Reverse Joker
「──つまり、話をまとめるとこういうことか? お前は、第零部隊と戦う和希を救い、能力を奪取。その後、その能力で俺たちを救った後、玖遠と結託して、ゾディアックに潜入して、現在に至る……と」
「まあ、概ねそういうことね」
屋上でしばらくの間、時を共にした璃空と灯里は、会議室を訪れていた。
会議室の中では、ブラックアリスと杏沙の二人と向かい合うように、甘音、鏡夜、悠乃が座っていた。
話としては、ブラックアリスが灯里と行動を共にしていた経緯の説明が終わったところだった。
「あら、目を覚ましたのね。元気そうで何よりね」
「……ああ。まあな」
ブラックアリスは会議室に入ってきた璃空の方に視線を移し、璃空と灯里を見て、何かを察したようにニヤついていた。
そのことに気が付いた璃空は、苦笑いをしながら彼女の言葉に答え、席に着いた。
「──それで、結局のところ、あなたの目的は何なの? 最悪の天霊とも呼ばれるあなたが、灯里ちゃんに接触して、鳴神くんたちの戦いを手助けするなんて、何か成し得たいことがあるからでしょ?」
話が一区切りついたタイミングを見計らい、甘音が話の核心に迫る。
どうして、ブラックアリスが灯里と接触し、璃空が職人街に向かう手助けや、天霊都市での戦いを支援したのか。
彼女の問いかけに、ブラックアリスは真剣な表情で語り始めた。
「今の私には、二つの目的がある。一つは、個人的な目的だから、あなたたちには関係ないわ」
「じゃあ、私たちに関係のある目的って?」
ブラックアリスと鏡夜、甘音の会話を聞きながら、兎と戯れていた悠乃が口を開く。
「決まっているでしょう? ──この理不尽でふざけた世界を変えるのよ。そのための仲間を探している所だったのよ」
彼女の不敵で、強気な笑みが、その目的が冗談ではなく、本気で叶えようとしているのだと告げていた。
「玖遠灯里は、私たちの目的に賛同してくれたけれど、あなたたちはどうする?」
ブラックアリスは、璃空たちの覚悟を問う。
「私はさんせーい! 天霊だなんだで、恋も青春も自由に謳歌できない世界、ぶっ壊れて当然でしょ?」
真っ先に手を挙げ、彼女の目的に賛同したのは甘音だった。
彼女らしい理由ではあるが、その表情から、決して冗談を言っているわけではないというのは誰もが理解していた。
「……私も、賛成。天霊になった人だけじゃなくて、天霊を殺す人だって苦しんでるって、知っちゃったから……。私は、みんなが苦しまなくていい世界にしたい、って思ったの……」
兎と遊んでいた悠乃も、彼女の目的に賛同する意思を示した。
その心の中にあるのは、天霊と分かり合いたいと思いながらも、その過去の出来事故に、絶対に天霊と分かり合うことはないと信じて死んでいった、篝灯魔の姿があった。
彼のような人が生まれないような世界になればいいなと、彼女は戦いを終えてから考え続けていた。
「ブラックアリスは信用できないが、その目的自体は信用するよ。……こんな世界じゃなければ、俺の妹があんな目に遭うこともなかった。だから、今のこの世界を俺は許せない……!」
鏡夜もまた、大事な存在を天霊にさせられた過去を持つ。
天霊が生まれる世界でなければ、鏡夜の妹は、無理矢理天霊にされることはなかっただろうし、隠れて生きる必要もなかったはずだ。
天霊であっても、生きていける世界。
それこそが鏡夜の求める世界だった。
「さて、残るはあなただけよ、鳴神璃空。あなた答えを聞かせてもらいましょうか」
ブラックアリスは、甘音たちの答えを聞き、最後に残った璃空の答えを求めた。
「──俺の答えは、もう決まってる。姉さんを殺されて、悠斗を殺して、花梨を殺されて……。全部、俺に力がなかったせいだ」
