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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第四章 黒き嘲笑の真実
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憤怒の歓迎

 「……それで、どうしてこうなったんだ?」


 「あ、えーっと……」


 先を急ぐ璃空と鏡夜、ルクスリア。

 そして、そんな三人の後ろを歩く少女が二人。


 「どうしてもこうしてもないけど」


 困った顔をしながら歩く玲那と無感情な表情を浮かべる沙織がそこにいた。


 「別に聞きたくもなかったけど、昔から鳴神の母親の話は何回か聞いてたからさ。……気になるでしょ?」


 「まあ、それは俺も同感だな」


 腐れ縁の二人は、少なからず璃空の話を聞くことが多かった。

 それ故に、彼の母親が本当に最低なのか、自分の目で確かめてみたいという興味があった。


 「──それに、氷室千咲については何かの資料で読んだことがある。“彼女以上の天霊の研究者はおらず、彼女以上の異常は存在しない。まさに、天才にして天災。野放しにしておくわけにはいかない“ってね」


 「お前、俺のあの女のこと知ってたのかよ……!?」


 「当たり前でしょ。Orpheusにいたんだから危険人物の資料は一通り目を通してる。ただ、それがあんたの母親なんて思いもよらなかっただけ。あんたの母親の名前なんて知らなったし」


 璃空の驚きを、沙織は軽く受け流す。

 彼女の言葉は正しかった。

 璃空は、母親の話をした覚えはあるが、その名前まで口にした覚えはなった。

 もっといろいろと打ち明けておくべきだった、と璃空は後悔した。


 「……それに、彼女に状の天霊研究者がいないっていうんなら、聞きたいこともあるし」


 璃空の後悔の後ろで、沙織は誰にも聞こえない声で呟く。

 天霊と化した沙織には、どうしても彼女に聞きたいことがあった。

 そのために同行しているのだが、そこまでの詳細を沙織は話す気はなかった。


 「ところで、玲那さんはどうして一緒に?」


 そんな二人の様子を尻目に、鏡夜はもう一人の同行者である玖遠玲那に質問をする。


 「私は……沙織さんが皆さんに着いていってしまったら、一人になってしまうので」


 「あー……まあ、言いたいことは何となく分かったよ」


 玲那の困ったようなその一言で、鏡夜は玲那の心境をある程度悟った。

 彼女は元々、灯里を探していた。

 家族の死の真実、灯里の真意を知るために。

 だが、いざ彼女が近くにいるとなると、その真実を問うことが恐ろしい。

 先に進む覚悟が決まらないのだろう。

 だから、一先ずは距離を取るために、沙織に同行したのだろう。

 鏡夜はそう推測し、その推測は全て正しかった。

 その選択が問題の先送りだと理解しながらも、今の玲那にはそれしかできなかった。


 「それで、どうやってセブンスの本拠地に行くんだ?」


 鏡夜と玲那の会話を聞きながら、璃空はルクスリアに尋ねる。


 「──これを使うの」


 「……銀の、鍵?」


 璃空の疑問に答えるように、ルクスリアは懐から一本の銀の鍵を取り出した


 「この鍵は、特定の座標と座標を繋ぐものらしいの。原理は知らないけど、この鍵を適当なドアの鍵穴に差して回せば、たどり着くってわけ」


 そう言いながら、ルクスリアはドアにカギを差し回した。

 その瞬間、ドアは銀の光に包まれ、そこには光の門が生み出された。


 「──さあ、行こっか。覚悟は良い?」


 「……ああ」


 ルクスリアの問いかけに答えた璃空は、光の門をくぐる。

 その後に鏡夜達も続いていき、廊下には誰もいなくなった。


 そして、廊下の奥に隠れていた灯里は、閉じていく光の門を静かに見つめていた。


 「玲那……」


 向き合うことから逃げる選択をした妹。

 そんな彼女に、真実を語ることから逃げた灯里が何かを言えるわけもなく、今はただ彼女の帰りを待つしかなかった。



 「な、何だここ?」


 光の門を抜けた璃空たち一行が辿り着いた場所。


 「これ、全部氷で作られてんのか……!?」


 そこは、氷で作られたと思われる巨大な建物のエントランス部分だった。

 明らかな人工物であり、これほどまでの物を創り出せる能力者がいるという事実がそこにはあった。

 そして、その能力者が誰か、璃空には直感で分かっていた。

 この先に因縁の女がいる。


 「っ!?」


 璃空が奥に進もうとした瞬間、何かが璃空の頭を目掛けて飛んでくる。

 直感で頭をガードした璃空だったが、その重たい一撃に大きく後ずさりする。


 「いってぇな……!!」


 「──おぉ。いい怒りだ。だが、俺の怒りには遠く及ばんな」


 エントランスの多くから現れたのは赤く逆立つ髪が特徴的な大柄の男だった。


 「ルクスリア、あいつは……?」


 「イラ・レプス・ザラレウス。憤怒に身を焦がすセブンスの一人。手荒な歓迎ね」


 「ちょ、ちょっと待ってください!? ここに来るように言ったのは、鳴神さんのお母さんなんですよね……? だったら、どうして──」


 「いや、玲那さん。あの女はこういうことをするんだよ。どうせ、ここで死ぬようなら、自分に会う資格はない、とでも言いたいんだよ」


 唐突な状況に困惑する玲那とは反対に、璃空はこの状況に納得していた。


 「──ふざけやがって」

 

 だが、納得しているからといって、怒りを覚えないわけがない。


 「今すぐ引きずり出してやるよ、鳴神千咲!!」


 どこかで高みの見物をしているであろう鳴神千咲への怒りを吠える璃空。

 その怒りは彼女へは届かず、ただ目の前に立ちはだかる憤怒にぶつけられるのだった。

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