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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第3章 赤夜の夢と天霊都市
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光・桜・星

 「光あれ!!」


 ガハットが叫び声を上げると、彼の背後に光の球が六個浮かび上がる。

 そこから、灯里と和希に向かって、独特の軌道で、光が放たれる。

 避けることは難しいと判断した灯里は、腕を切り裂き、噴き出た血を固め、盾とした。

 一方で、横にいた和希は、自身の能力を使い、その場から姿を消した。


 「ガハット!!」


 「は……? マジかよ!」


 一瞬で背後に回り、ガハットを貫こうとする和希。

 その存在に気が付いたマオミルは驚き叫びながら、彼女に向けて銃を構える。

 灯里の元に駆け寄っていったスピカも、驚きに足を止めてしまう。

 その隙に、灯里は盾に空いた穴から、血の弾丸をマオミルに向けて撃ち放つ。


 「っ!!」


 引き金が引かれる瞬間、血の弾丸は銃に当たり、弾丸の軌道が逸れる。


 「……眩しいな」


 「……滅多に見れない光だぜ。ありがたく思っときな」


 ぶつかり合う和希とガハット。

 ガハットの身体はひび割れ、そこからは眩い光が漏れ出していた。

 彼の持っていた鉄の棒は、いつの間にか光を纏い、輝く槍と化していた。

 和希の持つ剣は、光の持つ熱量に焼かれ、赤く熱を持っていた。


 「ぶった切る!!」


 そのまま和希の持っていた剣は、簡単に焼き切られ、その穂先が和希に迫る。

 しかし、またも和希は転移し、今度はマオミルの正面に現れる。


 「う、そ……」


 「撃て、マオミル!!」


 仲間の危機に、ガハットは叫びながら、いくつもの光の刃を放つ。


 「くそ! 間に合え!!」


 同時に、灯里の方に向かっていたスピカも、マオミルを守ろうと駆け寄ろうとする。


 「あなたの相手は私でしょ?」


 「なっ!? 何だよこれ! 動けねえ……!!」


 そんなスピカを逃がすまいと、灯里は盾の形を変え、スピカの身体を絡めとる茨へと変化する。

 凝固した血の茨は、スピカを完全に捉え、その場に拘束した。

 どうにか逃れようと暴れるスピカだったが、堅牢な血の拘束から逃れることは出来なかった。


 「……仕方ない、か」


 スピカは、暴れることを止め、何かを決意したように静かに目を閉じた。


 「──我が名と同じ名を授かりし、春の夜の(スピカ)よ。我が願いに応じ、我に力を与えたまえ!!!」


 その言葉に答えるかのように、空から一条の光が降り注ぐ。

 青白い光の柱に呑まれたスピカの霊力は、異常なまでに跳ね上がる。


 「うおおおおおお!!」


 叫び声と共に、スピカは拘束を抜け出し、移動の軌跡だけ残して、和希に拳を向ける。

 しかし、そこにあったのは自分の拳に向かってくる剣だった。


 「は……? ぐっ、あああああ!!!」


 避けることは出来ず、剣は真っ直ぐにスピカの腕を貫いた。

 さらに、ガハットが放った光の刃も、全て地面を抉っただけだった。


 あまりの痛みに膝をつくスピカ。

 自身の腕から流れた血が、地面に赤い水たまりを作っていく。

 そこに自分の顔が映った時、痛みとは別の奇妙な感覚が浮かび上がった。


 「(あれ……? 俺、こんなに出血してたっけ……)」


 確かに、右腕は使い物にならなくなったし、出血もひどい。

 しかし、それにしても多すぎないか、と疑問に思うほどの血が、スピカの眼前に広がっていた。


 「……!! まさか……!?」


 スピカは、一つの結論に辿り着くと同時に、急いでその場から離れようとする。


 「──残念。一歩遅かったね」


 そんな彼の背後に回り込んでいた灯里は、驚くスピカの背中を手で押す。

 完全にバランスの崩れていたスピカは、その優しい力に抗うことが出来ず、血だまりの中に落ちていく。

 自分を串刺しにするために用意された針の筵の中へと。


 「がっ……!」


 全身を貫かれたスピカは、四肢をだらりと下げ、意識を失った。


 「はあ……」


 その様子を見て、灯里はため息をつきながら、自分を今にも殺そうとしているガハットに向けて指をさした。

 灯里の動作に目もくれず、ガハットは灯里を殺すために、光の刃を放とうとする。


 「後ろ。気を付けた方がいいよ」


 彼女の言葉に構わず、攻撃を放とうとするガハット。

 その瞬間、彼の背中に、何か重たいものが伸し掛かってきた。

 振り返るとそこには、視界から消えたはずのマオミルが意識を失って、寄りかかっていた。


 「マオ、ミル……!?」


 「はい。チェックメイト」


 「しまっ──」


 ガハットが彼女の存在に気を取られた隙に、和希は既に彼の懐に潜り込んでいた。

 突き付けられた銃口から、霊力を纏った弾丸が放たれ、ガハットの腹部に大きな穴が開く。


 「……ごぽっ」


 フラフラとよろめいた後、口から大きな血の塊を吐き出し、ガハットは白目をむいて、その場に倒れた。


 静寂を取り戻した路地裏で、灯里と和希はため息をつく。


 「……子どもでよかったね」


 「ああ。三人が実戦経験を積み続けていた天霊だったら、負けていたのは俺たちだった」


 和希は、意識を失った三人に向けて、弾丸を撃ち込む。

 すると、不思議な音とともに、三人の傷が直っていく。


 「これが天霊都市、か」


 「はあ……本当に面倒なことになったね」


 灯里は、何度目か分からないため息をつきながら、空を見上げる。

 まだ夜には程遠い青空が広がっていた。


 「とりあえず、ここから離れるか。夜までどこかに隠れて休んでようぜ」


 「うん。これ以上の面倒ごとはお断りだし……」


 三人の傷が直ったことを確認した灯里と和希は、何食わぬ顔で、路地裏を後にした。



 「──全く。何やってんだか」


 二人が立ち去ったあとの路地裏。

 その建物の影から、一人の少女が現れる。

 螺旋状に渦巻く影を纏うテラリスは、倒れるガハット達を見てため息をつく。

 

 閉ざされた箱庭で、力を振るい続けた自分たち。

 広い世界で、多くの困難に打ち勝ち、今日まで生き続けている灯里たち。

 正面から戦っても、相手にならないのは分かり切っていた。

 それが分かっていて、ガハット達を止めなかったのは、彼らにとっていい機会だと思ったからだ。

 自分たちが井の中におり、大海を知らない蛙だということを知るいい機会だと。


 「さてと。私たち、これからどうなるんだろ」


 外界からの来訪者により、自分たちの運命が大きく変わる予感を感じながら、テラリスはガハット達を影の中に沈め、自分も影の中に消えていった。


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