璃空は、今日までに自分が失ってきた大事なものを思い出し、拳を強く握りしめた。
そんな璃空の手を、灯里は優しく包む。
その温もりが、璃空の答えは間違っていないのだと、信じさせてくれるようだった。
だから、璃空は、自分が辿り着いた答えを、自信をもって口にした。
「……でも、今は違う。今の俺には、あの日よりも少しだけ力がある。頼もしい仲間もいる。──1人じゃないんだ。だから、俺は戦うよ。この世界と。奪い奪われるだけしか答えのない、この理不尽な世界と!!」
璃空の答えに、異論を唱える者はいなかった。
「いい覚悟ね。では、始めましょうか。──この理不尽な世界を変える戦いを」
ブラックアリスの言葉に、璃空たちは力強く頷いた。
「あ! ……あのさ。一個聞いてもいいか? すっごいどうでもいいことなんだけど……」
そして、話が一区切りついたところで、璃空がおずおずと手を挙げた。
「何かしら?」
「いや。俺達って、何か組織名とかないのかな……って。名前があった方が呼びやすくないか? ゾディアックとか、セブンスみたいにさ」
璃空のちょっとした一言に、少しだけ間が出来る。
そして、全員が一斉に笑い出した。
「なっ…‥!?」
「……鳴神くんって、意外と子供だよね?」
「璃空はそういうところあるからな」
「鳴神、こども」
「ははははははは!!! お前、本当に面白いな!!!」
「はいはいはーい! 私は鳴神くんに大賛成!! とびっきりかっこいい名前がいいよねぇ~!」
「うるさいなぁ!? いいだろ別にっ!!」
「いってぇ!!」
バシバシと背中を叩いてくる梓沙の背中を、璃空は思いきり叩き返した。
そんな璃空の、照れて赤くなった頬を、灯里は悪戯な笑みを浮かべて突いてくる。
彼女の表情に、璃空は何も言えず俯いた。
「ふふっ。まあ、鳴神璃空の言うことも一理あるわね」
二人の様子をニヤニヤしながら見つめていたブラックアリスは、少し考えるような仕草を見せる。
「……私たちは、それぞれの過去と思いを抱え、数奇な運命によって、ここに集った。その思いは、この理不尽な世界を照らし、変革への篝火になると私は思う。故に、私たちの名前は、変革の星々──リバース・ジョーカー」
「リバース・ジョーカー……!」
「いいんじゃない? 私は賛成っ」
「……まあ、特に文句はないな」
「私も、それでいい」
「俺も異論はねえぜ。これから世界を変えるってんだ。これぐらいでかい名前じゃねえとな!」
「私の注文通りとびっきりかっこいい名前だし、異議なし!!」
ブラックアリスの命名に、それぞれの反応を見せ、全員がその名前に賛成した。
「──なら、私たちはこれからリバース・ジョーカーと名乗りましょう。じゃあ、記念すべき一言目はあなたに任せるわ」
「……は? 俺!? 何で!!」
何故かリバース・ジョーカーとしての第一声を任された璃空は、困惑し、理由を尋ねる。
「その方が面白いと思ったからよ」
「はあ!?!?」
しかし、返ってきた理由が、あまりにも嫌がらせたっぷりで、璃空は思わず叫んでしまう。
慌てて灯里たちの方を見た璃空は、冷静さを取り戻した。
彼女たちの表情が、「大丈夫」と言ってくれているようだと感じた。
璃空は、一度深呼吸をすると、拳を掲げてリバース・ジョーカーとしての第一声を叫んだ。
「──よし。行こう! この理不尽な世界をひっくり返しに……!!」
こうして、リバース・ジョーカーは始動した。
自分たちの願いを叶え、これ以上の悲しみを生まないために。
これにて、第三章完結です!時間がかかり、申し訳ありませんでした……!引き続き、応援頂ければと思います!




