格の違い
鳴神千咲に向けて放った雷光。
そして、視界全てを眩い光に覆われた鏡夜達。
光が収まり、目を開けた彼らが見たものは、璃空の放った雷光を全て凍結させ、粉砕する千咲の姿だった。
「な……」
「殺したいほど憎い相手を前に、様子見か? 愚かさもここまでくれば笑えるものだな」
「だったら、笑えなくしてやるよ……! 氷雷斬華!!」
千咲の視界から一瞬で消え、彼女の死角から斬りかかろうとする。
「お前、私のことを馬鹿にしてるのか?」
しかし、璃空が彼女に接近することは出来なかった。
千咲を中心に放たれる冷気の嵐が、璃空の行く手を阻む。
「くそっ……! 無明凍衣!」
このままでは、近づくこともままならず、完全に凍結させられてしまう。
璃空も自身の身体から冷気を放出し、彼女の放つ冷気を相殺しようとする。
「嘘だろ……!?」
だが、千咲の放つ冷気は、璃空の放つ冷気ごと凍結させていく。
「お前の生ぬるい冷気で、私の冷気が止められるとでも? 未空の霊力を受け継いで、このレベルとは……どうしようもないな」
「お前が……未空を語るな……!!」
凍りつく璃空は、怒りのままに雷の刃を放つが、その全てが高密度の冷気に阻まれる。
「お前こそ、未空の何を知っている? 何も知らないガキが。大口を叩くしか能がないなら、本当にここで殺してやる」
少し苛立ちを滲ませた千咲が指を鳴らした瞬間、璃空の足元から氷の針山が形成され、璃空を貫く。
「がっ……! こ、これ、は……!?」
その攻撃を、璃空は知っていた。
「確か、氷華陣・針縫だったな」
それは、生前の未空が使用していた技だった。
「な、んで……」
「何でお前が未空の技を使えるのか、って聞きたそう顔だな? 使えて当然だろ。元々、私が適当に使ってた技だからな」
「は……?」
「理解力が足りていないな。まだ分からないか?」
言葉を失う璃空に向けて、千咲は生み出した氷の槍を蹴り飛ばす。
凄まじい速度で迫る槍を、ギリギリで躱した璃空の目に映ったのは、頭上に浮かぶ大量の氷槍だった。
「未空が使っていた技は、全部私の真似だって言ってるんだよ」
身体が凍りつき、動揺に襲われる璃空には、全ての氷の槍を防ぐことは出来なかった。
成す術もなく全身を貫かれる璃空。
「……完全に向こうのペースだな」
その様子を見ていた鏡夜は、驚きを隠せないと言ったように呟く。
天霊都市での戦いを経て、璃空の実力は大きく成長したと感じていた。
憤怒の撃破も考慮すれば、生半可な実力では、璃空の相手にはならないだろう。
だが、鳴神千咲は、そんな璃空を簡単に弄び、手玉に取っていた。
そろそろ戦闘に介入しなければ、璃空が殺されるのではないか。
鏡夜がそう思い始めたその時、彼の肩を何者かが叩く。
「っ! 誰だ──って、霧生さん!?」
咄嗟に拳を握り、振り向いた先には半透明の少女がいた。
「やっ。久しぶり、鏡夜」
気安い調子で話しかける彼女こそ、ゾディアックに所属する霧生扇霞だった。
「とりあえず、再会を喜ぶのは後で。今は、鏡夜に伝えないといけないことがあるの」
警戒する沙織たちを尻目に、扇霞は鏡夜にあることを伝える。
「……は?」
それを聞いた鏡夜の顔は青ざめ、憤怒と憎悪と様々な感情が入り混じったものへと変わっていく。
璃空と千咲の戦いの裏で、事態はまた一つ進展するのだった。




