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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第四章 黒き嘲笑の真実
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暴かれた真実

 戦闘は中断され、その場を去る千咲の背中を見つめることしかできなかった璃空。


「……悪いね、邪魔しちゃって。でも、こちらも時間がないんだ」


「……いいよ。今の俺じゃ、戦いにもなってなかったしな」


 薄っぺらい謝罪を述べる星導に、璃空は投げやりな返事をする。

 千咲の実力を知らなかったとはいえ、あそこまで勝負にならないとは思ってもなかった。

 挙句の果てに、かすり傷を与えただけで勝負は中断。

 不機嫌になるのも当然ではあるが、璃空はその感情を胸の内に隠した。


「それより、時間がないって、どういうこと?」


「さっきの話が関係しているんですか?」


 戦いを終えた璃空の方へと近づいてくる沙織と玲那。


「あれ? 鏡夜とルクスリアは……?」


 その中に、鏡夜達がいないことに気が付き、璃空は首を傾げる。


「んー。どこから説明しようか」


「順を追って話せばいいんじゃないの? お師さん」


 悩む星導の背後の空間が揺らぎ、そこに一人の少女が現れる。


「だ、誰……?」


「ほうほう、君が鳴神璃空くんか。噂はかねがね。私は元ゾディアックの霧生扇霞。そこの二人にはもうあいさつしたけど、改めてよろしく」


「あ、ああ。よろしく」


 突然現れた扇霞に戸惑いながらも、差し出された手を握り返す。


「──あ。っていうか、あんたか。ここで待ってるっていうゾディアックのメンバーってのは」


 そこで、璃空は彼女がセブンスの本拠地で待っていると連絡してきたその人だと気が付いた。


「そうそう! 甘音ちゃんに連絡したんだけど、ちゃんと届いてたみたいで安心したよ」


「それで、一体鏡夜に何を伝えたんだ? 俺たちに何を伝えようとしてるんだ?」


 こんなところに呼び出してまで、彼女は一体、何を伝えようとしたのか。

 鏡夜に何を伝えたのか。


「──ゾディアックが天霊を救ってるなんて大噓だった。あいつらは、私達が必死に救った天霊を、一人残らずある計画の生贄にしていた」「……は? ど、どういう……」


「その計画は、人工的に神霊を創り出すこと。その核になる少女の名前は、白蓮鏡華はくれんきょうか。……鏡夜くんの妹だよ」


「鏡夜の、妹……!? あいつ、そんな話一言も……」


「本当にね。どうやら、あのお人好し、色々と隠し続けてたみたいね」


 鏡夜と長く過ごしてきた璃空と沙織も知らなかった事実。

 思えば、ゾディアックに所属している理由はおろか、彼に関することを詳しく知らないと改めて思った。

 あの日お人好しの優しさの裏に、何を隠し続けていたのか。

 再会したときに、全て問い質してやろうと決意し、二人は頷いた。


「それで、人工的に神霊を創るってどういうことだ? それに、救った天霊を犠牲にしてるって……」


「その辺の説明は、研究室に戻っていっちゃった千咲にお願いしたいんだけど?」


「ちっ。散々説明してやったんだから、自分で説明ぐらいしろ」


 扇霞の言葉をどこかで聞いていたのか、近くにあったスピーカーの電源が入り、千咲の声が届く。


「いいじゃん。おねがい、人工神霊創造計画の発案者さん?」


「はぁ……。一回しか説明しないから、よく聞け。」


 これ以上の議論は時間の無駄と考えたのか、ため息をつきながら、千咲が説明を始める。


「私が考案した神霊を創造するためのプロセスは二つ。一つは、その個人の能力と同種の能力を繋ぎ合わせることで、自身の能力をより深く開花させる直列神霊。そしてもう一つは、他者の霊力情報を読み取り、自身の霊力に合わせて調整することで、独自の能力を開花させ続ける並列神霊」


「直列神霊に、並列神霊……」


 千咲の話を聞きながら、璃空は、並列神霊の在り方が、まるで自分のようだと考えていた。

 であれば、未空は直列神霊の実験体だったのだろうか。

 そんなことを考えていると、話が先へと進む。


「こんな研究を続けてるのは私だけ。そして、そんな私の研究を盗み取ろうとするハイエナどもを何匹も見てきた。……その中にいたんだよ。自分の能力と霊力を提供する代わりに、並列神霊のプランを売ってくれと言ってきた男が」


「それがゾディアックの人間……?」


「知らん。ただ、ご丁寧に名前は名乗っていたな。確か……白蓮鏡迅はくれんきょうじん、と」


「白蓮……鏡夜の身内か?」


「多分、ね」


 璃空と沙織が顔を見合わせて呟く。


「──つまり、話をまとめると、白蓮鏡迅が買い取ったプランに、ゾディアックが協力して神霊を創ってるってこと?」


「多分ね。ゾディアック本拠地にいた巨大な神霊を、七海と三崎が見張ってたから。……それに、新藤古町しんどうこまちを取り込ませてたのも、その二人だったし」


「くそがっ……!!」 


 扇霞の口から出た少女の名前に、璃空は怒りのままに壁を殴った。

 新藤古町。それは、璃空が職人街で救った天霊の少女の名前だった。

 彼女が既に犠牲になり、もう取り返すことが出来ない。

 それは、あの時の璃空の戦いも、これまでの灯里や鏡夜の戦いも、何もかもが無意味だったことを証明していた。

 そのことが璃空は許せなかった。


「まあ、そんなもの創って何をしようとしているのかまでは分からないけど……。さっさと止めた方がいいのは確かだよ。そのために、鏡夜くんは白蓮鏡迅の所に向かったから」


「だったら、俺たちも急いでゾディアックのところに──」


「そう言いたいところだけど、もう一個、緊急事態があるの」


「これ以上の緊急事態って何だよ……。もう十分、緊急事態だろ?」


 話を遮られ、困惑する璃空。

 その背後の空間がひび割れ、一人の男が姿を現す。


「あ、あなたは……!?」


「お久しぶりです。玲那さん、沙織さん」


「Orpheus諜報部隊副隊長、伊賀﨑美鶴いがさきみつる。どうしてあなたがここに?」


 沙織と玲那の二人は、その青年のことを知っていた。

 Orpheusの中でも、「影から世界を見守り、悪を葬る」という行動指針の元、闇夜に紛れ、数多の情報を集めている部隊が、諜報部隊である。

 その副隊長である彼が、セブンスの一人と繋がっているなど、普段であれば、即処刑である。

 しかし、今は自分たちも似たような立場であるため、そこは見て見ぬ振りをすることにした。


「私は、そこにいる扇霞と共に、彼に育てられ、Orpheusの動向を探っていたのです」


「……もしかして、もう一つの緊急事態って」


「はい。Orpheusについてです」


 美鶴の言葉に、沙織と玲那は何とも言えない表情を浮かべていた。

 そして、そんな二人に追い打ちをかけるように、彼は口を開いた。


「──Orpheusが天霊による部隊を設立。本格的に全ての天霊を殺すために動き出すそうです」


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