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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第3章 赤夜の夢と天霊都市
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未開の異界

 ファムファタルに足を踏み入れた灯里と和希。

 二人は息を飲み、戦慄した。

 外で感じるよりも、ずっと大きな霊力の渦に取り込まれたような感覚に、灯里は平衡感覚を失った。

 しかし、それよりも強い霊力が背中から流れ込み、灯里は現実に引き戻される。

 視界は掠れているが、灯里の背中に和希の手が触れている感触だけは、はっきりと理解できた。


 「──■■」


 「……その名前で呼ぶな」


 朦朧とした意識の中、灯里は、和希であって和希ではない誰かの名前を呼んでしまう。

 和希は、軽く舌打ちをし、彼女の背中から手を離した。


 「……ふぅ。ごめん、ありがとう」


 「はいはい」


 深呼吸をして、自分を取り戻した灯里は、しっかりと自分の足で地面に立つ。


 「まあ、無理もないか。この街全体から大きな霊力を感じる。きっと、この地面も建物も全て能力で創られたものなんだと思う」


 常人では正気を保てないであろう霊力の奔流。

 その理由を推測する和希は、落ちていた瓦礫を握りつぶす。

 粉々になった瓦礫は、光の粒になって消えていく。


 「おや? あなたたちは……」


 そうやって、常識では計り知れない都市について、考察をしていると、二人に誰かが声をかけてきた。


 「あなたは……」


 「私は、この街を治めるメイリア、というものです」


 どうぞよろしく、とメイリアと名乗った女性は、恭しく頭を下げた。

 それにつられて、灯里も何となく頭を下げる。


 「それで、この街に何か用でしょうか……?」


 顔を上げたメイリアの眼には、警戒の色があった。

 それもそのはずだ。

 今まで存在が秘匿されてきたであろう街に、突然、外部から人間がやってきた。

 この状況で、警戒しない人間などいないだろう。

 灯里と和希は顔を見合わせ、どうするべきか考える。

 正体や目的を隠して接するべきか。


 「……私たちは、ゾディアック。あなたたち全員を、保護しに来ました」


 しかし、隠したところで意味はないと判断した二人は、自分たちのがここにいる理由を全て話し始めた。

 それを聞くメイリアの顔が、一瞬だけ冷たく凍りついたことに、二人は気づかなかった。



 そんな二人とメイリアのやり取りを、影から覗く少年がいた。

 見慣れた街の人たちではない、外部の人間の来訪。

 当たり前の日常が崩れそうな予感に、少年は胸を弾ませながら走り出した。


 「テラリス!! テーラーリース―!!」


 街の外れに走っていく少年は、誰かの名前を呼び続けた。

 息を切らし、立ち止まる少年の頭に小石が当てられる。


 「いたっ……テラリス?」


 「はあ……大きな声で叫ぶなって言っただろ、スピカ?」


 優しい痛みに顔を上げると、テラリスと呼ばれた少年が建物の窓から顔を出し、呆れた表情を浮かべていた。


 「それで、どうしたの?」


 「そう、聞いてよ! 街の外から人が来たんだよ!! それも二人!!」


 「ふーん。あっそ」


 「えぇ―……何でそんなにどうでもよさそうなのぉ……」


 興奮して話すスピカとは対照的に、心底、興味のない顔をしてテラリスは建物の中に戻っていった。

 スピカはショックを受けながら、建物の中に入っていく。


 「おかえり、スピカ」


 「マオミルゥ……ただいまぁ……」


 「おー、よしよし」


 「相変わらずテラリスのやつは、興味ないことはとことん興味ねえのな。俺は気になるぜ? 街の外から来たやつってのはさ」


 建物の中に入ったスピカを二人の少年少女が出迎える。

 落ち込むスピカの頭を撫でる少女、マオミル。

 そして、スピカ同様に街の外から来た人間に興味を持つ少年、ガハット。


 「ガハット~!! お前は分かってくれるって思ってたぞ!!」


 「おう! この街のやつらとは戦い飽きたからな」


 「興味を持った理由がそれなんだ……」


 意気投合し腕を組む二人を、マオミルは冷めた目で見守っていた。


 「よし! 俺もちょっと見に行ってみるか。行くぞ、マオミル」


 「……え? え!? ちょ、ちょっと待って……!」


 そんな彼女の視線に気付かず、スピカとガハットは外に出ていってしまう。

 置いて行かれたマオミルは、慌てて二人を追いかけていく。


 「……はぁ」


 その様子を窓から見ていたテラリスは、ため息をついて遠くなる三人の背中を見守っていた。


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