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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第四章 黒き嘲笑の真実
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譲れぬ思い

「ふーん。天霊を狩るための組織が、天霊による部隊を設立。大分追い詰められてるんだね」


 璃空たちが、セブンス本拠地で憤怒との戦いを終えたころ。

 黒い廃墟の中。

 佐伯に呼ばれた甘音は、Orpheusの現状を聞き、そんな感想を漏らした。


「そうなの。何かその……後先考えてない、やけくそなところが怖いんだよね」


「それで? 話だけは聞いてあげたけど、私の愛しの直輝くんの電話番号を使って、私を呼び出して、何をさせるつもりなの?」


 甘音は刀を抜き、佐伯の喉元に突きつけた。

 Orpheusから離反した、と口で言われても信じられはしない。

 そんな敵意と殺意の籠った刃を、佐伯は握りしめる。

 鮮血が零れ落ち、地面を赤く染めていく。


「このままじゃ私たちは、Orpheusに消される。そうでなくても、天霊たちが束になってかかってきたら、全員を守り切るなんて不可能。……だから、あなたたちに頼ることを決めたの。人間とか天霊とか区別せず、良い人は良い、悪い人は悪いって判断できるあなたたちにね」


 佐伯は刃から手を離し、頭を下げる。


「お願いします。私達を助けてください」


 そんな彼女の態度を受け、周りにいた隊員たちも頭を下げた。


「わ、分かった! 分かったから! そんなにかしこまらないでよぉ……。」


 彼女たちのその懸命な態度に、甘音は慌てて頭を上げるように口にした。


「まあ、私達としても、協力してくれる人が多いに越したことはないし、断る理由はなかったんだけどね」


「あ、ありがとう……! ──ただ、この場で一人だけ、私の方針に納得してない人がいるんだよねぇ……」


 笑顔を浮かべ、感謝する佐伯だったが、壁にもたれ、仏頂面でこちらを見ていない青年の方を向いた。


「能力使ってまで隠れるって、何やってんだか…‥」


 多くの隊員が頭を下げている中、頭を下げていなかった直輝は、彼女の言葉に答えなかった。

 そんな彼の態度に、佐伯はため息をついて、呆れた表情を浮かべる。


「な、直輝くん……。直輝くん……!!」


 そのやり取りで、ようやく彼の存在に気が付いた甘音は、直輝の所に駆け寄ろうとする。


「来るな!!」


「っ!?」


 近づいてくる彼女を、直輝は声を荒げ、足を止めさせる。


「……俺は、お前に勝つために、今日まで戦ってきた」


 彼は、剣を抜きながら、彼女の方にゆっくりと近づいてくる。


「まだ、一回も勝ててないのに、肩を並べて戦うなんて、俺にはできない」


 彼女の前に立った直輝は、切っ先を向ける。


「──だから、俺と戦え。負けたら相手の言うことを何でも聞く」


「はぁ? こんな状況で何言って──」


 いつ何が起きるのか分からにこんな状況で、私的な戦いを繰り広げている場合ではない。

 直輝を止めようとした佐伯だったが、闘志をむき出しにして向かい合う二人の様子を目の当たりにし、言葉を呑んだ。

 特に、近くで見てきた直輝に関しては、絶対に止めるべきではないと思った。

 いつだって、何かに囚われ、目の前の敵ではなく、どこか遠くにいる誰かを倒すために戦い続けていた直輝。

  いつだって、何かに囚われ、目の前の敵ではなく、どこか遠くにいる誰かを倒すために戦い続けていた直輝。

 そして今、倒すべき、超えるべき相手が目の前にいる。

 本人の口から聞いたわけではなかったが、長い間ともに戦ってきた佐伯には、それが分かってしまった。

 直樹の真剣な眼が、そう語っていのだ。

 それに、直輝の殺意を受けた甘音もやる気満々。

 尚更止める理由はなかった。


「ううん。やっぱりいいや。好きなだけ、気の済むまでやりなよ、マネージャー」


 直輝の肩を叩き、佐伯は、隊員たちを退避させる。

 そして、それを見届け、戦闘範囲に誰もいなくなったことを確認した甘音。

 その瞬間、彼女は刀を抜き、突きつけられた剣を弾くと同時に、彼の首を狙い、刀を振るう。

 何の合図もなく、唐突に、二人の戦いは始まりを告げるのだった。


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