天霊都市最終戦Ⅳ
「──え? 玖遠さん、今、何て……?」
「えっと……だからね、甘音さんが、鳴神くんの処置をしてる時に、改めて君の中の霊力を探ってみたの。その時、君の中に、私も知ってる霊力があったの」
甘音による処置を終え、流転哭井を探している最中、灯里はあることを璃空に伝えようとしていた。
「玖遠さんも知ってる霊力……?」
「うん……。あの日、廃墟ビルで鳴神くんと戦った……」
「──!? 悠斗……!!」
璃空の運命が動き出したあの日。
廃墟ビルで彼が初めて背負った罪である、玉梓悠斗。
その霊力を、璃空の中から感じると、灯里は口にした。
言われてみれば、心当たりがないわけではなかった。
彼の死の直前、璃空の中に、優しく暖かな何かが流れ込んだ気がした。
あれは気のせいではなく、悠斗が死の直前に託した、彼の霊力だったのだ。
「……鳴神くん」
呆然とする璃空の顔を覗き込みながら、灯里は口を開く。
「もしかしたら、その力が私たちの勝利に繋がるかもしれません」
「……? どういうこと……?」
「相手は、少なからず私たちの手の内を知っています。そんな状況で、唯一相手が知らないカードはそれだけ」
彼女の言葉に、璃空は何も言えなかった。
灯里は、遠回しに、自分たちの勝利は、璃空が悠斗の力を使えるかどうかにかかっていると言っているのだ。
本当に自分の能力が、甘音の言った通りの能力なのか、未だに半信半疑でいる璃空。
だというのに、悠斗の力を使いこなすことが勝利への必須条件と言われれば、焦りと不安しか感じない。
そんな璃空の心情を知ってか知らずか、灯里は璃空の手を握った。
「──大丈夫。私は、鳴神くんを信じていますから」
彼女の言葉は、璃空の中に渦巻く疑念や不安、焦りの全てを吹き飛ばした。
「……ありがとう、玖遠さん」
彼女が信じてくれるなら、自分は戦っていける。
「──行こう、玖遠さん」
灯里の手を強く握りしめ、璃空は凍りついた雷撃の翼を出現させ、捉えた目標の元まで一気に駆け抜けていった。
◇
璃空と灯里、哭井とメイリア。
ぶつかり合う互いの能力。
周囲の建物や瓦礫を巻き込み、激しい土煙が舞う中、璃空は流転と、灯里はメイリアと刃を交える。
「その槍……お前ら、まさか……!!」
流転の霊装が放つ霊力に、璃空は覚えがあった。
「あー。そういえば、この二人の死に関わっていたのは君だったねぇ。なら、もう一度味わうといい。星を喰らう『暴食』と星を殺す『怠惰』の味をぉ!!」
彼の持つ霊装の正体に気が付いた璃空は、哭井が槍を振り抜く前に、瞬時に後ろに後退する。
しかし、どういうわけか璃空の身体は哭井の方へと引き寄せられていた。
「──尖天飢餓」
そして、彼が地面に槍を突き立てた瞬間、璃空を貫くように毒の棘が出現する。
飢餓を振りまく毒の棘が、彼の身体を貫こうとした瞬間。
「ぶっ壊れろぉ!!」
璃空の放つ雷撃が、全ての棘を凍らせ、粉砕する。
凍りついた地面に降り立った璃空は、楽しげに笑う哭井を睨みつけながら確信する。
哭井の持つ霊装は、璃空と戦い、死んだはずの二人。
セブンスの暴食、旺膳律瀬とセブンスの怠惰、科哭青花の能力を使用しているのだと。
「報告書にあった通り、君はどうやら、二つの能力を使えるようだねぇ。亡くなったお姉さんの力の使い心地はどうだい?」
そして、相手の能力を確信したのは、哭井も同じだった。
璃空の心の傷をなぞるような彼の言葉。
「……ああ。どうしようもないくらい痛くて、心強いだけだよ……!」
そう叫びながら、璃空は再び、哭井との戦いを再開した。




