動き出す大局
「なるほど。それが、職人街における事件の全容か」
事件から二日後。
Orpheus本部にて、奏城鋼真は、職人街で起きた事件の概要を上層部に報告していた。
奏城からの報告を受けたOrpheus全部隊統括大隊長、明星白夜は目を閉じ、思考していた。
そして、その横で報告書を眺めるOrpheus研究・開発機関局長、流転哭井は楽しそうに笑っているだけだった。
「まさか、君がゾディアックと手を組むなんてね。意外で予想外だね~」
「人々の命を最優先とした結果です。それだけ、科哭青花という天霊は危険な存在でした」
「確かに、お前の報告通りの状況だったなら、この判断は正しいものだ。しかし──」
奏城の報告に、白夜が苦言を呈そうとした瞬間、会議室の扉が開く。
振り返った三人は、驚きの表情を浮かべた。
「──しかし、それでは、隊を預かるものとしては失格だな」
「総帥……!?」
「戻ってたのか、陽彩」
「ああ。ついさっきね」
そこにいた人物。
Orpheus総帥、立華陽彩は、優しく微笑みながら、奏城に、非情な現実を突きつけた。
「……一体、何が間違ってるっていうんですか?」
「簡単な話だ。事件の早期解決のために、一時的に敵と手を組むという判断は間違っていない。私が言っているのは、君の実力不足についてだ」
陽彩は、奏城の元にゆっくりと歩み寄ってくる。
「君は、君たちは、単独では科哭青花に傷一つ負わせることはできなかった。それに、もし、科哭青花を殺したあと、ゾディアックの人間が裏切ったらどうする気だったんだい?」
「……」
「君の今の実力では、仲間も誰も守れはしない」
彼の言葉に、奏城は何も言い返せず、ただ俯くしかなかった。
「さて。そんな現実を前に、君はどうする?」
そんな奏城に、陽彩は手を差し出し、選択を迫る。
力ないまま、むざむざと仲間を失い、己の無力さに後悔するのか。
それとも、手段を選ばず、より大きな力を求めるのか。
「──」
「ふふっ、いい返事だ。──哭井」
「承知いたしました」
奏城の決断を聞き届けた陽彩は、彼のことを流転に任せ、その場を立ち去って行った。
一人、廊下を歩く陽彩。
「おい。陽彩」
「どうした、白夜?」
そんな彼を白夜が呼び止めた。
「お前がここに戻ってくるということは、何か想定外の事態でも起きたのか?」
総帥である陽彩は、普段、本部には滞在しておらず、基本的には白夜と流転に全てを任せている。
その間、彼は、唯一、この世界の裏側と繋がっているゲートを封じている十二ノ塔の監視や危険な天霊の監視を行っている。
そんな彼が、本部に戻ってくるということは、それなりの事件があったということだ。
「まあ、多少、面倒なことになったかもしれないな。だが、まだ君たちの手を借りる段階ではない。自分たちのなすべきことに集中してくれ」
「……そうか。お前がそう言うなら、お前の指示に従おう」
白夜の言葉を聞き届けた陽彩は、彼に背を向け、長い廊下を再び歩き出した。
その背中を見つめる白夜には、遠く離れていく陽彩が浮かべた不敵な笑みを見ることはできなかった。
◇
一方その頃。
セブンスの強欲、星導生真は、暗闇の中で、一人の人物と向き合っていた。
「──そうか。怠惰まで、殺されたか」
「ああ。残念ながらね」
闇の中から聞こえる声に、星導は、いつも通りの態度で返事を返す。
「暴食だけなら、まだ捨て置けた。だが、怠惰までやられたとあっては、話は別だ」
暗い暗い闇の中で、何かが立ち上がる音がした。
「ゾディアック……いや、鳴神璃空、か。」
星導の耳に、おぞましい笑い声が響く。
「──いいだろう。お前を、叩き潰す対象として認めてやる」
セブンスのリーダー。
この世で、最も傲慢な男は、世界を変え始めた小さな雷星を叩き潰すために動き始めた。
投稿が遅くなって、本当にすみませんでした!!




