秘密の特訓
少し更新が遅くなりました。
スミマセン!
身体強化を教え、スラりんが木を跳び越えたその後、
日が沈み暗くなったので暗視をレクチャーした。
案の定スラりんは一回で覚えてしまったので俺はなんか悲しくなってきた。
よく考えてくれ、俺が何日かけてスラじいのスキルを習得したか。
7日だ。
対してスラりんは1日だ。
この才能の差はなんだ?!と思わなくもない。早急な解決が求められる。
スラりんとその仲間のコボルト達が寝たのを見計らい、俺は今日から行動に移す事にした。
俺は暗い中で、といっても満月が出ているのと暗視があるのでそこまで暗くは感じないがその中で眠気に囚われぼんやりとした意識を覚醒させた。
俺は木の上からピョンと飛び降り、変形でダメージを吸収した。
そして出来るだけ忍び足で洞窟へと向かう。
明るい時も見たが藁が敷かれている。かなりふかふかしている。その上でコボルト達は寝ていた。もちろん、すっかりカッコよくなってしまったスラりんもだ。
よく寝ておるな?
俺はそれを確認して丘からさらに降りていく。
そして気配遮断と隠密を発動した。
これで今も林の中を交代で見張っているコボルトも俺の存在には気づかないだろう。
俺は木の上に身体強化で跳び乗った。
ーーーヒュンヒュン、と音を立てて木の間を飛ぶ赤い物体。
それはファイアスライムとなった俺だ。
木から木へと跳び移っていく俺。
なぜ大好きな睡眠を我慢してこんな事をしているのかと訊かれれば、答えは一つしかない。
スラりんに負けない為だ。
俺は今日、身をもってスラりんの才能を知った。いずれ、このままでは追い越されるのは間違いない。
スラりんに追い越される所を俺は想像してしまった。
きっとそんな事言うはずはないが
「スーラ…そんなものだったんだ…」
絶望して見下したようなスラりんの顔
などなどそんな事を言われるのを想像してしまったのだ。
スラりんは優しいのでもし俺を追い越してもそんな事を言うはずはない。だがしかし、もしそれを言われたりしたら俺は死を選びかねない、でもそんな事したら永久に転生は出来ない気がするのだ。まぁ、そんな事にならない為を自分を鍛える必要があるのだ。
理由は一つといったが、スラりんにもう少しぐらい尊敬されたいという理由もなくもない…いやそんな邪な理由はあるはずがない。忘れてくれ。
それに俺は負けず嫌いなんだ。
純粋にスラりんに負けたくない。その気持ちで俺は自分を鍛えようと思ったのだ。
というわけで俺はひたすら特訓している。
俺は木から木へと跳び移っている。使っているスキルは身体強化と変形だ。スキルはどれも使えば使うほど強さが上がる。火魔法も気配遮断も捜索も、どのスキルもだ。
俺は身体強化をより多く使うことによってスキルの効果をあげようと目論んでいるのだ。
俺は変形で、身体強化によって強力になった跳躍をさらにブーストする。
太い枝が俺へと凄い勢いで突き進んで来る。
それを出来るだけ勢いを殺さずに体を変形させ受け流し、次の枝へ勢いを向け、またブーストされた跳躍をする。
それの繰り返しだ。
頭をフル回転させ自分のギリギリ届く範囲にある枝を選
ぶ。変形の形状を改善しつつより効果的な受け身を考えていく。
いつの間にか重力も殆ど感じない。俺の体が風を切る、まさに飛んでいる気分だ。
どんどん加速していく。怖さと興奮が同時にくる。やめてしまおうかという気持ちを加速感が忘れさせる。もっと速く、もっと速くと恐怖よりワクワクがギリギリ勝っている。
フッと力が抜けた。
俺は勢いよく木の幹にベチョっとぶつかり、忘れていた重力に地面へと落とされた。
「ぐけぇぇっ」
情けない声をあげてしまった。
魔素切れだ。
身体強化は使っている間はずっと魔素を使用する。魔素を運動エネルギーに変換するのでそれが無くなれば使えなくなるのは当然だ。
思いつきでやったのだがかなり楽しかった。もちろん怖くもあったけれど体が風をきり、重力から解放されるような感覚は気持ちよかった。
俺は一旦身体強化の練習は中止した。
ムシャムシャ、いやベチョベチャだな。
俺は草を食べている。
興奮が冷めると一気に疲れがでる。なので食事で回復しようとしているのだ。正直草だとあまり回復してる感はないが一応疲れは取れてきているので効果はあるのだろう。
俺は先程の事を思い出して改めて感じた。身体強化と変形は凄い。
最初はゆっくりとおっかなびっくりだったが途中から怖さが薄れてどんどん調子に乗ってしまった。
その結果俺はぐったりしている。
もうちょっと身体強化はなにか考えないといけないな。
今日の反省だ。
しかもそれを使っている間は気配遮断と隠密を使うのを忘れてしまった。これも次回の課題だな。
時々、二匹組や三匹組のコボルトが見回っていたので見つかってなければいいのだけれども。
出来ればこの事は秘密にしたい。決してスラりんに何もしてないのに凄ーいなどと思われたいからではない。決して。
俺は草をもぐもぐしつつ、丘の木へと戻って行く。
その間も気配遮断と気配察知、隠密と捜索の練習をしながらだ。
こうでもしないとあっという間にスラりんに追い越されるだろう。大変だけど頑張らなければ…
スラりんに追い越されない為に、そして師匠として尊敬してもらうため…いやちょっと本音が…決してそんな事はないと強く言っておく。
俺の秘密の特訓初日はこうして終わりを迎えた。
スーラはスラりんに負けない為に特訓を…
なんかレベル上げの時みたいな感覚ですね。
ぜひ楽しんでいただけたら幸いです。
スーラはスピードホリックなところがあります。




