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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第3章 赤夜の夢と天霊都市
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天霊都市の子どもたち

 「はあ……すぐに終わると思ったんだけど……」


 「これは予想外の展開になったな……」


 街を歩く和希と灯里は、深くため息をついていた。

 二人は、この街の天霊を保護するためにやってきた。

 ファムファタルを治めるメイリアは、その話を聞き、こう返した。


 「なるほど……お二人の目的は分かりました。──ですが、私一人では決めかねます。今夜、この街の顔役が戻ってまいりますので、それからでもよろしいでしょうか……?」


 メイリアの言葉に、灯里と和希は顔を見合わせる。

 数日かかるならいざ知らず、今夜には結論が出るというのなら、待つ方が賢明だろう。

 灯里たちは、そう結論を出し、メイリアの言葉に頷いた。


 しかし、彼女の前から立ち去り、二人の口から出た本音は、「面倒なことになった」という一言だった。

 とりあえず、夜まで時間を潰すべく、フラフラと街を歩き回っていた二人。


 「……?」


 「どうした?」


 その道中。灯里は歩いていた足を止め、何もない虚空を見つめていた。

 疑問に思う和希の視界に、一片の花びらが舞った。

 それに釣られ、灯里と同じ方向を見ると、そこには美しい花吹雪があった。


 「これ、桜だ」


 「この時期に? ありえないだろ」


 既に桜の季節は過ぎており、目の前の光景は明らかに異常だった。

 和希が風に舞う花びらを手に取ると、薄氷が砕けるように簡単に崩れ、光となって霧散した。


 「じゃあ、敵?」


 「さあ? 進んでみれば分かるんじゃないか?」


 灯里の疑問に、和希は目の前を指差す。

 いつの間にか、花吹雪が形を変え、一つの道ができていた。

 誰が、何の目的で、こんなことをしているのかは分からないが、進めば自ずと答えは分かるだろう。

 二人は、花の道を歩いていくと、すぐにその幻想的な景色の終わりが見えてきた。

 

 眩しい光の出口。

 それが見えた瞬間、何か嫌な予感がして、灯里と和希はそれぞれ能力を発動する。

 灯里は、自身の血を固めて、剣を創り出す。

 和希は、別空間に保管してある武器をいつでも呼び出せるように、霊力を高める。

 そして、二人が一歩踏み出した瞬間、眩い光の中から何かが飛来してきた。

 あまりの速度に、和希は舌打ちをし、指を鳴らす。


 「っ!! 攻撃!?」


 「一気に駆け抜けるぞ!!」


 気が付くと灯里の体勢は変わり、和希の飛ばした武器が、光の中に消えていった。

 何か起きたことを察知した彼女は、すぐに立ち上がり、和希と共に花の道を駆け抜ける。


 「へえ……あれで無傷かよ」


 美しい景色を抜けた先にいたのは、3人の子どもだった。

 バラバラの表情を浮かべる彼らは、全員が高い霊力を保有していることがすぐに分かった。


 「ねえ……本当に戦う気なの、ガハット……?」


 「ああ。マオミルとスピカだって、外から来た人間がどれくらい強いのか、気になるだろ?」


 「全然」


 「俺は気になるよ?」


 「スピカまで……ここに私の味方はいないのね……」


 二人の前で痴話喧嘩を始めるガハット達。

 その様子を、和希は黙って観察していた。


 廃材置き場から拾ってきたような鉄の棒を持つガハット。

 その鉄が、少しだけ焼き焦げていることから、先ほどの攻撃は彼によるものだろう。


 そして、両手に銃を持ち、呆れた顔をするマオミルは、この花吹雪を発生させた張本人だろう。

 砕けた花から感じた霊力と、目の前の少女の霊力を同じものだった。

 何より、彼女の身体に浮かび上がる桜の花びらのような痣が、能力を使用していることを表していた。


 残ったスピカは、楽しそうな表情を浮かべているだけで、特に何かをした形跡はなかった。

 今のところ警戒すべきは、ガハットとマオミルの二人だと、和希は判断した。


 その横で、灯里は周囲の状況を確認していた。

 灯里たちの近くを通り過ぎる人たちは、まるで自分たちには全く気が付いていないようだった。

 いくら路地裏のような、人気のない場所だとはいえ、これだけ複数の霊力が集まっていたら、多少なりとも視線が向くはずだ。


 「……」


 自分の中の仮説を確かめるため、灯里は道行く人の前方に霊力の弾丸を撃ち込み、地面を抉る。


 「うおっ!? 何だ!?!?」


 通行人は驚き、辺りを見渡す。

 当然、霊力の弾丸が飛んできたこの路地の方を見ていたが、灯里たちに気づく素振りはなった。


 「……? 何だったんだ??」


 そのまま通行人はどこかに行ってしまった。

 他の人々も地面の様子に驚きはするが、こちらに気が付く様子はなかった。

 それはつまり、灯里たちのこの街に住む天霊たちを容易に欺く結界。

 恐らく、目の前の子どもたちは、他の天霊たちとは違うだろう。


 「和希。油断しない方がいいよ」


 そして今、目的は分からないが、彼らは灯里と和希を標的にしている。


 「分かってるよ。どれくらい本気でやっていいかな?」



 「好きにしなよ。どうせバレないでしょ」


 和希は、楽しそうにどこからともなく取り出した銃を、ガハットに向ける。

 ため息をつきながら、灯里も血をまき散らし、準備を整える。


 二人の殺意を前に、ガハットは不敵に笑い、桜舞う秘匿空間での戦いが始まった。


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