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リバース・ジョーカー  作者: ぱんどら
第2章 鳥籠のコルリ

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戦いの終わりと過去の始まり

 「……ん」


 鳥のさえずりと眩しい光で、璃空は目を覚ます。

 璃空の目に映るのは、所々が焼け焦げて壊れた建物だった。


 「おっ。起きた??」


 ぼーっと天井を見つめていた璃空の耳に誰かの声が聞こえる。

 ゆっくり身体を起こすと、そこにいたのは甘音璃々と呼ばれた女性だった。


 「身体の調子はどう? 多分、傷は大丈夫だと思うけど」


 「え……」


 彼女の言葉に、璃空はゆっくりと身体を起こし、自分の身体を見る。

 身体中に包帯が巻かれているものの、あれだけの傷があったことが嘘のように痛みはなかった。


 「一体、どうやって……」


 「ん? あー。簡単に説明すると、君の身体の中に残ってた毒を、欠けた血肉に変えたってだけだよ」


 甘音は落ちていた小石を拾い上げると、それは光を放って鉄屑へと変化した。

 彼女はそれを、璃空の方に放り投げる。

 慌ててキャッチした璃空は、自分の手の上にあるものが、完全な鉄屑になっていることに驚愕する。


 「触れたものを別のものに変える能力。これが私の能力、『恋ハ愛ニ、愛ハ希望ニ(ラブ・マジック・パレード)』だよ」


 「……」


 「さて。街のみんなも、二人も心配してたし、早く起きてきなよ」


 ピースをしていた甘音は、優しい笑顔を浮かべて、建物から出ていった。

 璃空は、胸の中に燻る何かを隠して、建物の外に出た。



 「っ!! 鳴神!!」


 「お。やっと起きたか。俺より軽傷のくせに、よく寝てたな」


 そんな璃空を出迎えたのは、水宮悠乃と白蓮鏡夜だった。

 二人とも、既に怪我は治っているらしく、元気そうな顔に、璃空は安堵した。

 同時に、一つの疑問が浮かんだ。


 「……俺、何日眠ってたんだ?」


 「丸三日。まあ、職人街に来る時点で、限界だったから無理もないけどな」


 「そっか……」


 自分の弱さを噛みしめながら、それに気づかれないように、璃空は辺りを見渡した。

 璃空と悠乃が助けた人々は、元気な様子で、街の復興に勤めていた。


 「みんな、元気そうでよかった」


 「街の人たちは、早く助けられたおかげか、軽い毒の症状しかなかったからね」


 璃空の呟きに答えたのは、いつの間にか横にいた甘音だった。

 彼女の横顔からは、どんな感情も読み取れなかった。

 しかし、彼女と視線を合わせると、心の奥底まで理解されるような気がした。


 「おーい!!」


 そんな璃空と甘音の元に近づいてくる人物がいた。


 「大國さん?」


 それは、職人街の長である大國伊比木(おおくにいびき)だった。


 「どうやら元気そうだな」


 「まあ、どうにかこうにかですけどね……」


 大國の安堵する表情に、璃空は苦笑いで返した。


 「そうか。……今回は、本当にお前に助けられた。お前がいてくれなかったら、この街は壊滅していただろう」


 「俺は……何もしてませんよ」


 彼の感謝の言葉に、璃空は目を逸らして返答した。

 璃空がやったことは、ただ、街の人を運んだだけだった。

 街の人を運ぶのも、科哭青花を殺すのも、全て璃空一人の力ではどうしようもなかった。


 「何言ってやがる。お前がゾディアックの意向を無視して、ここに来てくれたから、俺たちは今、こうして生きてるんだ。だから──ありがとうな」


 そう言って、大國は、璃空の頭をくしゃくしゃと撫でまわした。

 璃空は何も言えず、ただ黙って下を向いていた。


 「俺たちは、もうゾディアックに協力する気はない。だが、お前のためならいくらでも力を貸す。いつでも頼ってくれ」


 「……ありがとう、ございます」


 それだけ言い残して、大國はその場を後にした。

 その場に残された璃空の頭の中では、彼の残した言葉がぐるぐると渦巻いていた。


