隠し権能
前々から考えていたものが登場させる事ができました。
これからスーラが少しレベルアップします。たぶん
「ふぉふぉふぉ、弟子になった所で早速教えたいのは山々じゃが、お主に出来ることを知らぬ故まずはそれから教えてもらおうか」
それはそうだ。知っている事を教えられても困るし、知っていると思われて教えてもらわれないのも困る。
「そうですね。俺が使えるスキルは…」
ーースキルについて教えた。
「ふむ、なるほど。スキルは中々多いがそれだけで生き延びられるとは思ってはせんだろう?」
「はい、実際それでここまで流されてきた訳ですし…」
俺の火魔法が止められたからピンチに陥ったのだ。
今回は川に助けられたけれど、次はそうはいかないだろう。
「最初に言っておくが、儂の教えられる事は冒険者を倒す術ではない。」
どういうことだろうか?なら何を教えようとしているのだろうか。
「ふぉっふぉっ、そう不満気な顔をするでない。もしそうであればその称号は儂の物であっただろう。」
もちろん転生の事を話し、称号の事も教えた。
それだけ信用しての事で、それに隠してどうする?って話だ。
もし、スラじいが教えてくれるのが冒険者を倒す方法ならば冒険者殺しのスライム称号は確かに俺の物であるはずがない。
しかしならばなにを教えるのだろう。
そんな疑問にスラじいは答える。
「生き抜く術じゃ。儂はこれまでどうやって生き延びてきたのか、それを伝えたかったのじゃ。」
なるほど、そういう事か。
戦って勝つだけが生きる方法ではない。
まずは戦わない事も一種の生きる術なのだろう。
逃げるが勝ちというのも逃げた方が利点が大きいという事からそう言うのであるはずだ。
そんな俺を見てか、
「わかってきたようじゃの。儂には知恵があった。何故かはわからんがの…その知恵で自らの力を鍛え、そして今日まで生き、生きてきたのじゃ。転生を勧められる程にな。
その知恵と技術をお主に全て教えると約束しよう。」
そう言った。
「師匠はちなみに何年程生きているのですかね?」
俺は出来るだけ丁寧に聞いてみる。
「そうじゃのかれこれ30年程になるかのぉ」
「思ったよりお若いですね。」
つまりだいたい30歳くらいという事だが
この歳で、喋り方がお爺さんっぽいのだろうか。
スライムにしてはかなり長生きなのは間違いないが。
「ふぉふぉ、喋り方は生まれた時からじゃった。お主はどうだったのじゃ?」
この言い方だと、生まれた時から自我があったのだろう。
俺はもちろんなかった。
「俺は生まれた時には自我はありませんでしたよ?物心ついたらスライムでした。」
「ほぉ、なるほどの。同じスライムでも差があるのじゃろう。」
そうかもしれない。スラりんもよくわからないと言っていたし。
「さてそろそろ修行の内容の話をしようかの、まずお主は食事スキルと睡眠スキルが使えるようじゃから…」
「ま、待ってください。睡眠ってスキルなんですか?」
「知らんかったのか?お主、普通はスライムは寝ることはないのじゃよ?やろうと思わないとできないはずじゃ。」
そうなのか…初めて知った……
スラりんも川で寝ると言っていたし、
睡眠スキルも持っているのかもしれない。
「それでも食事スキルと睡眠スキルって食べる事ができる、寝る事ができるというだけじゃないんですか?」
「ふぉふぉふぉ、それはいい質問じゃの。」
そう言ってスラじいは笑う。
でもそうではないのだろうか?
「儂もなんでこんな事を知っているのかわからんが、実は一部スキルには隠し権能というものが存在するのじゃ。」
「隠し権能?」
「そうじゃ隠し権能とは普通の鑑定スキルでは見えず、鑑定スキルがあってもかなり熟練しなければ見ることができないスキルの効果じゃ」
鑑定スキルというものを初めて知ったが
それでも見えないものがあるのか…
「それで食事スキルと睡眠スキルはどんな効果を発揮するんですか?」
「またもやいい質問じゃな、それはの、まず食事スキルは食べた物のエネルギーを魔素へと変換するスキルじゃ。
そして睡眠スキルは寝る事により魔素の最大量を上昇させるスキルじゃ。これは魔素を使い尽くすなどのことにより効果が上がる。」
「結構凄いスキルですね。」
食事なんてスキル、暇だから草食ってたら獲得したものだ。ただ食べる事ができるようになる訳ではないらしい。
しかしよく考えたら…草を食べた時にはあまり感じなかったが、勇者のサンドイッチを食べた時なんだか元気になった気がした、それはサンドイッチのエネルギーが魔素に変換されたからかもしれない。
それでなんとかスラりんを助ける最後の水魔法が打てたのなら、食事スキルには感謝しないといけない。
俺は水泳スキルだけでなく、食事スキルにも心から感謝した。
そして睡眠スキルは魔素の最大量を増やすだって?
ぐーたら寝まくろう。
俺が悪い顔をしたからかもしれない。
スラじい師匠が言う。
「寝すぎは禁物じゃ、あまりに多い睡眠は逆に魔素を使う。」
なにぃ!それじゃ二度寝できないじゃないか!
