俺が師匠?
修行!
今度はスーラが師匠に?!
因みに今悩んでいるのは
?!と!?の違いです。
やっぱおんなじ?!!?
「あー、そうそう、そんな感じ」
「こう?うーんまだ出来ないな」
木に爪を引っ掛けて登ろうとする大きな犬。青と白の混じった黒い毛並みが艶やかに輝いている。
もちろんスラりんだ。
俺はスラりんにスキルを教えていた。
あの後俺も今までの事を教えたのだ。ファイアスライムになってから探しまわった事や川に流されたこと。
そしてスラじいという尊敬する師匠に出会ったこと。
その話をすると「会ってみたいなぁ」とスラりんは言う。
スーラの師匠だからきっと凄い人、いやスライム?何だろうなぁ、だそうだ。もうただでさえ赤い体がもっと赤くなりそうだった。
俺が川に落ちた経緯を話す時はとても悲しそうな顔をしていた。どうしたのかと問いかけるとスラりんもコボルト達の長になってから青髪に遭ったらしい。
見回りのコボルト達から連絡(スキル「遠吠え」)がありそこに駆けつけたが二組の内一匹が瀕死の怪我を負わされ
そのまま亡くなったとスラりんは言った。青髪は引き際は心得ているようでコボルトが五匹になった時点で逃げていった。
追いかけようかとスラりんは思ったが、仲間を犠牲にするのを恐れて追いかけることが出来なかった。
「ジルの仇は絶対打つ」そう憎そうに呟いていたのを俺は忘れられそうも無い。
ジルとスラりんが呼ぶコボルトは転生することは無かった。
自我がまだ弱いからかもしれないが、
それを試すなどは出来るはずもない。
色々話をした後にスラりんが
「強くなりたいんだ、僕にスキルを教えてください」
とお願いしてきたので
俺は二言で了承したのだった。
そして冒頭に戻る
俺が教えているのは見ての通りスキル「登木」だ。
コボルトも覚えられるのか心配だったが構わないとスラりんに言われてしまった。
「どうだ?」
「もう、ちょっとで、の、登れそう…」
必死なスラりん。
だがその姿はとても可愛らしいものになっている。
ガンバっ!と応援しつつその様子を見る。
俺もコボルトになりたかったなぁ!火魔法なんかにつられるんじゃなかった…と若干後悔していると
「登れた!やった、登木スキルを獲得したよ!」
「ヨッシャー!俺でもかなりの時間がかかったんだぞ!」
俺とスラりんは飛び跳ねあい喜ぶ、周りから見ればコボルトに襲われるスライムに見えるかもしれないが…
「スーラ師匠!これからそう呼ばせて!!」
「お、おうよ」
「僕は王じゃないんだよ!」
「いやそういう意味じゃなくて」
「そ、そっか…そうだねすっかりそう呼ばれすぎて…」
「なんだよそれ…くっ…ハハハハッ」
思わず堪え切れずに笑う俺
ハハハとぎこちなく笑うスラりん。
師匠と呼ばれた事に恥ずかしさと嬉しさを感じつつ、スラじい、いや俺の師匠もこんな気持ちだったのかなとふと感じた。
それにしてもスラりんは王と呼ばれたくないらしい。やったらダメという事はやりたくなってしまうのは人に限らずスライムにとっても真理の様だ。
まだ昼なので時間がある。
夜まで時間いっぱい教えないとな
俺はそう思った。
ーーー数分後
「やばい、見つかる…」
俺は隠れていた。もちろん勇者や冒険者ではなくスラりんにだ。こうなったのは数分前。登木スキルを教えてから、気配察知ぐらいは教えようと思った俺は自分とスラじいがやった様に説明をしてから隠れんぼを二人ですることにした。
もちろんスラりんには鼻を使わないように言っておいた。
隠密の破り方にあんな方法があるとは思わなかったのだ。
師匠はコボルトには会わなかったのだろうか…
まぁ普通は魔物同士で争うことはないからな
と勝手に納得しつつ、
そんな訳で俺は隠れているのだが…
スラりんが近づくと、ないはずの心臓がビクンと跳ねる。遠ざかるとホッとするのだがまた近づいてくるので非常に心臓に悪い。気配遮断だけだとかなり緊張するのだ。隠密を使いたくなる気持ちを何とか抑えてスラりんを待つ。
数度俺の隠れている茂みを行ったり来たりを繰り返す。
ドキドキしながら待つ俺…
「そこだぁっー!」
ば、バレたか?
「違った?」
カマかけやがったなスラりん…
あとで説教せねば。
またもや続く行ったり来たり。何か決心をした様子で近づいてくる。
「そこかな?」
と茂みを覗くスラりん。
「正解!」
俺はピョンと茂みから飛び出す。
「スキルは手に入れたか?」
「うん!気配察知を手に入れたよ!」
「それは良かった。ところでさっきの「そこだぁっー!」はなにかね?」
「ス、スミマセン」
しゅんとなる様子が可愛かったので許すことにしよう。
しかしながらスラりんの気配察知を獲得した速さは凄まじいな。たった一回の隠れんぼで獲得したのだ。
俺は2日かかった。その間何回隠れんぼしたかはもうわからない。
もしかしてスラりんて才能があるのかもしれない。
それか俺の才能が絶望的なのか。
まさか、そんなはずは…
まぁ師匠は何も言わなかったので平均的って事だろう。多分…
不安になるがそんな場合ではない。
まだまだ教える事がある。
「よーし、まだまだ行くぞー!」
「はい!師匠!」
師匠という所にまたも嬉しさと恥ずかしさを感じつつもそれを悟られないように毅然とした様子で言葉を続ける。
「次は捜索だ!」
「はい!師匠!」
ダメだやっぱ恥ずかしい。
羞恥心を赤い肌で隠しながら悶える俺だった。
読んで下さりありがとうございます!
ちょっとスキル説明を
「遠吠え」ですがその名の通り遠吠えをします。
コボルトなど犬型は無条件で獲得し、なのでスラりんも覚えています。
どんなスキルかと言うと遠吠えが聞こえる範囲ならば連絡が可能です。どんな感じかと言うと
ワオォォオォン!だと「敵が来た」とかで
ワオォォオォぉん!だと「腹減った」などになります。
声音で意味が少しずつ変わるのです。
異常です!あっ、違った、以上でした!




