには至っていない。
俺は身体強化を使い、変形で一旦へこんでからぐっと伸びる。スライムの体は浮き上がり木の上に着地した。スラりんにはまだ負けてないな。力半分だったのだが木の天辺へと辿りついたのだ。スラりんが本気ではなかった可能性もあるが今日はコボルト達に手本を見せるぐらいにしかスラりんは身体強化を使っていなかったので追い越されてはいないと思う。
俺は修行を開始する。
今日はある考えがあるのだ。
木の枝に向けて凄い勢いで跳びつく。勢いをそのまま活かし次の枝へと。ここに今までの改善点がある。着地と飛んでいる際は身体強化は使わない。そして跳ねる時だけに身体強化を使うのだ。
そうすれば魔素の減りが抑えられる。そして速く長く活動出来るようになるのだ。
最初は中々難しいが少しずつ慣れていく。
枝から枝へと、時には直角な幹に体をぶつける。勢いがあれば少しの間は落ちる事はない。そのまま角度を変えてほかの枝へと跳びうつる。忍者の様にまた枝から枝へと。スピードがどんどん上がる。重力ももう感じない。鳥になった気分だ。
林の切れ目にでた。木が途中で倒木によって途切れていて反対側までかなり距離がある。
いけるか?
俺は勢い殺さずそのままダイブした。
くっ、しまった…タイミングが少しずれた。身体強化の発動が少し遅れたのだ。その為跳躍の力が足りず……
ぐへぇっ!
木の幹に突進した。
すかさず重力が俺を地面に叩きつける。
べちゃあぁーと潰れるスライム。
もちろんダメージはないのだが失敗は失敗だ。
かなり良いところまでいけたのにな。昨日より長く飛んでいた。やはり身体強化を動き出しだけに使えば魔素の消費量は抑えられる。これが今日の収穫だ。ただそのタイミングが合わなかったらこんな風になってしまう。
反省点は山ほどあるな…
それにまた気配遮断と隠密を忘れてたし…
残った時間はそれの修行にするか、
俺は気配遮断と気配察知を交互に使ってスキルの向上を目指した。
クリスマスが終わりました。
どのようにお過ごしだったでしょうか。
私は…聞かないでください。察して!
ドラ◯ゴンボールは大好きです。
ファンの方はスミマセン!