 「よかったね?」


 そんな璃空の肩に手を置き、甘音は優しく微笑んだ。


 「じゃあ、場所変えよっか。三人ともついてきて」


 そして、彼女は、そう言いながら、踵を返して歩き出した。

 三人は顔を見合わせ、彼女の後ろをついていく。



 甘音は一つの建物の前に辿り着くと、特にノックもせずに中に入っていく。


 「戻ったよー」


 「……おかえりなさい」


 中にいたのは、甘音が連れていたフードの人物だった。

 声の調子から、仲がいいわけではないのだろうと、璃空は感じた。


 「適当に座って」


 璃空と鏡夜、悠乃。甘音とフードの人物はテーブルを挟み、向かい合って座った。

 ごほん、と甘音は一つ咳払いをしてから口を開いた。


 「まずは、改めて自己紹介から。私は、甘音璃々。君のことは聞いてるよ? 新入り君?」


 「何を聞いてるのか知らないですけど……鳴神璃空です」


 璃空は差し出された手を握り、握手を交わした。

 そして、甘音は、何度か頷くと、口を開いた。


 「──ふーん。本当に変な霊力してるね」


 「……そうみたいですね」


 一瞬で、璃空の特徴的な霊力を看破した甘音に、もはや苦笑いを浮かべるしかなかった。


 「はぁ……それで、甘音さんは、何をしに来たんですか?」


 苦笑を浮かべたまま、璃空は、甘音がここに何をしに来たのかを質問する。


 「んー? 七波からね。面白そうな新入りが入ったから躾けてくれって、って頼まれちゃってね」


 甘音はニヤニヤと笑いながら、璃空の表情を見ていた。


 「いや~、話は聞いたよ? そりゃ、七波も私を呼びつけるわ、って思っちゃった」


 度重なる命令無視に、独断専行。挙句の果てに、仲間内での戦闘行為。

 誰が聞いても、頭を抱える問題児だろう。

 そんな璃空を、ゾディアックは、七波彩乃は、無視しきれなくなったのだろう。


 「まあ、それは追々ね。今日の本題はこっち」


 甘音は、隣にいたフードの人物を肩に手を置いた。

 フードの人物は少しだけ俯いて、隠していた顔を露わにした。


 「──初めまして。私は、Orpheus第零部隊所属、玖遠玲那。……玖遠灯里の、妹です」


 「なっ……!?」


 「Orpheus!?」


 「灯里の……妹……?」


 彼女の一言に、三者三様の反応を浮かべる璃空たち。

 自分たちと敵対しているはずの組織の人間が、自分たちの前に現れた。

 さらに、それが灯里の妹であり、そんな彼女を甘音が連れてきたという不可解な状況。

 三人は完全に、この状況を理解できずにいた。


 「……勘違いしないでください。ここには、個人的な理由で来ました。今の私は、ただの異能者です」


 玲那は、立ち上がってローブを脱ぐと、自分が何の武装もしていないことを、三人に証明した。

 その姿に、三人は、玲那の言葉を信じるしかなくなった。


 「私は、ただの異能者として、甘音さんと取引をしました」


 「取引……?」


 そんな璃空たちの様子を見ながら、玲那は話を続ける。


 「はい。……私の望みは、玖遠灯里に、お姉ちゃんに会うことです」


 璃空は、玲那の話を聞きながら、どうしてか嫌な予感がしていた。

 世界有数の異能犯罪組織に所属する姉。

 犯罪者を裁き、天霊を狩る組織に所属する妹。

 その関係性と、玲那の望みが、どうしても良い方向に想像ができなかった。

 加えて、玲那と取引し、全てを知っている甘音の表情。

 璃空よりも長い間、灯里と過ごしているであろう鏡夜や悠乃の納得したような表情が、璃空の予感に現実味を帯びさせていく。


 「……どうして、玖遠さんに会いたいんだ?」


 そんな不安から目を逸らすように璃空は、玲那に疑問を投げかける。

 彼女は、少しだけ目を伏せた後、璃空の目を見て口を開いた。


 「──10年前。私の両親は、お姉ちゃんによって惨殺されました」


 そして、玲那の口から、璃空の知らない、玖遠灯里の過去が語られ始めた。


次回、第二章完結

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