もしかすると俺はスラりんを助けた日寝すぎたから、
自分を助ける分の魔素が足りなかったのかもしれない…
くっそぉ睡眠スキルめ…
俺は睡眠スキルには感謝しなかった。
まぁよくよく考えるとそれで俺の魔素量は増えたのかもしれないので感謝しておこう。
スラじいが言うには、それが無ければ間違いなく水魔法を使える魔素量にはならなかったらしい。
魔素量とは魔素をどれだけ持っているかでMPという言い方もあるらしい。
「じゃあ今日の所は鑑定スキルを教えよう。相手の力量を見極めるのも生き延びる術の一つじゃ。」
「はい!」
そう元気よく答える俺。うむと相槌をうちつつスラじいは鑑定スキルのレクチャーをはじめた。
非常に難解な説明を受けつつ、言われた通りにする。
そこら辺の草を鑑定して練習した。
直径僅か1センチ程の深い青と白の花が付いている。
この草に意識を集中させ、見た目からどんな草なのか予想するのだ。スラじいは他にも鑑定についてなにやら説明していたが俺の頭には全く入らなかった。
スキルがどうとか隠蔽がどうとか言っていた。
わけわからん。
〜スキル「鑑定」を獲得しました。
おっ、獲得できたようだ。天から声が聞こえてくる。スラじいには聞こえていないようだが俺の様子を見て、獲得したようじゃのぉ?と言ってくる。うん、どこまでも鋭いスライムだ。
鑑定結果は
〜トキシラズ 菊科 花径約一センチ
どこの地方にも見られる草。
花の咲く時期が定まっておらず冬に咲く個体や夏に咲く個体がある為時知らずと呼ばれている。
効能 ◆◆◆ ◆◆◆◆
花言葉 「忍耐」「向上心」「寝坊」
というものだった。
「師匠、効能が見えませんよ?」
「それはお主の熟練度が足りないからじゃ」
なるほど熟練度が上がれば見えない物も見えてくのか
そうだ!スラじいならば見えるのだろうか?
試してみよう。
〜〜ステータス
種族 ウォータースライム
LV?
生命力?
魔力?
攻撃力?
防御力?
俊敏?
スキル???
……全くわからない。?だらけじゃねーか。
ステータスというのは多分能力の値を表すのだろう。
「お主、儂を鑑定しておるじゃろ?」
当然スラじいがそう言った。びくっと赤いスライムボディが波打つ。
やはりただスライムではない…かなり鋭いな…
「ごめんなさい!」
素直に謝る事にする。
「ふぉっふぉっふぉ、良い良い、それで儂のステータスは見れたかのぉ?」
にこやかに笑うスラじい、案外あっさり許してもらえた。
ステータスは見れたかって?
「見れませんでした」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
うんうんとうなずく青いスライム。
まぁこれもシワが寄っているだけなのだが。
それにしてもステータスが見れなくて当然だと思っている様子だ。
「なんで見れないんですかね?」
わからない事は聴くに限る。
「それはじゃのぅ…生き物には基本的に鑑定に対する抵抗力があるからじゃ。もちろん魔物の儂らでもな。植物などは比較的その抵抗力が弱いので鑑定で調べる事ができるが効能なのどは少々熟練度が必要じゃ。そして儂のステータスが見れない理由じゃがレベル的に同格または格上の相手のステータスは見れないのじゃよ。見れるのは格下、それでも熟練度は植物を見るときよりも多く必要なのじゃ。もし同格、格上のステータスを見るのならばそれこそ自分のスキルの隠し権能まで見えるほどの熟練度が必要じゃろう。」
ふむ、ふむふむ、ふむむ、ふむふむ、ふむむん…
………は?
えーと、つまり?
俺がわかっていないのをスラじいは理解したらしい。
スラじいは俺に出来るだけわかりやすく説明する。
「うむ、お主なんもわかっておらんな。つまりじゃな、お主の今の鑑定の熟練度を1とすると50くらいで植物の効能と自分のステータスが見える。しかし同格どころか格下のステータスは見えんのじゃ。100くらいで格下のステータスは見れるようになる。だが同格はまだ見えん。熟練度が物凄く上がればいつかは自分の隠し権能まで見えるようになるはずじゃ。そこまでいけば恐らくじゃが同格は見える。ただその隠し権能が見えるまでの熟練度はわからんがの。」
ふむ、なんとなくわかった気がする。
スキルって不思議だな
俺はそう思った一日だった。
「とりあえず今日はもうねるのじゃ、明日から修行をはじめようかのぅ」
明日からか、俺は空を見上げる。すっかり綺麗な夜空だ。
雲が時々半円の月を隠す
俺は綺麗な月に吸い寄せられるようにここら辺で最も高い木の上に登った。
隠し権能の他に熟練度という概念があります。
熟練度が上がることでスキルの力を引き出す事ができます。
書き忘れるかもしれないので一様書いておきました。
スキル
食事:食べることができる
隠し権能 食べた物のエネルギー量に応じてMP回復
睡眠:寝ることができる
隠し権能 寝ることで最大MP増加、寝すぎると逆MPを使用する。




